2025年1月期 “脳の再生”を世界へ。再生医療の次ステージに挑むサンバイオ(4592)

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今回は、慢性期外傷性脳損傷(TBI)の細胞治療薬で国内初の条件及び期限付き承認を取得した、サンバイオ株式会社(4592)について、2025年1月期の状況をもとに分析します。

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Key Point

  • 外傷性脳損傷に伴う慢性期の運動麻痺に対する細胞治療薬が、国内初の条件及び期限付き承認を取得
  • 「脳の再生」の治療薬としても世界初
  • 株価は年初から一時約6倍に急騰。実用化が目前、海外展開を含めた成長余地にも注目
  • 2025年8月~2026年1月にかけての出荷を目指して準備が進められている
  • 脳梗塞・脊髄損傷・アルツハイマー病などへの国内外での適応拡大も視野に

目次

サンバイオってどんな会社?

 サンバイオ株式会社(本社:東京都中央区)は、2001年に設立された再生医療に特化した創薬ベンチャー企業です。「不可能」とされてきた「脳の再生」の領域に挑んでいます。

 同社の細胞治療薬は、他家移植により採取した細胞を大量培養するため、量産化が可能。そのため、多くの患者さんへ細胞治療薬を提供することができます。傷ついた神経の回復を促し、外傷性脳損傷などの慢性期の後遺症の改善を目指すとともに、量産にも対応できる仕組みを備えています。

慢性期の外傷性脳損傷に世界初の治療選択肢

 サンバイオが開発する細胞治療薬は、事故やスポーツ等による受傷後、6カ月以上が経過し中程度~重度の運動麻痺が定着した慢性期の外傷性脳損傷(TBI)に対して、2024年に日本で初めて条件および期限付き承認を取得しました。これは、世界初の承認事例とされています。

 対象患者は、日本国内で約6万人、世界全体だとそれよりも遥かに多い患者数にも及ぶと言われており、極めて大きな市場が広がっています。

 出荷解除の時期が下期に修正されたこともあり、足元の株価は一服していますが、5月には年初から約6倍となる場面もあり、市場の期待の高さがうかがえます。現在は、製造や販売の実行フェーズに移れるかどうか、そしてそれが収益につながるかどうかが注目されています。

「脳の再生」が拓く新たな医療市場

 サンバイオは臨床現場での実用化に向けて、取り組んでいます。出荷に際しては「製造販売事項一部変更承認(以下、一変)」の取得が必要とされており、2025年8月から2026年1月にかけての一変承認取得を想定しています。

 適応疾患は慢性期の外傷性脳損傷にとどまらず、今後は脳梗塞(慢性期)、脊髄損傷、アルツハイマー病など、中枢神経系の幅広い疾患領域への展開も視野に入っています。これらの領域は、がんに次ぐ医療市場ともいわれており、同社が進める「再生医療×中枢神経系疾患」という分野は、将来の医療において大きな役割を担う可能性があります。

サンバイオの企業価値を3つの独自視点からチェック!

1. 評判(価値)

2025年7月4日現在の時価総額は約1,563億円。中小型株としては規模が大きく、一定の存在感を有する。

・PBRは約93.34倍と、再生医療への将来期待が織り込まれた水準。PERは赤字のため算出不可だが、収益化を見据えた先回り投資が進んでいる。

2. 実績(業績)

2025年1月期第2四半期時点では売上は未計上で営業赤字が継続。一方で、前年同期比では赤字幅が縮小しており、製品出荷を見据えた準備と投資が本格化している段階にある。

3. 共感(志向)

「治療法のない人を救う」という理念のもと、難治性疾患に挑戦。再生医療の実用化に向けた姿勢が、社会的な共感を呼んでいる。

将来性を先取り。時価総額1,500億円超の中小型成長株 

 2025年1月期の中間決算では、営業損失35.2億円、研究開発費は23.6億円となっています。売上はまだ計上されていませんが、これは製品出荷前の開発型企業として想定されたフェーズであり、財務の中身を見るとその前提が崩れているわけではありません。

 現預金は29.3億円、自己資本比率は45%超と、財務基盤は一定水準を維持。過度な資金不安を感じさせる状況ではなく、研究開発や製造体制構築のための投資余力も確保されています

 株価は2025年7月4日時点で2,171円、時価総額は約1,563億円に達しており、中小型株の中でも存在感のある水準といえます。
 PBRは約93.34倍と、再生医療分野への期待が大きく織り込まれている状態です。PERは赤字のため算出不可ながら、収益化を見据えた先回り投資の対象として市場に評価されていることがうかがえます。

赤字縮小で収益化フェーズへ着実に前進

 2025年1月期第一四半期時点において、サンバイオは売上をまだ計上しておらず、営業赤字が継続しています。ただし、これは製品出荷前のフェーズとして想定された状態であり、赤字幅は前年同期より縮小しています。現在は、収益化を見据えて体制整備や事業準備が進められている状況です。

 国内での承認取得を受け、同社は米国での治験再開に向けた当局との協議も進めており、日本発の再生医療をグローバル市場へ展開する準備が進行中です。

 当面は無配の方針をとっていますが、それは製品の安定供給体制と研究開発への投資を優先する、戦略的な判断といえます。今後、国内出荷の本格化や海外展開が進めば、収益構造の転換に向けた動きが具体化する可能性があります。

“治療法のない人を救う”。 将来性で注目される再生医療市場

 同社は、「治療法のない人を救う」という理念のもと、慢性期の外傷性脳損傷など、これまで標準的な治療法が確立されていなかった疾患領域に対し、細胞治療薬による新たな治療選択肢の提供を目指しています。

 こうした未充足の医療ニーズに対応する再生医療は、世界的にも需要が拡大している分野です。対象疾患の多くは高齢化とともに増加する傾向があり、国内外での患者数の伸びが予想されるほか、制度面の整備や技術革新も進んでいます。

 加えて、従来の治療法では対応が難しかった領域を補完する技術として、再生医療の存在感は今後さらに高まると見られています。サンバイオが展開する「中枢神経系疾患×再生医療」という分野は、医療イノベーションの一翼として、将来の成長が期待されています。

 加えて、従来の治療法では対応が難しかった領域を補完する技術として、再生医療の存在感は今後さらに高まると見られています。サンバイオが展開する「再生医療」という分野は、医療イノベーションの一翼として、将来の成長が期待されています。

 未治療領域を対象とした再生医療の実用化に向けて、長期的な研究開発・製造・供給体制の整備に取り組む姿勢は、社会的課題への対応と事業成長を両立させるものとして注目されています。対象となる中枢神経系疾患は世界中に広く存在しており、今後はグローバル市場における需要拡大も見込まれます。

 再生医療の社会実装とグローバル展開に挑むサンバイオ株式会社(4592)をご紹介しました。

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