テーマ型ファンドを長期投資に組み込むメリットとは?【第20回】

1年間で倍になっている投資信託を見つけたN商事に務める福山春雅(通称ハルちゃん)はN商事顧問で元証券マンの瀬山に自慢をしにきましたが、その銘柄はテーマ型ファンドでした。
あまりテーマ型ファンドに良い印象を持っていないハルちゃんに対し、セーさんは説明したいことがあるようです。
目次
テーマ型は長期保有には向かないが、長期投資に利用することは問題無い

セーさん!すごい投資信託を見つけてしまいました!


どんな銘柄ですか?


これです!1年で倍になっていますよ!すごいですよね!


本当ですね。これは自動運転に関するテーマ型のファンドですね。


あ、これテーマ型ファンドなんですね。ネットでテーマ型のファンドは良くないという意見をよく見るので、買わない方が良いですよね。


たしかにそういう意見も多いですね。では、今日は少しテーマ型ファンドについてご説明しましょうか?


お願いします!


世間ではテーマ型に対してネガティブな意見も多いです。よく挙げられる理由としては、いつか対象のテーマは廃れるので長期の資産形成には向かない点と、話題のテーマを追ってしまうと高値掴みをしやすいという2点がありますね。


長期の資産形成に向いていないのですか。じゃあ私は買わない方が良いですね。


その点ですが、テーマ型は長期の資産形成に向かないという方は、一つのファンドをずっと持ち続けるという長期保有と長期投資を混同していると思います。


長期保有と長期投資・・・たしかに意味は違いますね。


たしかにずっと特定のテーマが有効ということは難しいと思います。しかし、長期投資とは投資を続けていくことが大事であって、一回購入した銘柄を売却してはいけないわけではありません。


いつもセーさんは見直しをすべきと言ってますもんね。


そう考えた場合、テーマ型ファンドを長期投資の資産の一部として取り込むことも可能だと思います。

テーマ型を資産に組み入れてほったらかしを防ぐ

ちなみにテーマに関係ある銘柄だけに投資するということは、投資対象はかなり絞り込まれているんですか?


テーマにもよりますけど、アクティブファンド以上に銘柄数が絞り込まれているテーマ型ファンドもありますね。


それだと変動が激しくて安心できなさそうですね。


その安心できないことが、長期投資のスパイスに利用できると思います。


スパイスというのはどういうことですか?


今まで何度か、常にマーケットと自分の資産を継続的にウォッチしていった方が良いという話しをしていますが、人間誰でも飽きてくると思います。


私も継続することは苦手ですね・・・。


相場が大きく動けば心配でウォッチしますが、派手な動きをする年の方が少ないです。飽きてきてほったらかしにしてしまうくらいなら、少し値動きの大きいファンドを資産の中に組み入れて、一喜一憂しないまでも価格を気にする方が興味もわきやすいと思います。


なるほど。興味をわかせるのがスパイスの役目なんですね。

高値掴みはテーマ型に限った問題では無い

もう一つの高値掴みをしやすいという点は問題無いのでしょうか?


購入タイミングについては、テーマ型だけに限った話しでは無く、どのファンドにも関係してくる話しです。去年1割上がったから今年も同じだけ上がるか分からない、というのはテーマ型だけでは無く、インデックス型でもどのファンドでも同じことだと思います。


では、テーマ型だけがどうして高値掴みをしやすいと言われてしまうのでしょうか?


背景としては、どこの運用会社も話題となっているテーマでファンドを組成したいので、同じテーマで新しいファンドが次から次に組成されがちです。そういう過熱感がある市場に飛びつくことが高値掴みにつながるということだと思いますが、それもテーマ型に限った話しでは無いです。


テーマ型だけの問題では無く、過熱している市場に入っていってしまうこと自体が問題なのですね。


そういうことです。

テーマ型ファンドには明確な定義は無い

テーマの内容って色々ありそうですけど、テーマを決めるのに制限とかルールとかあったりするものですか?


投資信託にはアクティブファンドとかバランスファンドとかいくつかの分類がありますが、実はその中にテーマ型という分類は無いです。きっちりした定義は無くて、俗にテーマ型と呼んでいるだけで、境目はすごく曖昧なんです。


そうなんですね!


少し古い話しをして恐縮ですが、1980年代に業種セレクトというような名称で、小売りとか海運とか投資先の業種を絞った投資信託を各大手運用会社が組成していました。


それがテーマ型の始まりなんですか。


はい。段々と産業が複雑化して、一般的な業種に当てはまらない会社が増えてきて、単純に業種で絞るファンドは無くなっていきました。次に情報通信などのセクターで分けるファンドができてきて、今はテーマという形になって引き継がれています。


歴史は長いんですね。

明確な定義が無いものを批判しても意味は無い

テーマには自動運転とか5Gとか色々とありますが、2000年頃にはエコをテーマとして、環境保全に関連した会社に投資するファンドが増えた時期がありました。


エコですか。今もエコは大事ですから、そのテーマ型ファンドはまだ残っていそうですね。


同じような流れでESG投資の観点から銘柄を選定するファンドが多数設定されていますが、これはあまりテーマ型と呼ばれませんね。


ESGって何でしたっけ?


