「昔は良かった」ではなく「昔はひどかった」。プロインタビュアー・吉田豪、何でもありだったテレビコンプライアンス…“ある事故”によって変化が起きた
数十年前のテレビは、今では絶対にできない演出や企画がお茶の間で当たり前に流れ、人々の脳裏にインパクトを残してきた。だが、ある時期を境に、テレビ番組の方向性が「守り」に入るようになっていったとプロインタビュアー・吉田豪氏は語る。みんかぶプレミアム特集「さよなら、テレビ」最終回。
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不適切にもほどがある昭和〜平成初期のテレビ番組
「テレビがつまらなくなった」という声をよく聞きます。確かに、ゴールデンタイムには特番とは名ばかりの無駄に放送時間だけ長い、タレントがただ楽しそうにゲームしたり歌ったりしている『東京フレンドパーク』まがいの番組が増えたのは事実だし、そこだけ見たらその通りだとは思うんですよ。ただ、『水曜日のダウンタウン』とか『さんまのお笑い向上委員会』とか『マルコポロリ』とか『チャンスの時間』とか、ローカル番組や深夜番組とかABEMAとかまで入れたらいまでも面白いものは確実にあるし、何ならコンプライアンス意識が緩い昔だって面白くない番組は多かった。いい番組や無茶苦茶な番組の記憶が強すぎるせいで記憶が塗り替えられちゃっているんだと思います。
実際、ボク含め昭和から平成初期のテレビをガッツリ見てきた人が求めるような刺激、いわゆる“放送事故”が起こるような番組は、どんどんなくなっていきました。いま振り返れば「昔は良かった」なんて言葉ではくくるべきではなく、「昔はひどかった」と言える内容だったんですが……。