西武線住民にデリカシーはないのか…孤独のグルメとケーキの街で、”他人を気にしない”義母とストレス過多生活を送る女の末路 連載タワマン文学 TOKYO探訪「小竹向原」
なぜ義母はどいつもこいつもデリカシーがないのか。なぜ他人が嫌がることを理解できないのか。それはもしかして西武線のせいなのか。連載タワマン文学「TOKYO探訪」第20話・小竹向原は、義母の過干渉に耐え続ける女の話だーー。
実質埼玉の清瀬は嫌…練馬区と板橋区の狭間、小竹向原で妥協
「悠真ちゃんの七五三のお洋服、買っておいたわよ」。義母から手渡された紙袋を作り笑いで受け取る。「一人でぜんぶ準備するのは大変でしょう、もっと頼ってね」。あなたの対応が一番大変です――。言葉をぐっと飲み込む。義両親の助けを借りながらの小竹向原での生活は、今日もストレスに満ちている。
「働きながら子育ては大変でしょ、ウチの近くに住みなさいよ」。妊娠を報告したときの第一声の時点で嫌な予感はしていた。夫の実家は東京都清瀬市。23区外で最寄りのターミナル駅が池袋という点から実質埼玉県だ。それだけは絶対嫌だと選んだ、妥協点としての練馬区と板橋区の狭間、小竹向原。
DINKS時代には盆と正月しか顔を合わせなかった義母との距離が近づいたのは、里帰り出産から東京に戻ってからのことだった。実家の庇護を離れ、はじめての東京の子育てで心細かった中、「何かあったらすぐ呼んでね」という言葉を額面通りに受け取ってしまったのがいけなかったんだろうか。
専業主婦が当たり前だった時代のまま、感覚をアップデートできていない義母
子供が熱を出したとき、残業が急に発生したとき。日中の看病や保育園の迎えをLINEで頼める環境がどれだけ恵まれているのか、頭では理解している。それでも、仕事で疲れて帰宅した玄関に知らない靴が並んでいると、なんとも言えない気持ちになる。くつろげるはずの自宅が、他者に侵食されている感覚。