投資信託に為替ヘッジって必要?不要な理由を解説!【第18回】

投資信託の勉強に励んでいるN商事社員の福山 春雅(通称ハルちゃん)ですが、為替ヘッジという分からない言葉が出てきてしまいました。調べても分からないので、いつものようにN商事特別顧問で元証券マンの瀬山(通称セーさん)に教えてもらいに来たようです。
目次
為替ヘッジで為替リスクを回避できる

セーさん!また分からないことがあったので教えてください。投資信託の銘柄を見ていたら、同じ銘柄で為替ヘッジありとなしがありました。為替ヘッジって何ですか?


為替ヘッジは為替リスクを回避することができるものとなります。


なるほど・・・為替リスクって何でしたっけ?


まずは為替リスクから説明しましょうか。


お願いします!


投資信託の基準価額は日本円になっていますが、外貨建て資産を持っていれば為替レートによって変動します。


例えば米国株のインデックスファンドですと具体的にはどうなりますか?


ドルが安くなれば基準価額が下がって、ドルが高くなれば上昇します。


なるほど。そのように影響を受けるんですね。


このように基準価額が為替レートの影響を受けることを為替リスクといいます。株価が上がっていたとしても、外貨が安くなって円が高くなれば基準価額は下がってしまうわけです。


その為替リスクを回避できるのが為替ヘッジというものなんですか?


そういうことです。為替の変動を気にしなくても良くなります。

為替ヘッジあり・なしではありの投資信託の方が少ない

さて、どうやって為替ヘッジを行うかですが、為替の先物取引を使います。


さ、先物取引ですか。以前も出てきた気がしますが、まだ分かっていないんですよね。


先物を少しだけ説明しますと、「将来のある時点において、あらかじめ決められた価格で売買することを約束する取引」となります。


また難しいですね・・・。そのうち取引することを約束しておく感じですかね?


まぁ大体そんなところです。さて、話しは戻って為替ヘッジを行う方法ですが、100ドル分の株を持っているとしたら、先物取引で100ドル分の通貨を売っておきます。


売っておく?持っていないものを売っておくんですか?


約束するだけなので、持っていなくても取引ができるんですね。


なるほど。約束する時には持っていなくても良いんですね。


そのように現物と逆のポジションを先物で持っておくと、通貨の変動が相殺されます。


ちゃんと分かっているか怪しいですが、先物を使ってプラマイゼロになるようにするんですね。


そういうことです。個人で外国株を買って、為替で逆のポジションを持っておくのはなかなか難しいですが、大きな資金を運用している投資信託であればそれが可能です。


たしかに私には確実に無理ですね・・・。


外国株式に投資する目的としては、当然値上がりを狙っていますから、いらないリスクを無くせるのは魅力的に見えますよね。


そうですね!どちらかを選ぶとしたら、間違いなく為替ヘッジ有りですね!


ただ、海外に投資している銘柄を見ていきますと、為替ヘッジありの銘柄の方が少ないんですよね。


え!そうなんですか!ヘッジありの方が圧倒的人気じゃないんですか!?

為替ヘッジにはコストが必要になる

なぜなら、為替ヘッジはただでできるわけじゃないんです。


あ、コストが掛かるんですか。


為替先物取引の仕組み上そうなるのですが、買う通貨は金利分をもらって、売る通貨は金利分を負担します。円を買ってドルを売ると、その金利差を負担しないといけないんですね。


えーそうなりますと・・・米国に投資している場合は・・・円の金利をもらって、ドルの金利を負担するんですかね。


そうです。金利は常に変動していますが、日本は低金利が続いてますので、米国の金利が2~3%高い時もあります。


そんなに負担しないといけないんですね!


長期で投資することを考えた場合、途中で為替が良かったり悪かったりしても大きな問題にはならないですよね。でも為替ヘッジのコストは常に負担していかないといけないわけです。


途中の変動を抑えるためにコストを掛けるのは無駄になってしまうわけですね。


長期投資という目線で考えた場合には、為替ヘッジを行うことが目的に合っているのかはよく考えないといけないですね。

円高を予想して為替ヘッジを使っても、株価が下がる可能性が高い

ある程度短期の投資では活用しても良いかもしれません。ただ、通常為替は株価に比べると変動の幅は小さいんですよね。NYダウは1%、2%変動しますが、為替は短期にそこまで動くものではありません。


為替は短期ではあまり動かないので、短期投資ではヘッジをしてまで為替リスクを下げなくても良いということですか。


そういうことですね。


でも何とかショックの時とかは短期で大きく動いたりするんじゃないですか?


たしかにそういう時は動くかもしれませんが、頻繁に起きることでは無いですよね。ショックを予想して為替ヘッジを買うのは難しいと思います。


たしかにそうですね。では、為替を予想して、これから円高になりそうだぞ!という時に買うとか・・・?


為替の変動を当てるですか。それもショックを予想するのと同じように難しいですが、仮に当てることができたとしても、割に合わないと思います。


予想が当たっても割に合わないんですか。それはなぜですか?


リスクオンとリスクオフという言葉を聞いたことはありますか?


