住宅ローン破綻地獄…離婚した年収1500万パワーカップルの悲惨な末路
増える共働き世帯の憧れ「パワーカップル」
皆さんの周りに「パワーカップル」はどれくらい存在しているだろうか。20年以上も日本の平均給与が上がらない中、キラキラと光る「勝ち組バッジ」をつけた共働き世帯には羨望の眼差しが向けられる。激動の令和時代は価値観が変わりつつあるとはいえ、そのハイスペックへの憧れは変わらないものだ。しかし、栄枯盛衰という言葉があるように人生は何が起きるかわからない。成功の「証」としてパワーカップルが建てた豪邸をめぐる悲劇は、まさにそれを象徴するような出来事となった。
政府が6月14日に発表した「男女共同参画白書」によると、2021年の婚姻件数は戦後最少を記録した。1970年には100万件を超えていたが、2021年は約50万件と半減。離婚件数は約20万件に上る。50代と60代の女性の約2割は離婚経験がある時代だ。
家族の姿や人生は多様化し、未婚の割合も大幅に増加している。30歳時点での未婚割合は女性で4割、男性は5割。独身男女のデート経験は「ゼロ」が最も多く、20代女性の3割弱、30代女性でも2割に上る。結婚願望が低下している現状は、少子化を考える上でも悩ましい。
結婚した人々の暮らしも変化している。専業主婦の世帯は1980年に1000万世帯を超えていたが、足元では450万世帯にまで減少。逆に共働き世帯は614万世帯から右肩上がりで推移し、2021年には約1200万世帯となった。厚生労働省の「国民生活基礎調査」によれば、2018年の1世帯あたりの平均所得金額は552万円で、児童のいる世帯では745万円だ。
増加する共働き世帯の憧れの的になっているのは、夫婦ともに高収入という「パワーカップル」である。「ニッセイ基礎研究所」のレポート「パワーカップル世帯の動向」(パワーカップル世帯の動向-コロナ禍でも増加、夫の年収1500万円以上でも妻の約6割は就労 基礎研REPORT(冊子版)1月号[vol.298]|ニッセイ基礎研究所 (nli-research.co.jp))を見て欲しい。夫婦ともに年収700万円以上の世帯と定義されたパワーカップル世帯は、2020年に34万世帯も存在している。総世帯の0.62%、共働き世帯の2.1%だ。それらのハイスペックな世帯は「夫婦と子」世帯が約6割、「夫婦のみ」世帯が約3割であり、平均的な家庭と比べて裕福な生活をエンジョイしているであろうことは想像に難くない。
ローンで建てた「白亜の豪邸」で死ぬまで幸せな結婚生活を送るはずだった…
だが、そんな「パワーカップル」も時に階段を踏み外すことがある。約10年前、東京都内の閑静な住宅街に一戸建てを建てた家族は、それを嫌というほど味わうことになった。印刷会社に勤める夫Aさんの年収は850万円、公務員の妻は800万円。一男一女に恵まれ、長男の小学校入学を機に「白亜の豪邸」と自慢する住宅を構えた。ハイスペックといえども、もちろん住宅ローンに頼っている。
積み立ててきた資金を放出し、借入希望額は4000万円。2013年4月から日銀による大規模な金融緩和がスタートし、金利は低下。15年程度で完済できるとの計算があった。「2人で建てる新居なんだから、夫婦で返済していこう。頑張って繰り上げ返済をすれば、あっという間だよ」。仲良し夫婦が選んだのは「ペアローン」。共働き世帯の増加とともに増えてきた住宅ローンのタイプだ。このローンのせいで後に本当の地獄をみることになるなんて、この時、2人は思いもしなかった。