日本経済、大恐慌前夜…岸田の小さな総合経済対策、大きな違和感「古い産業を助成しても活力は育まれぬ」

総額70兆円超という空前の予算規模で総合経済対策を打ち出した岸田文雄首相。支持率低迷と景気の先行き不透明感を払拭しようと躍起だが、それを一刀両断に切り捨てるのはわが国・長期投資のパイオニアの澤上篤人さんだ。より大胆で明確なビジョンをと訴える澤上代表の “ウルトラC” 的「日本経済再生論」とは。
ビジョンの見えない中央官僚主導の総合経済対策では何も変わらない
10月28日、岸田内閣は「世界規模の経済の下振れリスク」や「物価高への対処」を盛り込んだとする総合経済対策を発表した。経済対策は財政投融資などの財政支出が39兆円、民間投資などを加えると事業規模で71.6兆円だという。財源の大半を相変わらず国債に頼る政府の姿勢を問われて、消費税率の引き上げも一部でほのめかしたようだ。だが、全体を見ればキレイごとを並べた八方美人の経済政策で、何をしたいのか、この国をどこへ導くのか、ビジョンもリーダシップもないと言わざるを得ない。
日本経済新聞によれば国民一人当たり月5000円の光熱費の負担軽減を見込んで、経済対策はそれぞれ「物価高騰・賃上げ(12.2兆円)」「円安をいかした『稼ぐ力』(4.8兆円)」「『新しい資本主義』の加速(6.7兆円)」「国民の安全・安心(10.6兆円)」「今後への備え(4.7兆円)」とお題目はズラリと並んでいる。電気・ガス代やガソリンの補助金延長、新生児1人に10万円相当の給付など相変わらずのバラまきも目に付く。
事業規模はそれなりの額に積み上がったと報道にはあるが、それにしてもだ。「何とチマチマした経済対策なのだろうか」というのが率直な感想だ。やはりこれは中央官庁主導の経済対策でしかなく、岸田内閣ではこれをやるのだという意志が感じられないのは残念だ。看板だった「新しい資本主義」にも全く目新しさはない。ましてやこのままの金融緩和政策で行くと円安は止まらず、その反動の金利上昇で日本の財政は破綻状態に陥って、岸田首相は後世に汚名を残すことになりかねないと危惧する。
やはり一国の首相たるもの、10年後、20年後を見据えたビジョンある経済対策を打ち出してもらいたいものだ。もう失われた10年、20年などを経てきたが、このまま何も手を打たないままでは日本経済は低落の一途だろう。
私がよく指摘する経済や国民生活の根幹となるエネルギー対策についても、福島の原発事故以来、我が国のエネルギー政策は原発の安全対策と再稼働に終始するばかりだった。その間、日本の技術力を生かした新たなエネルギー産業を育成していれば、ロシアのウクライナ侵攻で顕著になった日本の脆弱なエネルギー体制は、全く違う姿になっていただろう。