猿之助容疑者はなぜ「自殺ほう助」なのか…弁護士「偽装自殺が益々横行し、なし崩し的に安楽死が認められる社会になる危機感背景」
警視庁は、歌舞伎俳優の市川猿之助容疑者が母親の自殺を手助けをしたとして、逮捕した。(その後自殺ほう助の罪で起訴され保釈)
新型コロナウイルスの世界的な流行が始まってから約3年。歌舞伎座は2020年3~7月、公演を中止した。2020年8月に観客数を制限して公演を再開したものの、関係者の感染により幾度となく公演が中止になった。2022年には、「第7波」で7月に10日間の舞台が中止になってしまった。歌舞伎興行をほぼ一手に担う松竹は、2022年3~8月期の決算で、約2億円を「公演中止損失」として計上したのである。
このようにコロナに翻弄され続けた歌舞伎界も、2023年に入って客席や舞台上の様々な制限を徐々に緩和、劇場内も以前の姿を取り戻しつつあった。そんな中での逮捕劇に多くの歌舞伎ファンは辛い思いをしているだろう。
それにしてもなぜ「自殺ほう助」なのか……。元プレジデント編集長で作家の小倉健一氏が野澤隆弁護士に取材した。野澤弁護士は「偽装自殺が横行し、なし崩し的に安楽死が認められる社会になる危機感が背景にある」と解説するーー。
泡を吹いて意識が朦朧とする猿之助
大手新聞は「アテンション・エコノミー」(消費者の注意を引きつけることで潤うビジネスモデル。悪い文脈で使うことが比較的多い)などと批判して自分たちの報道姿勢が一段高いところにあるように構えるが、猿之助容疑者を巡る報道については、週刊誌が先行している。週刊文春には、猿之助容疑者の死亡した両親の死ぬ直前について詳細が報じられている。
事件が起きたのは、5月18日午前だ。猿之助容疑者のマネージャーを兼務する人物が、猿之助容疑者が両親と暮らす自宅へと入ると、猿之助容疑者、猿之助容疑者の父と母の3人が横たわっていた。マネージャーからの通報を受けて救急隊が駆けつけると、母親は死亡、父親は意識不明の重体(その後、病院で死亡)、泡を吹いて意識が朦朧とする猿之助容疑者の姿があった。両親が死に至るまでの過程は以下のとおりだ。