30年後に後悔しない、積み立て投資の始め方【第3回】

何だか元気の無いN商事社員の福山 春雅(通称ハルちゃん)ですが、どうやら友人の結婚式などが重なり昼食代が無いようです。そこに来たN商事特別顧問で元証券マンの瀬山(通称セーさん)が以前パソコンを直してもらったお礼にお昼ご飯をご馳走してくれることになりました。
目次
持ち株会はハイリスクハイリターン!?

お昼ご馳走になってしまって、恐縮です。しかし、資産形成をしたいと思いつつ、毎月カツカツでなかなか始められる気がしません・・・。


思い切って給与からの天引きや引き落としにしてしまえば、残りのお金で何とか生活しようと頑張るんじゃないですか。


天引きですか・・・。あ、そういえばうちの会社って上場してましたよね。持ち株会に入れば、給与天引きで株を買ってくれるんじゃなかったでしたっけ?


持ち株会ですか・・・。持ち株会は補助も出たりしますし、会社の経営が上手くいけば非常に大きな利益が得られます。ただ、会社にもしものことがあった時には資産と給与を同時に失うことになりますから、実はハイリスクハイリターンでもあるんですね。


へ~持ち株会ってハイリスクハイリターンなんですか。考えたことも無かったです


まぁ仕事へのモチベーション向上などの良い面もありますけどね。なので、持ち株会に入るのは悪いことではありませんが、持ち株会だけに全力投球しないことが大事ですね。

積み立て投資の第一歩はつみたてNISAから!

じゃあ引き落としで投資信託を買っていくことも考えていった方が良いですね。でもこれから長く買い続けていくことを考えると、どの投資信託を買うか決めるのが難しそうです。


最初に選ぶのは苦労しますよね。まずは金融庁が定めているつみたてNISA対象銘柄の中から選ぶのも良いかもしれません。


つみたてにーさ?・・・それはどんな商品ですか?儲かるんですか?


いえ、商品では無く、制度になります。つみたてNISAは積立投資で購入した投資信託について、年間40万円を上限として、20年間利益が非課税になる制度です。


利益が非課税?儲かっても税金を取られないということですか?それは魅力的ですね。


ただ、どの投資信託でもつみたてNISAが利用できるわけではありません。対象の投資信託は信託報酬や運用期間などで制限があって、銘柄が絞り込まれています。


最初から絞り込まれてるんですか。その方が選ぶのが楽そうですね。


そうですね。初心者の方には選びやすいと思います。


じゃあつみたてNISA対象の投資信託から選びます!

積み立て対象ファンドの選び方

ただ、絞り込まれているからといって、どの銘柄でも良いという風に安易に考えてはいけませんよ。


え、そうなんですか!安易に決める気満々でした。


例えば金融庁としては長期・積立・分散投資という目的を掲げているので、バランスファンドという投資信託が入っています。


バ、バランスファンドですか。それはどんな投資信託なんですか?


株式と債券など、複数の資産を組み合わせて、価格を安定化させている投資信託です。


資産のバランスが取れているから、バランスファンドなのですか。そのバランスファンドが対象に入っていると、何が問題なんですか?


そうでしたね。長期投資ならお金が増えていく成長資産に投資した方が良いという話しでしたよね。


そうです。長期投資では途中で価格を安定化させる必要は無いんです。毎月買っていく場合には、むしろ途中は価格が下がった方がその分安く買えますし。


なるほど。最後の方に上がってくれれば、途中は下がっても良いんですね。


途中の価格の安定のために成長性を犠牲にするのは、長期投資においては間違いだと思います。ハルちゃんはこれから20年、30年という投資をするのですから、今バランスファンドを選ぶ必要は無いと断言できます。


長期投資をする場合にはむしろ値段が良く動く投資信託の方が良いんですか。


そういうことです。


バランスファンドのような分散は必要無くても、やはり投資信託はいくつかに分けておいた方が良いんですよね?


そうです。以前話したことを覚えていてくれましたね(第1回 アメリカの成長を手にするための長期投資の新ルール参照)。アクティブファンドであればファンドマネージャーの変更など、想定できないリスクに備えて、単純な銘柄の分散は必要ですね。


もちろん教わったことは無駄にしませんよ。


それと、銘柄を分散する際、地域の分散もしておくと、なお良いです。日本がバブル崩壊から低成長に入ってしまったように、20年、30年で考えると国の衰退はありますからね。


地域の分散ですか・・・どこの国が良いかなぁ。そういえば大学の卒業旅行でベトナムに行ったらすごい良い国だったんですよ。ベトナムにも投資してみようかな。


ベトナムですか。有名な世界遺産もありますよね。ただ、海外に投資する場合、新興国への投資については注意が必要です。


注意ですか?どんなことでしょう?


先進国であれば体制はそう変わりませんが、新興国の場合には指導者が変わることで国の方針が大きく変わってしまうこともあります。新興国への一国集中投資は避けた方が無難です。新興国に投資をするなら新興国全体の方が良いですね。


なるほど、たしかにニュースで軍部のクーデターとか見たことあります。気を付けます!

コストも大事だけど、欲しいのはリターン

そういえば今日の朝テレビを見ていたら、投資信託のリターンを信託報酬で割った数字が高いほどコストパフォーマンスが良いと紹介していました。金融庁もつみたてNISAの商品を信託報酬で制限しているということは、やはり長期投資では信託報酬で選ぶのが大事なんですよね?


