羽生結弦の「サプライズプレゼント」にファン歓喜…「氷上の吟遊詩人」が贈る涙の言葉
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子どもたちに『パリの散歩道』で語りかけた
いまもフランスには「吟遊詩人」(Barde)がいる。
厳密には吟遊詩人には旅をせず一定の場所に留まる「トルバドゥール」(Troubadour)がいて、むしろ旅で吟ずる詩人は旅芸人とひとまとめに「ジョングルール」(Jongleur)とされるのだが、ここでは日本で一般的に使われる「吟遊詩人」とする。遠く中世の話かおとぎ話、ファンタジーと思うかもしれないが、いまもフランスでは吟遊詩人(それらはあくまで喩⦅たと⦆えであり、現代においてはシャンソニエやポエトリーだが)の人気が健在で、さすが詩人の国、タレントばりに各地で公演をしている。彼らの中には突然、パリのカフェにあらわれ詩を披露する者もいる。それもまた詩的表現の一端なのだろう。もちろん前もって店主と話はついているが、客もまた驚きをもってそれを歓迎する。そして吟遊詩人はミステリアスなまま去ってゆく。一片の詩を残して。
仙台のリンクに突如あらわれ、美しきスケーティングを披露した羽生結弦はさしずめ、その「吟遊詩人」かもしれない。まさしく一片の詩『パリの散歩道』を氷上に残して。