聞いたことはあるような気がしますが、意味は分からないです・・・。


リスクオンは投資家がリスクを取って、リターンを追求しやすい状況です。リスクオフはその逆となります。


リスクオンは資産が上がりやすい状況で、リスクオフは資産が下がるかもしれない状況なのですね。


安全資産と考えられている円は一般的にはリスク資産と逆の動きをします。リスクオンには円安に向かって、リスクオフには円高に向かいます。


えーと、リスクオフで株価が下がる時には円が高くなるんですよね。米国株を持っていると株価が下がって、為替も下がるということですかね。


そうなんです。円高を予想して、為替ヘッジで避けたとしても、結局株が下がってしまう可能性が高いんです。


だから割に合わないということなんですね!

リスクオフに備えるならキャッシュ量で調整した方が良い

リスクオンオフを予想しながら投資をするのであれば、為替ヘッジを使うよりも、リスクオフ時はキャッシュ量を増やしておいて、リスクオン時にリスクを取りに行った方が効率的です。


うーん、説明を聞けば聞くほど為替ヘッジに魅力を感じなくなってしまいますね。


新興国への投資で使えればメリットはありそうですけどね。新興国は株価の変化率や債券の金利の高さは魅力ですが、為替の変動が大きくて手が出しにくいので。


新興国投資では為替ヘッジは使えないんですか?


そうですね。為替の先物市場がしっかり機能している通貨でないとヘッジはできないんです。基本的にはドルとユーロくらいですかね。


そうなんですね・・・。残念です。


さて、中長期の投資に為替ヘッジを利用することは目的に合わないとお話ししましたが、ちょっとチャートで比較してみましょうか。


はい、お願いします!



米国NASDAQオープンという銘柄のリターンを比較していますが、Aコースの水色がヘッジ有りです。オレンジがBコースのヘッジ無しです。


なるほど。ヘッジありが上回っている時もあるんですね。


そうですね。2008年のリーマンショックの後は、ヘッジありの方が立ち直りは早いですね。


何とかショックがあればやはりそうなるのですね。


ただ、ヘッジコストは累積で掛かっていきます。1年単位で見ればヘッジありが良かった年、ヘッジなしが良かった年は起こり得ますが、長期ではヘッジコストが重くのしかかってきてしまいますね。


長期的にはヘッジなしが上回っていくんですね。


次にそれぞれの目論見書を見てみましょう。




これは目論見書に記載されている、過去5年間の最大値、最小値、平均のリターンです。


この当ファンドの部分ですよね。


そうです。ヘッジありのAコースの方が最小値は抑えられていますが、最大値も抑えられてしまい、結局リターンの平均値はだいぶ下回ってしまっていますよね。


長期で見るとだいぶ差がついていってしまいそうですね。


たしかにAコースの方が凸凹は小さくなります。でも、先ほども言いましたように株式は為替よりも値動きが大きいです。


抑えることができるリスクは限定的なんですね。


はい、結局大きくリスクを下げることはできないので、これくらいの差であればリターンを狙った方が良いように思いますね。長期の資産形成で海外に投資するのであれば、為替毎買うつもりで投資をした方が良いのではないかと思います。


為替毎買うですか・・・なるほど。

インフレ率が高い新興国の為替には注意

ただ、為替毎買うといっても、新興国の場合は気を付けないといけません。


どこらへんに気を付けるんですか?


高金利の新興国の債券などが定期的にブームになりますが、新興国は金利が高くてもインフレ率も高いです。


インフレ率が高いとどうなってしまうんですか?


インフレというのは物価が上がる、イコール貨幣価値が下がることです。為替というのは結局Aという通貨とBという通貨の交換レートですから、片方の通貨の価値が下がると交換レートは下がっていくんですね。


金利が高くても、為替は下がっていってしまうんですね。


そうなりがちです。高い金利だからと喜んで買うと、思っていたことと違うことが起こり得ますね。


私も絶対金利に釣られて買ってしまいそうです。


経済成長する国は通貨の価値は上がるなんてことを言う営業マンもいますが、実際にはあまり無いケースだと思います。


そうなんですね。国が発展したら通貨も上がりそうな気がしてしまいますけど。


中国なども国が介入しているのもありますが、元高になっていないですからね。長期で見ると、やはりインフレ率が高い国の通貨は安くなっています。長期で投資する場合には、そういった経済の原理原則を抑えて投資していく方が良いと思います。

まとめ

今日教えて頂いたことをまとめますと・・・

- 為替リスクを回避するのが為替ヘッジ
- 為替ヘッジのコストは常に必要となってしまうので、中長期では大きな差になってしまう
- 円高と株安は同時に起きる可能性が高いので、短期取引に為替ヘッジを使うこともあまり有効では無い
- 海外に投資する場合には、為替毎投資をするつもりでその国の成長に投資をする

要するに、欠点も含めてその人自体を愛するべきということですね・・・。


何か合っているような、合っていないような結論になっていますが・・・どうかしたんですか?


まぁお気になさらず。よし!二人の将来のために投資を頑張らないと。


あれ、ひょっとして何か良いことがあったんですか?


おっとそろそろ終業時刻ですね。また今度ゆっくり話しますので、お疲れ様でした~。


お疲れ様です・・・。若いって良いですねぇ。私も妻にお土産でも買って帰りますか。

今回登場したファンド
ファンド名 | レーティング(1年) |
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野 村
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野 村
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