意外と難しい?自分のスタンスに合ったバランスファンド選び【第7回】

N商事社員の福山春雅(通称ハルちゃん)が、N商事顧問で元証券マンの瀬山(通称セーさん)に父親の退職金の資産運用について相談しています。
父親からは、資産は増やしたいけど、なるべく損はしたくないと言われているため、ハルちゃんはバランスファンドを薦めたいようです。
目次
バランスファンドは組み合わせがたくさんあるので、選ぶのは大変

父の退職金の資産運用について相談させてください!


はい、伺いしましょう。


資産を増やしたいけど、損はしたくないみたいなんです。以前バランスファンドという投資信託は価格が安定していると教えて頂きましたよね。なので、バランスファンドを薦めようと思うのですが、どうでしょうか?


なるほど。バランスファンドですか。退職金の運用という目的であれば良いと思います。ただ、バランスファンドは色々な資産に投資しているので、組み合わせも多くて、意外と選ぶのが大変なんですよね。


株式だけじゃなく、債券とかにも投資するんでしたっけ?


他にはREITなどにも投資していますね。


REITって何ですか?


REITは不動産投資信託のことで、集めた資金でホテルやオフィスビルに投資をして、宿泊料や賃料をリターンとして受け取る商品になります。


へ~投資信託で不動産に投資できるんですね。


株式、債券、REITの国内と海外がそれぞれあり、さらに金などが入ってくる場合もありますので、組み合わせは本当にたくさんあります。


話しを聞いているだけで、選べる気がしなくなってきました・・・。

バランスファンドの安定型・積極型などの呼称は目安程度に

そういえば、以前バランスファンドには安定型とか積極型とかの種類があると教えて頂きましたよね。安定型を選んでおけば、あまり損しないんじゃないですか?


そうですね。一つの目安にはなると思います。ただ、運用会社によって安定の定義というのは違うと思いますから、注意も必要ですね。


たしかに目指している安定は違うかもしれませんね。


同じ安定型でも安定してお金が増えていくことを目指している銘柄もあれば、値段がずっと安定して同じなことを目指している銘柄もあるかもしれませんからね。

バランスファンドはリスク許容度と過去実績で選ぶ

色々な資産が入っているということですが、それぞれの資産がどれくらい増えて、どれくらい減る可能性があるのか、とかって調べる方法はあるんですか?


それであれば、各投資信託の目論見書や運用報告書の後半を見ると、このような資料が掲載されていますので、過去の実績は簡単に確認することができますよ。



これは、例えば日本株でしたら、5年間で最大32.2%増えて、反対に22%減少したことがあるということですか?


そうなりますね。


やっぱりそれぞれの資産で動きが全然違いますね。


そうですね。バランスファンドはこれらの資産が組み合わさって、比率もそれぞれ違ったりしますから、たくさんの種類がありますね。


その中からどうやって選んでいくのが良いんでしょうか?


長期投資の場合には、良い実績を残していて、値段がよく動く銘柄が良いとお教えしました。バランスファンドは値段の動きが分かりづらいので、選ぶ際にはリスク許容度と過去実績で選ぶのが良いと思います。


リスク許容度と過去実績ですか?


まずはリスク許容度について、説明しましょう。


お願いします!

リスク許容度とはどこまで資金が減っても大丈夫か

まず前提として、投資信託はプロが運用しているので損はしないと思ってしまいがちです。でも、市場ではプロとプロが勝負していますので、常に勝つことはできないです。


プロ野球も全員プロですが、常に勝つことはできないようなものですかね。


そういうことです。つまり、運用期間中、投資成果が常にプラスで推移することはあり得ないんです。投資をする際にまずはそのことを認識してほしいですね。


分かりました。そこはちゃんと父に説明します。


それが理解できたら、投資対象の資金がいくらまで下がったら困るのか、ということを考えてみてほしいです。


困るかどうかはどうやって考えていけば良いですかね。100万円あって、50万円は来月車の頭金に使うから無くなったら困るとかですか。


直近で明確に使う予定があるなら、その資金は投資に回さない方が良いですね。投資は余剰資金で行うべきです。例えば100万円あって、80万円くらいまでなら減っても大丈夫とか、半分以下になったら困るとか、自分のイメージですね。


自分がそれ以下になったら困るというイメージですか。


それがイメージできれば、どういったバランスファンドを選べば良いのか見えてきます。


イメージができたら、その後はどうやって選ぶんですか。


先ほど見た運用報告書の資料に、その銘柄の最大、最小も出てましたよね。


あ、そうでしたね。ではこれを見て、20万円以上減ったら困る場合には、最小値がマイナス20%より小さい銘柄を選べば良いんですね。


そういうことです。全部のバランスファンドをチェックしていくのは当然無理があるので、まずは先ほど言っていた安定型と名前についているものなどで絞り込んでから調べていっても良いかもしれませんね。

過去の実績を見る際には暴落時の動きを株価指数と比較する

次にある程度銘柄が絞れたら、チャートで過去実績をチェックしていきます。


実績をチェックする時にはどのように見たら良いのですか?


