成長する人材サービス市場で存在感を示すクイック(4318) 過去最高益&高水準の還元で個人投資家からも注目

 採用における高度な専門性を武器に、国内外で成長を続ける人材サービス企業株式会社クイック(4318)。看護師領域ではTVCMや新サービス「看護roo! 就活」を展開し、海外では拠点網を拡充。M&Aや業務提携も積極的に進めるなど、先を見据えた投資を次々と実行しています。

 その成果は業績にも如実に表れ、2025年3月期は売上・最終利益ともに過去最高を更新。人手不足と転職の一般化が進む中、クイックはどのような成長戦略を描いているのでしょうか。今回は2025年3月期の決算ハイライトや中期計画をもとに、クイックの強みと展望を読み解きます。

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ポイント

  • 拡大するHR市場で成長を続ける人材ソリューション企業
  • 売上・最終利益ともに過去最高を更新! 看護師領域などで積極投資
  • 今期予想を含めて5期連続で増配!個人投資家からも支持される高水準の還元

目次

成長するHR市場 専門特化モデルで強みを発揮

 日本の労働市場は今、「構造的な人手不足」と「転職の一般化」という二重の変化に直面しています。少子高齢化にともなう生産年齢人口の減少に加え、働き方の多様化や企業の即戦力志向が進んだことで、転職は特別な選択肢から「普通の選択肢」へと変化。ある調査では、個人の生涯転職回数は平均3回に近づいており、今後さらに増えると見込まれています。

 すでに国内の人材ビジネス市場は10兆円規模に達し、今後も右肩上がりが続くと予測されています。特に企業が求めるのは、即戦力人材・専門職・有資格者など、スキルと経験を備えた層。求人情報が溢れる時代にあっても、こうした人材の採用は依然として難易度が高く、的確なマッチングを実現できるエージェントの価値はむしろ高まっています。

 株式会社クイックが展開するのは、こうした専門性の高い領域に特化した人材紹介事業。建設、自動車、医療、製薬、IT、看護師など業界ごとに特化した専門サイトを展開し、業界に精通したコンサルタントが対応する“領域特化型”の体制を整えています。

 同社の最大の特長は、「一気通貫型」の支援モデルです。求職者側と企業側の両面を一人のコンサルタントが担当する体制により、ミスマッチを防ぐ人材紹介を実現しています。

 さらに、案件ごとに個人プレーのように動くのではなく、社内のコンサルタント同士が連携して成立させる「チームでのマッチング」が全体の約8割を占めている点も特徴です。

 国内だけでなく、クイックは海外展開にも注力。アメリカ、メキシコ、イギリス、オランダ、ベトナム、タイなどに拠点を構え、現地の日系企業を中心に人材紹介や労務コンサルティングを提供しています。各国で高まる採用ニーズを背景に、海外事業は着実に拡大しており、その成長ぶりにも注目が集まります。

 構造的な成長が続くHR市場。その中で、クイックは専門特化と一気通貫型支援、そして国内外の拠点展開を掛け合わせ、確かな存在感を発揮しています。

売上・最終利益ともに過去最高を更新

 2025年3月期はTVCM等の広告展開や事業買収などの先行投資により営業利益・経常利益が減益となったものの、売上高は前年比+10.2%の325億円、最終利益は同+2.2%の35.8億円と、いずれも過去最高を更新しました。

 営業利益の減益は主に積極的な事業投資によるもの。特に看護師領域において、TVCMやWebサイト刷新、看護師就活事業の買収など、将来の成長を見据えた投資を優先した形です。

 主力の人材サービス事業に関しては、建設・医療・ITなど専門性の高い領域での人材紹介が順調に拡大。売上は前年比+10.2%と、HR市場の構造的な追い風を捉えた成長を見せました。

 また、リクルーティング事業も好調で、売上は前年比+5.8%を記録。有効求人倍率の高止まりや、インバウンド需要の回復などを背景に、取引先が幅広い業種に広がっています。

 加えて、求人広告モデルは、従来の紙媒体や前払い型広告から、クリック課金型のアグリゲーションサイト(Indeedなど)への移行が加速。これにより、収益性が大きく改善し、営業利益は前年比+58.2%と大幅な増益となりました。

 事業別に見ると、人材紹介・求人広告・就活支援といった複数の柱がそれぞれ成果をあげており、好業績を支える構造が強化されています。

安定した配当方針で連続増配 TOPIX対策も継続

 安定的な株主還元も、クイックの大きな魅力のひとつです。

 同社は「配当性向50%」を目処とした基本方針を掲げ、利益に応じた分配を徹底。2025年3月期は年間配当96円(前年92円)となり、2026年3月期も増配を予定しています。こうした高水準の還元は個人投資家からも評価されています。

 株主優待制度も展開しており、100株以上の保有で毎年クオカードが進呈されるほか、3年以上の継続保有者には、ご当地特産品や工芸品が贈られる段階制の優待メニューを用意。長期保有を促す仕組みとしては手厚い部類といえるでしょう。

 こうした方針に加えて、2026年10月に予定されているTOPIXの構成銘柄見直しに向け、株式の流動性向上に向けた施策を積極的に実施しています。2025年3月期には、主要株主保有株の立会外分売や自己株式の消却など、浮動株比率の改善施策を実行済みで、現在も株価の底上げや認知度向上といった取り組みを継続して行っています。

“人を活かす会社”が描く、これからの成長戦略

 クイックの中期経営計画によると、初年度は積極的な先行投資期間とし、2年目以降は売上高で年平均8.9%の成長率を見込んでいます。すでに主力である人材サービス事業・リクルーティング事業の拡大に向けて、M&A・資本出資・業務提携を積極的に推進。看護師就活領域のサービス買収や外国人材関連企業との連携など、採用の周辺領域にも事業を広げています。

 また、企業文化の面で注目したいのが、「働きがいのある企業ランキング」で人材業界1位、全体でも20位を獲得したこと(2025年7月1日時点)。若手社員の積極登用、柔軟な制度設計、風通しの良い職場づくりに加え、2025年2月には株式付与型のESOP信託制度も導入するなど、人的資本への投資にも力を入れています。

 事業成長だけでなく、社員の働きがいや成長支援にも注力する株式会社クイック(4318)。採用支援を主業とする企業として、自らがそのロールモデルとなる姿勢は、今後の持続的な成長の土台となるでしょう。

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