「海外大は馬鹿ばっか。慶應は現役で蹴った」が一浪で慶應に入った東大コンプ佐藤君”就活全滅”の末路…連載タワマン文学「TOKYO探訪」恵比寿

卒業生だけでなく教職員ももれなく三田会(OB会)員になる慶應は、三田会員同士が気持ち悪いほど結束力が高いことで知られる。そんな三田会員だが、唯一毛嫌いされる会員がいる。それが「東大コンプ」の慶應生(三田会員)だ。例えば、政治家・小沢一郎も東大コンプとされ、三田会員に嫌われる三田会員だという。連載タワマン文学「TOKYO探訪」第16話は、窓際三等兵氏が東大へのコンプレックスに悩み続けた慶應生の、その後の人生を綴(つづ)った。そしてなぜ、今回の舞台は恵比寿なのか――。
現役で慶應蹴って、浪人しても結局慶應入った東大コンプ男
「ウチの近くにMIT(マサチューセッツ工科大学)のキャンパス出来るらしいんだけど、税金の無駄でしょ」。クチャクチャと咀嚼(そしゃく)音を立てて、佐藤君が焼けた肉を口に運ぶ。「うちのファームにも海外大の奴いるけど、馬鹿ばっか」。他人を見下すことでしか自己を肯定できない、恵比寿在住の哀れな39歳独身男性。佐藤君は相変わらずだ。
佐藤君とは大学時代、テニサー(テニスサークル)の新歓コンパで出会った。聞いてもいないのに「東大文Ⅰに1点足りなかった」だの、「慶應は現役の時に蹴って、親に頼まれてセンター利用で入ってやった」だのと延々と自分語りをしていて、同じテーブルに座った東洋英和の女の子たちがドン引きしていた。
僕はテニサーに入り、テニスもそこそこに渋谷の一休で吐くまで飲み、友人の家で朝までウイイレ(ウイニングイレブン)をしたり、集団で制服ディズニーに行ったり。進級してからも青春の館で2男1女制服飲みなんかを企画して、テンプレ通りの安っぽい青春を満喫した。新歓で会っただけの学歴厨(ちゅう)の存在なんて完全に忘れていた。
2chの就職偏差値ランキングを気にしてしまう東大コンプ男
三田キャンパスに上がり、ゼミで再会した佐藤君は相変わらずキモかった。アジェンダだのロジックツリーだのカタカナ用語ばかり使い、mixiのプロフィール画像はMENSAの会員証だった。佐藤君が所属するビジコンサークルやバイト先の塾での日々を綴った日記には誰もコメントせず、紹介文も書かなかった。