茂木健一郎「中学受験を擁護する人は思考が狭い」無意味な学力競争文化が子供を不幸にしている
今や首都圏では5人に一人が中学受験をしている昨今。そのブームに脳科学者の茂木健一郎氏が警鐘を鳴らす。プレミアム特集「人生が激変!最強の学び直し」第4回では、中学受験の問題点を茂木氏が語る。「日本の中学入試は、人間に対する背信行為だ」。
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日本の中学入試という文化は、百害あって一利なし
私自身は、中学受験をしたことがない。高校から国立の進学校に行った。ただ、家庭教師や塾講師で、中学受験の指導を何人かしたことがある。だから、有名中学の入試で、どのような問題が出題されているかは知っている。
結論から言えば、日本の中学入試という文化は、百害あって一利なし、もし合意形成ができるならば、明日にでも廃止した方が子どものため、みんなのため、日本のためだと思う。権威主義的な国だったら、実際、来年から廃止、ということになるかもしれない。しかし、日本は民主主義国なので、何をするにも合意形成に時間がかかる。
このように書くと、いや、入試のために努力することを学ぶことは大切だとか、入試の準備で身につけた学力は役に立つとか、そもそも公立中学が信用できないとか、良い中学に行ってすぐれた友だちに会うのは意味があるとか、いろいろな理屈を書いて来る人がいるのは熟知している。
中学受験を擁護する人たちの思考の狭さ
なにしろ、私は、中学受験について自分の考えを書いてもう20年くらいになるから、どのようなパターンの反論とか異論がくるかということはサンプリングが終わっているのである。人工知能で言えば、すでに十分なデータセットがそろっているのだ。