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東大医学部卒の医師「健康診断の不都合な真実」…正常値は本当に正常なのか、なぜ医師は受けないのか

 「病院で高齢者が列をなしている」。こんな光景がいつの間にか日常になってしまった日本。「お医者さんの言うことだから」と医師に全幅の信頼を置く高齢者も少なくない。しかし、現役医師の和田秀樹氏は「一人の医者の言うことを信じ過ぎるな」と警鐘を鳴らす。現代医療に潜む“健康を害する罠” とは――。全3回中の3回目。

※本稿は和田秀樹著『75歳からやめて幸せになること 一気に老ける人、日ごとに若々しくなる人の差』(大和書房)より抜粋、編集したものです。  

第1回:東大医学部卒の医師が世の健康情報に苦言「長生きしたけりゃ肉を食え!」しょっぱいものも食べていいし、散歩もしなくていい
第2回:「子どもに遺産は残さなくていい」多くの高齢患者を看た東大卒医師がたどり着いた真理…投資入門書2〜3冊読んで知識をつけよ

医師を信じすぎるのは危険 

 日本の医療は、基本的に臓器別診療で行われています。臓器別診療では病気をそれぞれの臓器の状態から診断します。この診療方法そのものが悪いわけではないですが、高齢者の診療には適さないことが多いといえます。 

 例えば、循環器内科の医師は患者に「コレステロール値を下げなさい」と言います。しかし、コレステロール値を下げると免疫機能が低下し、がんや感染症のリスクは高まります。つまり、特定の臓器だけを治療するという発想では、他の面で支障が出るという問題を防げないのです。 

 臓器別診療が始まった1970年当時の日本の高齢化率は、わずか7%程度。高齢者が少なかった時代には臓器別診療には意味があったのかもしれませんが、そこから50年が経過し、高齢化が問題になっているのに、いまだに医療は臓器別診療のまま。とても超高齢社会に対応できるとは思えません。 

 例えば、あなたの家の近所に内科のクリニックが開業したとしましょう。そのクリニックでは訪問診療も行うことを謳っています。いかにも面倒見がよさそうで、あなたもかかりつけ医にしたいと思うかもしれません。 

 しかし、こういうときに注意してほしいのは「医師の経歴」です。経歴を見ると、開業する直前まで大病院の呼吸器内科や消化器内科の医長だったことがわかったりします。つまり、特定の臓器しか診てこなかった人が、いきなり内科医として訪問診療を行うと言っているのです。 

 私には面倒見がいいどころか、信用できない医者としか思えません。本来なら、開業にあたって総合内科医として一定期間のトレーニングをすべきです。こうした状況を見るにつけ、医師を信じすぎるのは恐ろしいと思います。 

いい“かかりつけ医”の見分け方 

 75歳になったら特定の臓器の専門家ではなく、総合診療をしてくれる医師に頼ることが肝心です。そのためには、大学病院の専門家よりも、自分の体のことをわかってくれる町のかかりつけ医を探すという発想に切り替えるべきです。 

 嫌な医者とかかわるのをやめ、いいかかりつけ医を見つけて、付き合っていく。これができるかどうかが、80代以降の人生を大きく左右します。 

 かかりつけ医を見つけるときのポイントはいくつかあります。一つ目は、薬について納得のいく説明をしてくれることです。 

 例えば、処方された薬を飲んでだるさを感じ、医者に相談したとしましょう。このとき、いい医者であれば「それは薬が合わなかったということかもしれませんね。ほかの薬に変えてみましょう」「薬を減らして様子を見ましょう」などと提案してくれるはずです。 

 一方で、患者の話にまともに向き合わない医者もいます。「でも、あなたの血圧は、薬のおかげで正常値になりましたよ。効果が出ていますから、このまま飲み続けてください」。これは、患者を見ずに数値だけを見ている典型的な反応です。 

 医者の言うことに疑問を感じたとき、セカンドオピニオン、サードオピニオンで別の医者に診てもらう方法はあります。ただし、医者は基本的に同じ教育を受けていますから、同じようなことを言われる可能性が大です。 

 複数の専門家から同じことを言われれば、それが正しいと思ってしまうのが普通の感覚でしょう。 

 本当に信じるべきは、たくさんの患者を診ている医者です。たくさんの患者を診ている医者は、紋切り型の診断ではなく、個人に見合った診療をしてくれることが多いものです。患者に向き合ってくれる医者を探してください。 

和田秀樹著『75歳からやめて幸せになること 一気に老ける人、日ごとに若々しくなる人の差』(大和書房)

高齢者に健康診断は必要ない 

 日本では多くの医師が健康診断を推奨しています。実際に、たくさんの人が年に一度の健康診断を受診しています。現役時代は職場の健診を受けるのが一般的であり、リタイア後は自治体が補助している健診を受ける人が多いかもしれません。 

 確かに、健康診断は、がんをはじめとする生活習慣病の早期発見につながります。健診によって命が救われる人がいるのは認めます。 

 しかし、75歳を超えた人は少し考え方を変える必要があります。そもそも、健康診断で示される「正常値」は、40代〜60代くらいの人のデータをもとに作成された基準値にすぎません。これを高齢者にとっての正常値とするのは無理があります。もっというと、正常値は一人ひとり違うのです。 

 そんな「正常値」をもとに異常であると診断し、治療を行うとどうなるでしょうか。数値を正常にするために薬を服用した結果、かえって元気がなくなり寿命を短くしてしまう恐れもあります。 

 医師は健康診断を推奨している割に、自分では健診を受けず、薬を服用しない傾向があります。健診や薬が、本当の意味で健康的ではないことを自覚しているからではないでしょうか。 

 高齢になれば、ほとんどの人に動脈硬化が起こるとお話ししました。血圧や血糖値はむしろ高めでないと、酸素やブドウ糖が脳に届きにくくなります。 

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この記事の著者
和田秀樹

精神科医。1960年大阪府生まれ。東京大学医学部卒。東京大学医学附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学学校国際フェローを経て、現在は精神科医、ルネクリニック東京院院長、一橋大学経済学部・東京医科歯科大学非常勤講師、川崎幸病院精神科顧問、国際医療福祉大学教授、和田秀樹こころとからだのクリニック院長。緑鐵受験指導ゼミナール代表。『80 歳の壁』(幻冬舎)、『70 歳が老化の分かれ道』(詩想社)、『六十代と七十代 心と体の整え方』(バジリコ)など著書多数。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。

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