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日本の出生数80万割れにフランス哲学者「日本民族の幻想は消える」…フランスの高い出生率は”移民のおかげ”

 2月28日、2022年の国内の出生数(速報値)が前年比5.1%減の79万9728人で、想定より11年も早く少子化が進んでいることが報じられ、日本中に激震が走った。もはや「日本民族」は消滅するしかない運命なのか。

 先進国の中でも少子化対策に「成功している」とされる数少ない例外国の1つ、フランスの事情に詳しい哲学者の福田肇氏は「実はフランスで少子化対策が上手くいっているように見えるのには、日本人が見落としている理由がある」と意外な実相をレポートする――。

母性は女性の本能ではなく、後天的に植えつけられたものだ

 「1780年。パリ警察庁長官ルノワールは、しぶしぶ、次のような事実を認めている。毎年パリに生まれる2万1000人の子どものうち、母親の手で育てられるものはたかだか1000人にすぎない。他の1000人は、――特権階級であるが――住み込みの乳母に育てられる。その他の子どもはすべて、母親の乳房を離れ、多かれ少なかれ遠くはなれた、雇われ乳母のもとに里子に出されるのである」。

 これは、フランスの女性哲学者・歴史学者のエリザベート・バダンテールの主著『母性という神話』(鈴木晶訳・筑摩書房)の書き出しである。バダンテールは、べつに、当時のパリがいかに荒廃していたか、を憂えているわけではない。むしろ、この状況が当時のいたってあたりまえの風潮であったことが、彼女の探究の出発点なのである。

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