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羽生結弦の快挙を黙殺する多くの日本メディア…「今世紀最優秀男性アスリートトップ10」の凄さ

日野百草 ファンしか知らない羽生結弦

目次

羽生結弦が今世紀最優秀男性アスリートのトップ10に

 まず、誇ることから始めよう。

 私たちにとっては当たり前の話でも、多くは、とくにこの国ではそうではないのだと思わされる。それでも、誇りうる「結果」であった。

 8月6日、国連機関のユネスコ本部で開催された国際スポーツプレス協会(以下、AIPS)100周年記念式典において、羽生結弦が今世紀最優秀男性アスリートのトップ10に選ばれた。

 順位はいいだろう。私は個人的にこのトップ10に順位は不要と考える。誰もが歴史上の人物であり、アスリートの枠を越えた人類の記録、記憶のトップ10である。

 1924年から2024年まで、過去一世紀の渡る人類のスポーツ文化におけるトップ10。世界137の国、913人のスポーツジャーナリストが選んだ。

 そのトップ10に羽生結弦がいる。誇るべきことだ。

 もちろん選ばれないから優れていないとか、凄くないとかそういう話ではない。記録が凄いとか、優勝の数とかでもないようだ。後述するが男女20人の選出事由には「世界の文化に与えた多大な影響」があるように思う。

ペレやモハメド・アリとともに選出

 メンバーを見る限り、男女とも選ばれたアスリートは1990年代以降に活躍した選手が多い。

 2024年の現役ジャーナリスト913人の印象と記憶からすればそれは仕方のない話で、1924年以降の男子フィギュアスケートでいえばカール・シェーファーやリチャード(ディック)・バトンは羽生結弦と同様に五輪連覇を果たしているし、2024年を跨ぐがギリス・グラフストロームは五輪3連覇である。

 しかしいずれも70年から100年近く前の選手である。投票したジャーナリストでそのオリンピックを観た、その時代に生きたという人は少ないだろう。それでも選ばれているサッカーの神様、ペレやザ・チャンプ、モハメド・アリはそれこそ人類史上の人物、ということか。

 女性アスリートの今世紀最優秀トップ10に目を通すと、同じく70年以上前の選手としてクン夫人(AIPS表記は英語でコーエン)が入っている。

 かつて日本ではテニスのキング夫人(ビリー・ジーン・キング)やコート夫人(マーガレット・スミス・コート)のように、結婚したアスリートに「夫人」を敬称として使うことがあった。

 山本鈴美香『エースを狙え!』、竜崎麗香の「お蝶夫人」はそれらにプッチーニの歌劇『蝶々夫人』(旧邦題『お蝶夫人』)をなぞらえたものだが、そうした時代の選手も入っている。

 またさらに古い選手では女子ゴルフのマーガレット・アボットが入っている。100年以上前の選手で1900年パリ五輪の金メダリストである。前提である1924年からという括りをとうに越えた人物だが、これはやはり同時期に開催されていた2024年パリ五輪から選んだジャーナリストが多かったのだろうと思う。

 またアボットはアメリカ女性初の金メダリストで、日本でいうなら日本人女性初の金メダリスト「前畑がんばれ」の競泳、前畑秀子や陸上競技の人見絹枝(金メダリストではないが、先駆者として)のような存在なので、日本人には馴染みがなくともアメリカから見ての偉人として、「アメリカ女性初の金メダリスト」として選ばれたのだろう。

 またパリ五輪にあわせての発表なので同五輪のコンセプトだった多様性重視、女性参画の推進という点でアボットはふさわしいとされたように思う。同じく選ばれたイスラム社会の女性初の金メダリスト、ナワル・エル・ムータワキル(モロッコ)もまたそうだろう。1980年代のイスラム女性がスポーツをすることがどれだけ勇気のいったことか、女性がスポーツをするどころか教育すら受けさせてもらえず、一生の大半を顔や肌を隠して暮らす地域もあるイスラム社会において、ムータワキルもまたアスリートの枠を越えた人物である。

 私の常日頃の主張なら「社会性」ということになる。

世界の文化に与えた影響

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この記事の著者
日野百草

1972年生まれ。日本ペンクラブ広報委員会委員。出版社勤務を経て国内外における社会問題、政治倫理を中心に執筆。大学院で芸術学を専攻、昭和史における人物評伝およびフィギュアスケートなどの舞踏芸術に関する論考も手掛ける。2018年、評論「『砲車』は戦争を賛美したか 長谷川素逝と戦争俳句」で日本詩歌句随筆評論協会賞奨励賞を受賞。著書『評伝 赤城さかえ 楸邨・波郷・兜太に愛された魂の俳人』他。

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