なるべく損はしたくないということですが、数年に一度必ず暴落や調整期間というものはやってきますよね。


その暴落の時にどんな動きをしていたかを見るんですね。


そういうことです。株価が大きく下がった時に、日経平均などの代表的な株価指数と比べてみると良いですね。


でも暴落っていつ頃起きていたんだろう・・・。


短期間の暴落であれば、2020年のコロナショックによる下落、長期間の暴落であれば、2007年、2008年のリーマンショックによる下落が分かりやすいですかね。


なるほど。株価指数と比べる時にはどんなことに注意して見れば良いんですかね?


日経平均の動きと比べて、どのくらい上下したのかを見てみると良いですね。基本的には日経平均よりも下がらない方が良いんですよね。


基本的には日経平均よりも下がらない方が良いんですよね。


なるべく損をしたくないという方針でいけば、そうなりますね。それから最大でどれくらい下落したかを確認して、その下落に耐えられるかも確認した方が良いですね。


実際にどこまで下落をしたかを確認して、もしそこまで下がったしても大丈夫かを確認するんですね。父と一緒にチャートを見ながら、探してみます。

資産配分を見直すファンドには要注意!

それと1つ注意しておかないといけないのは、資産配分を見直すバランスファンドです。


見直してくれた方が良さそうな気がしますが、だめなんですか?


例えば、大きく下がる前に株式を現金化して、またリバウンドで上がる時に株式を買えば、リターンは大きくなりますよね?


そうですね。それをやってくれるならリターンに期待ができそうじゃないですか!


先ほども言いましたように、プロ同士が戦っている中で、そのように毎回理想通りの運用をするのは非常に難しいです。


あ、たしかにそれが必ずできたら苦労しないですね。


一番まずいのが、下げてきた時に現金を増やして、もう一度買い直す前にリバウンドがきてしまうことです。下がるだけ下がって、そのまま上がらないということになってしまいます。


せっかく利益が得られる場面で上がらなくなってしまうんですね・・・。


運用が上手くいけば大きなリターンを得ることができますが、運用に失敗してしまうと、リターンを下げてしまうことになります。


どちらかというとハイリスク・ハイリターンな銘柄なのですね。


そうですね。他の資産も入っているとはいえ、リスクは高くなってしまいがちですね。なるべく損をしたくないというハルちゃんのお父様の意向には合わないですよね。

リターンが良すぎるバランスファンドも本来の目的と違うので要注意

それから、あまりにもリターンが良すぎるバランスファンドも注意が必要です。


それもハイリスク・ハイリターンだからですか?


そういうことですね。本来リターンを犠牲にしないとリスクは安定しないですから、リターンが良すぎるファンドはリスクもあるということです。


買う目的によっては儲かっているから良いというわけでは無いのですね。


バランスファンドを購入する目的は、許容する以上に資金が目減りしない事ですから、あまりリターンは求めすぎない方が良いですね。そもそも積極型のバランスファンドは個人的には存在意義を疑ってしまいます。


たしかに高いリターンを狙いたいのであれば、株式だけの投資信託で良いですもんね。


あとは上がりもしなければ、下がりもしないバランスファンドも除外して良いと思います。それであれば現金で持っている方が良いですからね。

まとめ

今回教えて頂いたことをまとめますと・・・

- バランスファンドの安定型・積極型などの呼称は目安程度に参考にする
- バランスファンドはリスク許容度と過去実績から選ぶ
- リスク許容度とはいくらまでなら損をしても大丈夫か
- 過去実績は暴落時の動きを確認しておく
- 資産配分を見直す銘柄、成績が良すぎる銘柄は注意

しかし、お父様のためにこうして相談に来るなんて偉いですね。


それはもちろん投資顧問料をもらうた・・・ゲフンゲフン、息子として当然のことです。


何か今不穏な言葉が聞こえましたが・・・。私もこれからはハルちゃんから投資顧問料をもらいましょうかね。


そ、それは勘弁してください!

今回登場したファンド
ファンド名 | レーティング(1年) |
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三菱UFJ国際
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