「あんたを信じた私がバカだった」…ビリギャルが日本の親たちに伝えたい「たった一つのお願い」偏差値30から慶應大合格の裏側

コロンビア教育大学院で認知科学を学んだ“ビリギャル”ことさやか氏は現在、日本の子育て文化に警鐘を鳴らしている。「親が先回りして与えた選択肢が、子どもにとって正解とは限らない」とし、失敗するかもしれないリスクをもってしても、子どもの意思で選び取ることの重要性を説く。親が子どもに示すべき在り方について、さやか氏に伺った。短期連載全2回の第2回。
目次
優秀な経営者や学生よりも、幼稚園児がもっとも成果を出せたこと…子どもの試行錯誤力はすさまじい
「リスクをとらない文化」ともいえる日本では、自分自身だけでなく、子どもまで意図せず追いつめてしまっているケースが本当に多いと感じます。しかもそのほとんどが子どものためを思い、心の底から良かれと思ってやってしまっているから、見ていてとても辛いのです。
小さいときに親からかけられた言葉というのは、自分でも気づかないくらい人格の根っこの部分に影響しています。それは後から消そうとしてもなかなか難しいんです。それがその子のマインドセットのベースになってしまい、人生を左右することもよくあります。
親は、「こうしたほうがこの子のためになる」「この道が幸せになるための最短ルートだ」と思い、子どもに助言をしたり、代わりにルートを選択したりします。ですが、それは必ずしもその子にとって正解とは言えません。
認知科学の論文によく出てくるのが、「マシュマロタワー」の事例です。これは、乾麺のパスタとマシュマロ、テープとひもを使って、どれだけ高いタワーを作れるかという課題です。これを経営者や学生、幼稚園児などあらゆる層の人たちにチャレンジしてもらったところ、一番高いタワーを作れたのは幼稚園児のチームだったことを示した論文です。
知識や経験も豊富で問題解決能力が高い経営者は、まず仮説や戦略を立てることから始めます。ですが幼稚園児は何も考えず、「とりあえずつくってみよう!」ととにかく試行錯誤し、倒れたら次、また倒れたら次といった挑戦を繰り返します。結果、どのチーム誰よりも高いタワーを組み立てられるのです。
これって、「効率の良いルート」ではないですよね。でも結果として最良のものができあがっている。子どもは大人にはない思考回路を持っていて、大人であれば「無理だ」と思って最初から挑戦しないようなことでも「わからないから1回やってみよう」と、挑戦してみる。その過程で、確かに非効率かもしれないけれど、いままで誰も試したことがないような新しい方法や解決策を編み出すのが天才的に上手なんです。
結局、大人の目線で「これが最適だ」と思ったとしても、子どもにとってはそれが最適解ではないことも多いんです。むしろ、遠回りをしたり、いっぱい失敗する中で本人が間違いから学び、「次はこうしてみよう!」と次なるタスクに挑戦する、この生きた学びのプロセスを邪魔しないことのほうが重要です。
「あんたのことを信じた私がバカだった」
本来は子どものうちに、いっぱい失敗すべきです。子どもには、感情が強く動き、記憶に残るような人生において重要なイベントが日々起こります。友達と喧嘩した日やテストで初めて100点を取れた日、失恋した日……。そのときに重要なのが、「周囲の人間がどのようなリアクションをするか」です。これがその後の彼らの認知を左右します。