レーティングの活用方法と注意点を学ぼう【第4回】

N商事社員の福山春雅(通称ハルちゃん)が、パソコンを勉強中のN商事顧問で元証券マンの瀬山(通称セーさん)にパソコンの入門書をお勧めしたようです。
ハルちゃんはカスタマーレビューを見て本を選びましたが、投資信託の情報サイトにも星マークがある事を思い出しました。
目次
投資信託の情報で出てくる☆の正体はレーティング

そういえば情報サイトで投資信託を見ていたら、カスタマーレビューみたいな星がついていたのですが、あれは何ですか?


それはレーティングというものですね。


あれはレーティングっていうんですね。それもやっぱり購入者の口コミとかでついているんですか?


レーティングは口コミでは無く、いくつかある評価会社が各投資信託に対して採点をしています。


へ~採点はどうやってしてるんですか?


同じカテゴリの投資信託内で過去の実績を元に相対順位でつけることが多いですね。


相対順位ということは、星が多い銘柄も少ない銘柄も必ずあるんですね。カテゴリというのはどういった内容ですか?


カテゴリというのは、例えば日本の大型株に投資するアクティブファンドなど、投資対象と運用手法で分けています。

期間毎に5段階。ファンド選定時の重要情報

以前銘柄を選ぶ際には過去の実績が大事と教わりましたよね(第1回 アメリカの成長を手にするための長期投資の新ルール参照)。そうなると、過去の実績を元にしているこのレーティングを参考にして投資信託を選んでも良いんですか。


はい、それは間違いなく参考にして良いです。ただ、参考にする際、いくつか注意すべき点や、より効果的に活用する方法がありますので、そちらをご説明・・・あ、まだ、話し込んでいて大丈夫ですか?


大丈夫です!顧問と話しをしていれば、誰にも文句は言われないでしょうし!


分かりました。まず前提として、星は1つから5つまでの5段階で評価がつけられることが一般的です。星が多いほど高評価となります。


そこはカスタマーレビューと同じですね。


星がついていない銘柄もあると思いますが、それは運用期間がまだ短くて評価ができない場合や、評価機関が設けている基準を満たしていない場合があります。


評価機関が儲けている基準というのはどういったものがあるんですか?


一般的には純資産がいくら以上という基準を儲けていることが多いですね。それから、レーティングは1年、3年、5年等の期間毎につけられます。


期間毎につけるんですか。そうなると同じ銘柄でも1年と3年で評価が違ったりするんですか?


そうです。期間毎の実績を見ますから、当然変わってきます。

違うカテゴリの銘柄との比較には使えない

まず注意点ですが、先ほども言いったように、評価は同一カテゴリ内の相対評価でつけています。そのため、違うカテゴリの銘柄とレーティングを比べても良い悪いは判断できません。


同じカテゴリで評価を付けるのはなぜですか?


一言に投資信託といっても、色んな種類があり、銘柄ごとに目指している成果が違います。お金を増やすことを目標にしている銘柄とお金を減らさないことを目標にしている銘柄を比べても優劣がつけられないですよね。


なるほど。陸上競技で短距離走と長距離走の選手で速さを比べるようなことになってしまうのですね。


そういうことです。同じカテゴリなら目指している成果は似通っていることが多いですからね。

バランスファンドは参考程度に

それから評価が難しいファンドとして、バランスファンドがあります。


バランスファンドはなぜ評価が難しいのですか?


バランスファンドには安定型、中間型、積極型など様々な目標がありますので、それぞれカテゴリとして分けてレーティングをつけています。でも、どこまでが安定型かの定義が難しいので、必ずしも目指している成果が同じにはならないんですね。


陸上競技なら、400メートルまでは短距離、800メートルと1500メートルは中距離などと明確ですけど、資産運用の安定や積極は定義が難しそうですね。


さらに同じ安定型でも、株式や債券の比率が決まっている比率固定型のバランスファンドと相場の状況によって比率を動かすバランスファンドもありますからね


それはさらに比較するのが難しそうですね。


リターンを狙わずに資産を守ることだけを重視しているバランスファンドの場合には、他のバランスファンドよりリターンが悪いからといって、悪いファンドとは言えなかったりしますし。


バランスファンドのレーティングは難しいんですねぇ


そうですね。バランスファンドの場合には、参考程度にしておいた方が良いかもしれません。

短期のレーティングは相場状況のチェックも必要

評価期間が短期のレーティングを参照する場合にも注意点があります。


どんな注意点ですか?


まず、株式市場にはグロース株と呼ばれる今後成長が見込める株が上昇する場面や、バリュー株と呼ばれる現時点の株価が企業価値より安い株が上昇する場面などがあります。


時期によってトレンドみたいなものが違うんですね。


そうですね。そして同じカテゴリの投資信託でも、グロース株中心に投資している銘柄やバリュー株を狙って投資する銘柄があります。なので、短期のレーティングはトレンドによって変わってきてしまうんですね。


短期のレーティングが上回っていても、トレンドのおかげの場合があるんですね。


ずっとバリュー株が優勢といったことは無いので、長期であれば正当な評価がしやすいんですけどね。


短期の場合には、市場の状況も見ないといけないんですか。ちょっと難しそうです・・・。


そうですね。どんな相場だったかまで調べるのはなかなか大変ですよね。

短期のレーティングからファンド特性を知ろう

どんな相場だったかを調べるのは難しいですが、過去1年、3年くらいが上昇していたか、下降していたかであれば、調べるのはそんなに難しくないですよね。


それぐらいだったら、頑張れば何とか調べられるかもしれません。


例えば直近1年が上昇していて、1年のレーティングが高い銘柄があれば、上昇相場にはよく上がる銘柄だということが分かりますよね。逆に直近1年が下げている場合で1年レーティングが高ければ、下げ相場でもあまり下がらない銘柄だということが分かります。


