ただみんなの幸福のために…「潤沢な活動資金があったわけではない」10代羽生結弦が刊行したチャリティブック『蒼い炎』
そして、羽生結弦は歴史上の人物となることを運命づけられた
羽生結弦の最新自叙伝『蒼い炎Ⅳ -無限編-』が刊行される。
2014年ソチ、2018年平昌と2大会連続の金メダルを成し遂げ、男子シングル唯一のスーパースラム(五輪、世界選手権、グランプリファイナル、四大陸、世界ジュニア、ジュニアグランプリファイナル)の達成者となった羽生結弦。そのスーパースラム達成の2020四大陸選手権優勝で前作『蒼い炎Ⅲ -究竟編-』は結ばれているが、今回の「無限編」は北京五輪、4回転アクセル、そしてプロアスリートへの道を歩みだしたその歴程が綴(つづ)られている。
この『蒼い炎』シリーズも2012年4月に刊行されてちょうど11年の時を迎えた。ファンとしては羽生結弦という存在の赤裸々で真摯な「言葉」が明かされるのと同時に「伝記」としての意味合いもあろう。資料的価値も高い。
羽生結弦は歴史上の人物となることを運命づけられた人物である。それは先の偉業はもちろん、彼がこの時代を象徴する存在としての「歴史の子」であるからにほかならないこともまた以前、私は述べた。
10代で刊行した2012年の「チャリティブック」
本書に触れるのはまた先に置くとして、私がここで繰り返し――、いや、何度も書いてきたが、羽生結弦という存在が稀代(きだい)のアスリートであり、芸術家、創造者であると同時に「社会性」を有していることの端緒は、まさしくこの『蒼い炎』、10代で刊行したこの、2012年の「チャリティブック」にある。
ちなみに最初に断っておくが、これはファンなら当然知っていることばかりかもしれない。しかし、それでも知らない多くの人々、そして「善きことや大事なことは何べん繰り返しても差し支えない」という私の主義に基づき、いま一度書き記したい。