投資信託の分配金は再投資するか? 受け取るか? それぞれのメリットやデメリットを解説

みんかぶ編集室
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投資信託の分配金は再投資するか? 受け取るか? それぞれのメリットやデメリットを解説

投資信託の分配金は、受け取った方がいいのか、受け取らない方がいいのか、迷っている人も多いのではないでしょうか? 

分配金は受け取ることができるならもらった方がお得なように感じられますが、必ずしもそうとは言い切れないケースもあります。

この記事では、分配金の仕組みを理解し、より投資信託をお得に活用できるようになるための、投資信託における3種類の分配金の特徴について解説します。

目次

投資信託の分配金とは

投資信託の分配金とは

投資信託の分配金とは、決算日における投資信託の収益から、経費を控除して投資家に分配するお金のことです。支払われる分配金の金額は、投資信託の損益、投資信託の約款、投資信託協会の規則に基づいて、決算日に総合的に判断されます。株式の配当金と似ていますが、株式の配当金は、投資した企業が産み出した利益の一部を還元するものである一方、投資信託の分配金は、純資産(※1)の中から、運用会社が投資家に分配するといった違いがあります。

(※1)純資産とは、投資信託の大きさを表します。10人の投資家が5万円(基準価額1万円の投資信託を5口保有)ずつ投資すれば、純資産総額は50万円となります。運用によって純資産総額が55万円に増加すれば、1口当たりの投資信託の基準価額は、1万1,000円に上昇します。

投資信託における分配金には、「普通分配金」と「特別分配金」の2種類があります。

投資信託の種類】

  • 普通分配金

投資信託の運用によって得られた利益から支払われる、分配金のことです。普通分配金には、所得税と住民税がかかります。

  • 特別分配金

元本を取り崩して支払われる分配金で、特別分配金が支払われると、個別元本はその分減少します。なお、特別分配金は非課税です。

普通分配金と特別分配金

投資信託における分配金の計算方法

投資信託の分配金の計算式は、以下の通りです。実際の計算例も見てみましょう。

分配金額 = 1万口当たりの分配金額 ×(保有口数÷10,000)×(1-0.20315[20.315%])

【計算例】
分配金:1万口当たり月額100円
投資信託の保有口数:10万口 100 ×(10万÷1万)×(1-0.20315[20.315%])= 月額797円(小数点以下切り捨て)

投資信託における分配金の取扱方法3つ

投資信託における分配金の取扱方法3つ

投資信託に分配金の取扱方法は3種類に分かれています。

【取り扱い方法の種類】

  • 受取型
  • 再投資型
  • 無分配型

以下、それぞれのメリット・デメリットについて、見ていきましょう。

受取型

「受取型」は、分配金を受け取れる仕組みの投資信託のことで、決算期ごとに投資家への分配金が指定した口座に支払われます。決算時期は、毎月、半年ごと、1年ごとなど、投資信託によってさまざまです。

受取型のメリット

運用期間中は、運用会社から分配金が定期的に支払われるため、年金や給料の上乗せ分として、安定した収入を得ることができます。

受取型のデメリット

分配金は、投資信託の総資産から支払われるため、総資産から分配金が支払われると、基準価額が減少してしまいます。また受取型を選んでも、分配金を受け取って再投資に回すことはできますが、都度、投資信託の手数料や手間が発生するため、注意が必要です。

受取型が向いている人

毎月発生する生活費の足しにしたい人は、受取型の投資信託が向いています。例えば、老後の生活費に上乗せをするようなケースです。以下、活用事例を紹介します。

令和2年12月に厚生労働省年金局が発表した「令和元年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、現在年金を受け取っている人の平均年金月額は、厚生年金で146,162円、国民年金で56,049円です。

仮に、夫が会社員、妻が専業主婦だった場合の世帯の年金月額は、146,162円+56,049円=202,211円で、約20万円と計算できます。一方、生命保険文化センターの調査によると、夫が65歳、妻が60歳以上の無職世帯の一般的な1カ月の支出は約24万円です。

現状では、支給される年金額が20万円、支出が24万円なので、毎月4万円貯蓄を取り崩すという計算になります。しかし、このケースでは、仮に投資信託の分配金を毎月4万円以上受け取ることができれば、貯蓄を取り崩す必要がなくなります。また、毎月の住宅ローン返済額が10万円で負担に感じているような人の場合、仮に投資信託の分配金が2万円、3万円でもあれば、毎月の住宅ローンの返済負担を軽減することができるでしょう。このように受取型は、毎月発生する支出を軽減したい人に向いています。

再投資型

「再投資型」は、分配金があっても受け取らずに再投資に回すタイプの投資信託のことです。基準価額が1万円の投資信託があり、毎月1口当たり200円の分配金が再投資されると、50口あれば毎月の投資額以外に分配金だけで1口購入できている、ということになります。

再投資型のメリット

再投資型の投資信託は、分配金が自動的に再投資されるため、受取型のように一旦分配金を受け取って再投資する場合とは異なり、投資信託購入の手数料が発生したり、その都度手続きをしたりする必要がありません。また再投資型の最大のメリットは、「複利効果を得られる」という点です。「複利」とは、元本に金利や利益を上乗せした金額が再投資されることです。

以下、100万円を5%の単利で運用するケースと、複利で運用するケースを比較してみましょう。

【単利で元本100万円、年間利回り5%で5年間運用した場合】
年度 投資元本 計算式 年間の利益額
1年目 100万円 100万円×5% 5万円
2年目
3年目
4年目
5年目
5年間の利益額合計 25万円

