アプリ、ハードディスク、ファイルも…IT用語を全部仏語に変換するフランス人の徹底した”反英国”魂
イギリス人「フランス人はカエルを食う野蛮人だ」
哲学研究のためフランスに滞在しはじめてまだまもないころの話だ。私の世話をいろいろと焼いてくれたフランス人家族が、モンフォール・スュール・ミューという田舎町のレストランに私を連れて行ってくれた。
私の席の隣に座ったニコラ君が「キュイス・ド・グルヌイユ」なる料理を注文した。当時、フランス語のメニューを見ても、私にはちんぷんかんぷんだったので、「私も同じもので…」と言いかけたら、彼が、おまえはやめとけ、と言う。
そう、「キュイス・ド・グルヌイユ」とは、カエルの足のソテーだったのである。
イギリス人は、フランス人のことを「カエル食い」(mangeurs de grenouille)と言って揶揄(やゆ)する。イギリス人からみれば、カエルというゲテモノを食うフランス人は解し難いのだろうが、その反面、そんなゲテモノでも凝ったソースで上品なメイン・ディッシュに仕上げてしまうフランスの食文化に対する屈折した羨望もあるような気がする。
また、イギリス人は、フランス人のエロ文化もお嫌いなようだ。フランスでは、いたるところにセックス・ショップがオープンしていて、しかもスーパーマーケットのような気軽さで入店できるところも多い。エロティシズムを芸術や哲学の域にまで高めてきた歴史をもつフランスならではだが、イギリス人はこういうフランスの風潮に眉を顰(ひそ)める。イギリスからフランスにやってくる客船の壁に、フランスのセックスショップ街の写真を背景に「『イギリス人である』我々はこういうところに立ち寄らないようにしよう!」というスローガンが記されたポスターが貼ってあった、とイギリスから帰国した私の友人がおもしろがって報告してくれたことがあった。