銘柄毎の特徴などが何となく掴めそうですね。


そういうことです。1年、3年などの短期のレーティングで銘柄の特徴を把握しておけば、暴落が起きた時に一旦売っておいた方が良いか、持ち続けて良いかなどの判断にも役立ちますよね。


なるほど、レーティングはそういった使い方もできるんですね。

有望ファンドは長期と短期のレーティングを比較して見つけよう

長期投資の場合には値段がよく動く銘柄が良いと以前教わりましたが、そういった銘柄をレーティングで探すこととかってできるんですか?


例えば直近の相場が下がっている場合で、1年レーティングが2、5年のレーティングが5だったりすれば、下げる時には大きく下げるけど、上がる時には大きく上がる銘柄の可能性は高いですね


なるほど。短期と長期のレーティングを組み合わせるんですか。


そうですね。短期のレーティングだけ見てしまうとだめな銘柄に見えてしまいますが、長期投資の対象としては有望な銘柄ですね。


目先の状態はいまいちでも、将来は有望なのですか。まるで私のようですね。それは買いですね。


そういうことにしておきましょう・・・。

掘り出しファンドの探し方

逆に長期のレーティングが低くて、短期のレーティングが高い場合には、あまり長期的に持たない方が良い銘柄となりますかね?


私のへそくりみたいに緊急時のために持っておくんですかね?


まぁそんなところです。そういった銘柄は上昇相場ではキャッシュが多い分他の銘柄に比べて利回りが落ちがちなので、レーティングは落ちてしまいます。


相対順位ですと、上昇していても、他の銘柄より上昇が小さいとレーティングは下になってしまいますもんね。


ただ、下落相場になった場合、キャッシュが多いと抵抗力が出ますので、下落相場ではレーティングは上がります。


そうなりますと・・・どういうことですかね?


例えば長期間上昇相場が続いて、直近で下落していた場合には、長期のレーティングが低くて、短期のレーティングは高くなるわけです。


なるほど。相場状況によっては、投資信託の目指している成果通りになった結果、長期が低くて、短期が高くなる場合もあるのですね。


値段が良く動く銘柄ではありませんが、あまりリスクを取りたくない方の長期投資には良いと思います。


長期のレーティングが悪いと敬遠してしまいそうですが、保有する人の目的によっては良い銘柄になるんですね。


それから少しレアケースですが、ファンドマネージャーが交代して成績が大きく良くなることもあります。そうすると、長期のレーティングが低くて、短期のレーティングが高くなりますよね。


そんなケースもあるんですね。でもそんな銘柄を見つけられたら嬉しいですね。


そうですね。長期と短期でレーティングが大きく異なる銘柄があったら、なぜなんだろうということを少し調べてみると、掘り出し銘柄に出会えるかもしれませんね。

レーティングが非常に重要なのはインデックスファンド

他ですと、インデックスファンドの評価にもレーティングは非常に重要です。


そうなんですか。インデックスファンド同士を比較するのは難しそうな気がしますけど。


実はインデックスファンドの場合だけ、銘柄同士は比較していなくて、対象となる株価指数と比較をしているんです。


え?インデックスファンドって対象の株価指数と同じ動きを目指して運用するんじゃなかったでしたっけ?それなのにどっちが上か比較するんですか?


どちらが上かでは無く、どれだけ乖離せずに運用されているかを比較しています。


あ~目標通りに運用できているかを評価するんですか。


そういうことです。対象の株価指数と乖離しているという事は、効率的な運用ができていないということになります。インデックスファンドのレーティングが高いということは、理想的な運用ができているということですね。


インデックスファンドを買う時は参考にします!ちなみに対象の株価指数と乖離してしまう理由って何があるんですか?


まず、保有している資産額で指数と同じ比率で銘柄を買うのも大変ですし、新規の買い付けや解約でのお金の出入りもありますからね。意外と難しいんですよ。各運用会社のノウハウが活きてきますね。

まとめ

今日教えて頂いたことをまとめますと・・・

- ファンドのレーティングは口コミでは無く、評価会社が付けている
- バランスファンドのレーティングは評価が難しい
- 短期のレーティングはファンドの特性を掴むために利用する
- 短期と長期の評価が異なるファンドは掘り出しものの可能性あり
- インデックスファンドのレーティングは指数との乖離率で評価するので非常に有効

レーティングはとても参考になりますが、銘柄や相場の状況によっては、そのまま鵜呑みにするのでは無く、少し注意が必要ですね。


カスタマーレビューも自作自演の危険性もあったりしますから、そのまま信じてはいけませんものね。


お勧めしていただいたパソコン入門書は大丈夫そうですかね。


さすがにこれだけ口コミが入っていれば・・・ん?この口コミほとんど同じ日に投稿されてますね・・・。


怪しいですね・・・。


じゃあ、駅ビルの本屋さんに直接探しに行きますか。私が第三者機関として評価しますよ。ということで帰りましょ~!


お願いします。でもまだ定時すぎたばかりですけど大丈夫ですか?


残業はしない主義なので、大丈夫です!上司のレーティングも常に星1つですから、気にしていませんし!

今回登場したファンド
ファンド名 | レーティング(1年) |
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鎌倉
結い2101 |
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