単利の場合、毎年元本は100万円で、それに対して年間の利益額が毎年5%だとすると、毎年の年間の利益額が5万円となります。したがって、5年間運用すると、トータルリターンは25万円となります。

【複利で元本100万円、年間利回り5%で5年間運用した場合】
年度 投資元本 計算式 年間の利益額
1年目 100万円 100万円×5% 5万円
2年目 105万円 105万円×5% 5万2,500円
3年目 110万2,500円 110万2,500円×5% 5万5,125円
4年目 115万7,625円 115万7,625円×5% 約5万7,881円
5年目 約121万5,506円 121万5,506円×5% 約6万0775円
5年間の利益額合計 約27万6,281円

複利の場合を見てみましょう。まず1年目は、単利と結果が同じです。しかし2年目は、1年目の元本100万円に加え、1年目の利益5万円を上乗せした105万円が元本となる点が異なります。105万円の5%は、5万2,500円です。すでに2年運用しただけで、単利と2,500円の差が出てきます。

同様の運用をしていくと5年後は、単利で運用した場合の利益額の合計は25万円であるのに対し、複利は約27.6万円です。ちなみに10年間だと、単利の場合のトータルリターンは50万円、複利運用のトータルリターンは62.9万円となります。

再投資型は、長期運用をすればするほど、さらに効果が高くなります。

分配金を再投資する場合

再投資型のデメリット

再投資型の投資信託は、換金手続き(解約手続き)を行わない限り、現金を受け取れないといったデメリットがあります。

再投資型が向いている人

再投資型の投資信託は、長期投資をすればするほど、複利効果が大きくなります。そのため、「当面の生活費には困っていないが、時間をかけて効率的に資産形成を行いたい」といった人に向いています。

例えば、「今は毎月分配金を受け取らなくても生活できるが、老後資金はお金がかかりそうだからしっかり確保したい」といった人の場合、老後までの長い運用期間を使えば複利効果が働き、銀行口座に預けておくよりも効率的な運用ができます。また、「子供が生まれたばかりで、将来的に発生する子供の教育費を準備したい」といった人の場合も、再投資型が向いています。

令和元年度12月に文部科学省発表された「平成30年度子供の学習費調査の結果について」によると、保護者が支出した1年間の子供一人当たりの経費(学校教育費、学校給食費、学校外活動費)は、以下の通りとなっています。また大学の費用については、国公私立大学の授業料等の推移を基に計算しています。 

ご覧のように、子供にかかる教育費は、かなり大きな金額となるため、再投資型の投資信託を活用し、効率的に準備することをおすすめします。

  公立 私立
幼稚園 22万3,647円 52万7,916円
小学校 32万1,281円 159万8,691円
中学校 48万8,397円 140万6,433円
高等学校 45万7,380円 96万9,911円
大学 53万8,294円 87万7,735円

無分配型

「無分配型」とは、運用している期間中、投資家に一切分配金を支払わず、償還(※2)や途中換金をするときに分配金を支払うタイプの投資信託のことです。口数が増えることはありませんが、収益は基準価額に蓄積されています。なお、受取型や再投資型の投資信託の数は多いものの、無分配型の数はあまり多くありません。

(※2)投資信託の運用期間が終わり、信託財産の清算をすること

無分配型のメリット

無分配型は、分配金がないため都度課税されることがなく、税金が発生するのは、償還か最終的に売却するときの一度だけです。また、分配金がもらえるわけでもなく、再投資しないため口数も増えないので、「損した」と考えられがちですが、基準価額に反映されているため、償還や途中換金で大きなメリットになることがあります。

無分配型のデメリット

無分配型の投資信託は、運用期間が決まっている単位型投資信託に多いため、購入するタイミング(時期)が決まっていたり、買い増しができなかったり、売買の自由度の低い点がデメリットであるといえます。

無分配型が向いている人

無分配型は、運用期間が決まっているため、別の投資予定に向けて計画的に投資を行いたい人、または、普段忙しくしていて投資信託を買い増すなど、手間をかけず運用期間満了までそのままにしておきたい人に向いています。

投資信託の分配金に関する注意点

投資信託の分配金に関する注意点

なお、投資信託の分配金には、以下のような注意すべき点があります。

【分配金に関する注意点】

  • 再投資のたびに税金がかかる
  • NISA口座による再投資は非課税投資枠を使用する

再投資のたびに税金がかかる

分配金の受取型だけではなく再投資型も、再投資のたびに税金がかかります。再投資で費用がかからないのは、購入時の手数料(販売費手数料)のみで、税金がかかるといった点に注意が必要です。なお税率は、所得税・住民税合わせて20.315%となっています。

NISA口座における再投資は非課税投資枠を使用する

「NISA(ニーサ)」なら年間120万円、「つみたてNISA」なら年間40万円までの運用益に対しての税金がかかりませんが、分配金を再投資すると、非課税枠を使ってしまうことになるため注意が必要です。

例えば、つみたてNISAでの年間投資額は、現在35万円となっていて、残りの非課税枠は5万円あるはずです。しかし、投資信託の分配金が1万円再投資されると、その年のつみたてNISAの非課税枠は、あと4万円となってしまいます。

まとめ

投資信託の分配金は、普通分配金と特別分配金の2つに大きく分けられます。分配金は、投資信託の総資産から支払われるので、基準価格が下がってしまうことがあります。また投資信託の分配金には、受取型、再投資型、無分配型の3種類があり、投資家自身のライフプランによって使い分けることが必要です。

投資信託をより賢く活用するためには、それぞれの分配金の特徴を理解したうえで、効率的な資産形成にお役立てください。

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