なるほど、コストパフォーマンスですか。でもその計算でいきますと、例えばA銘柄は信託報酬が0.2%で1年リターンが5%、B銘柄は信託報酬が2%で1年リターンが15%とすると、Aの方がコストパフォーマンスが良いとなりますよね


5÷0.2は25で、15÷2は7.5ですから、そうですね。


ではこれをお金で考えますと、両方に100万円ずつ投資して1年経つと、A銘柄は5万円お金が増えて、Bファンドは15万円お金が増えるわけです。5万円と15万円だったら、どちらが欲しいですか?


それはもちろん15万円ですよ!


そうですね。投資で一番大事なのは、投資金額に対して得られるリターンなわけです。


なるほど。いくら信託報酬が低くてもお金が増えなかったら意味無いんですもんね。


そうです。それにそもそも投資信託のリターンとして出ている数字は信託報酬を引いた後の数字です。


あ、そうなんですね。


リターンという結果だけを比較すれば終わる話しなのに、1つ戻って信託報酬を持ち出して比較するのはおかしな話しですよね。


たしかに比べるところがおかしい気がしてきました。


コストはたしかに大事ですが、最近はそれが行き過ぎてコスト至上主義といえるような考え方が横行してしまっているような気がします。本質を見失ってはいけませんね。

積み立てはいつ始めるべきか

では、どの投資信託を買うか決めて、値段が下がったタイミングで積み立てを始めます!


何を買うがが決まったら、早く始めてしまっても大丈夫だと思いますよ。


え、でも安く買えた方が良いじゃないですか?


もちろんそれに越したことは無いですけど、タイミングを考えすぎるとなかなか始められないですからね。


たしかにいつまでも悩んでいそうな気がしますね・・・。


ハルちゃんがこれから30年間毎月積み立て投資をするとしたら、30年×12回で360回積み立てをしますよね。最初の1回は360分の1なわけですから、多少タイミングを間違ったとしても十分取り返せます。


そうですね。それに買い始めた後に下がったとしても、さっき言っていたみたいにむしろ安く買えるわけですもんね。


そういうことです。ちなみにそのように同じ金額で定期的に買うことで購入する価格を平均化させることをドルコスト平均法といいます。


ドルコスト平均法ですか。覚えておきます!じゃあ値段はあまり気にせず、長く買い続けていけば良いんですね。


ただ、5年後、10年後には一度立ち止まって見直してみた方が良いですね。


見直しが必要なんですか?値段の上げ下げを気にしなくて良いのであれば、ほったらかしておいても問題無いんじゃないですか?


いえ、例えば10年間積み立てを続けると120回分の資産が貯まりますよね。そうなると新たに買い付ける分は120分の1になりますので、平均化の効果がだんだん薄くなっていくんです。


資産が大きくなってくると、追加で買った分の影響が小さくなっていくんですか。


はい、買い始めたばかりの頃は銘柄選びを間違えたり、高い時に買ってしまったりしても取り返すことができます。でも、だんだん持っている資産の上下の影響が大きくなっていきますから、銘柄選びの重要さが増していきます。


銘柄選びが重要!?そ、そうなんですか。全く自信無いんですけど・・・。


今は自身が無くても、投資を続けて経験を積んでいけば、良い銘柄を見抜く目も養われていると思いますよ。


まずは投資を開始して、経験を積んでいくことも大事なんですね。


それから、最近はほったらかし投資なんて言葉をよく聞きますが、本当にほったらかしにすることは絶対にお薦めしません。時間が経てばどんどん状況は変わっていきますからね。ほったらかし前提だと、最初の銘柄選びにも失敗できませんし。


たしかにだめな銘柄を買ってほったらかしにしておいたら、悲惨なことになりそうですもんね。


最初は成長重視で考えて、例えば住宅購入のためにまとまった資金が必要になったり、定年が近付いてきたりしたら、取り崩す予定の資産は安定化させていくことも必要でしょうし。そのタイミングであればバランスファンドの出番もあるでしょうね。


お金を使う予定が出てきたら、値段を安定化させるのもありなんですね。


そうです。でも使う予定のお金より資産の方が多ければ、残りは引き続き成長資産に投資しても良いですよね。


なるほど。たしかにそうですね。


定年退職後も再雇用してもらえるかもしれませんし、30年後には70歳まで働くことが当たり前になっているかもしれません。というように状況はどんどん変わっていきますから、それに合わせての調整は必ず必要になります。

まとめ

自分の将来のための投資ですから、ほったらかしになんてしてはいけないんですね。有難うございました。今日教えてもらったことをまとめますと・・・

- 持ち株会は意外とハイリスク・ハイリターン
- 資産形成を開始する時には積み立て投資がお薦め
- 新興国への投資は一国集中は避ける
- ファンドを選ぶ際にはコストにこだわり過ぎない。大事なのは得られるリターン
- 積み立て当初は多少銘柄選びに失敗しても取り返せる
- 状況はどんどん変わっていくので、定期的に見直しをして、ほったらかしにはしない

ほんと時間が経てばどんどん状況は変わっていきますよね。さっきはお腹一杯だったのに、こうして話しているうちにだいぶお腹に余裕が出てきましたから。ということで、デザートも頼んで良いですか?


私の財布の状況も変わってしまったので、それはまた今度ということにしましょう!


残念・・・。ご馳走様でした。