ESGとは企業の長期的な成長のために重要とされている、「環境(Environment)」「社会(Social)」「ガバナンス(Governance)」の頭文字を取った言葉です。


長期的な成長のために重要なことを満たしている企業に投資するテーマ型ファンドですか。それなら長期投資だけじゃなく、長期保有しても良さそうですね。


SDGsのファンドもあまりテーマ型とは言われませんが、実際にはテーマ型の一つと言えます。テーマ型ファンドは長期投資に向かないという方に、SDGsは持続成長性のある企業に投資しているので、長期投資に向いているんじゃないですか?と聞いたら否定できないと思います。


SDGsは持続成長性のある企業に投資するのですか。ESGもSDGsも長期投資に向いていそうですね。


日本の投資家はまだSDGsをあまり意識していないと言われていますが、海外の機関投資家などはSDGsを銘柄選定で重視するようになっています。じゃあ海外の機関投資家は高値掴みをしているかというと、そうじゃないですよね。


たしかにそうですね。さっき言っていたネガティブな意見はエコやESG、SDGsをテーマとしたファンドには当てはまらなさそうですね。


そうですね。そもそもテーマ型は明確な規定が無くて境目が曖昧なので、テーマ型は何々に向かないとか、高値掴みになるとか、議論すること自体がナンセンスだと思います。本来テーマ型はあくまでアクティブファンドの一種ですからね。


形が決まっていないものを議論しても意味がないのですね。

テーマには販売しやすい最近の話題が選ばれる

ちなみに新しいテーマ型ファンドを作る時って、どうやってテーマを決めるんですかね?


そうですねぇ、運用会社で決めるよりは、販売会社側のマーケティング上の影響が大きいと思います。


販売しやすいようなテーマということですかね。


そうですね。どのファンドでも将来は約束できませんが、やはり買ってもらう顧客に期待をしてもらわないといけません。こういう投資対象であれば、こういう見通しがありますと、夢を語れないといけません。そういう時に世間で話題になっていることの方がイメージも湧きやすいです。


そうなると、ニュースとかで取り上げられているようなことがテーマになりやすいのですね。


運用実績を確認できない新規のファンドはイメージしやすい内容だと販売しやすいですからね。そういう事情でテーマ型のファンドは多いのですが、テーマ型ファンドはそういう販売体制が問題と指摘している方もいますね。


テーマ型ファンド自体には問題が無くても、売ることだけを考えて作ったテーマ型ファンドは問題ありなんですね。

投資対象を尖らせすぎたテーマ型には注意

売ることだけを考えると言えば、あるテーマが流行ると、それに沿ったファンドが増えていきます。そして、より特徴が出た方が売りやすいので、どんどん尖った設定にしてしまうことがあります。


同じようなテーマが多いと目立てないので、他と差別化を図るために尖った設定にしてしまうのですか。


そうですね。ただ売りやすくするためにポートフォリオも考えずに尖った設定にするのも、間違った営業姿勢だと思います。


それは問題がありますね。


でも尖っていくのも悪い面ばかりではなくて、昔はITが一つのテーマとなっていましたが、現在ではITを活用していない企業を探すのが難しくなっていますよね?


たしかにどこの会社もシステムが収益に直結しますよね。


そのため、現在では5Gとかフィンテックといったところまで絞ってきています。テーマが細かくなっている分、自分の得意分野で興味のあるテーマに投資しやすくなっていえるとも言えると思います。


たしかにITという漠然とした言葉よりもイメージしやすそうですね。

同じテーマでも運用力でリターンは大きく変わってくる

フィンテックという言葉で思い出しましたが、ワールドフィンテックとグローバルフィンテックというファンドがあるのですが、ちょっとチャートで比較してみましょう。



2020年3月を境にして、大きくリターンが変わってきていますよね。


たしかにだいぶ変わってますね。


目論見書などを見ても、どちらのファンドもフィンテック関連の企業に投資しますという説明になっているわけですが、運用力でここまで差が開いてしまうわけです。


テーマが同じでもリターンはここまで違ってくるんですね。


そうなんです。テーマが同じであればどのファンドでも良いわけでは無く、きっちり中身を見ないといけないんです。新しいテーマのファンドが出ると期待感から残高が増えることがありますが、設定直後は買いたい気持ちを堪えて、しばらくウォッチしてから買う必要があると思います。


話題になっていることを扱っていても、飛びついてはいけないんですね。


そうですね、飛びつくのは良くないです。ただ、興味のあるテーマ型ファンドを追いかけるのは楽しいですから、興味がある銘柄が見つかったらウォッチは続けてみてほしいです。


分かりました。


まずは色んなテーマを見ておいて、その中で自分が興味あるテーマの関連ファンドを見つけて、ウォッチしていくことから始めていくのが良いと思います。

まとめ

今日教えて頂いたことをまとめますと・・・

- テーマ型ファンドを長期投資のスパイスとして資産の一部に取り込むことはおすすめ
- テーマ型ファンドに明確な定義は無いため、そもそも一括りにして議論することがナンセンス
- テーマが同じなら何でも良いわけではないので、ファンドの中身をしっかり確認する
- まずは自分の興味のあるテーマに関連するファンドをウォッチしてみる

先ほどスパイスという言葉を使いましたが、やはり楽しくないと資産運用も続かないので、興味を引くテーマがあれば、活用してみるのは良いと思います。


分かりました!どんなテーマが良いかな。楽してお金持ちになる!をテーマにしたファンドとか無いですかね?


そのテーマはどんな企業に投資するんですか・・・。本当にあったら怪しい企業ばかりに投資していそうですね。


たしかに!楽してでは無くて、楽しみつつお金持ちになる気持ちでコツコツ頑張らないとですね。


そういうことですね。

今回登場したファンド
ファンド名 | レーティング(1年) |
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日興
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大和
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