「ボクは凡人」吉田豪による“仕事の生存戦略”…ニッチなジャンルの知識を極め、初対面でリリー・フランキーと盛り上がり師弟関係に

「正社員で就職するのがゴール」「転職はキャリアアップのため」そんな常識がある一方で、人生の道筋を“型破り”に切り開く人もいる。プロインタビュアー吉田豪、彼もその一人だ。「まともな就職活動なんて、したことないですよ」と笑いながらも、歩んできた人生は仕事に対する固定観念を覆すヒントに満ちていた。会社に入らなくても、生き方は無限大ーーその発想の裏側を読み解いていきたい。みんかぶプレミアム特集「人生激変!プロおすすめのホワイト企業リスト」第7回。
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長く在籍した紙プロには履歴書を出していない
ボクはいわゆる「普通の就職」をしたことが一度もないんですよね。高校卒業後は1年間無職で、専門学校に入った後、卒業制作で一緒に学校の暴露本を作った奴の同期が「1ヶ月も持たずに編プロを辞めた」というのを聞いて、翌日その編プロの面接に行って潜り込んだのが社会人としてのスタートです。
その後、編プロをボクが入る前に辞めた面識のない先輩が『紙のプロレス』(以下、紙プロ)で2人仕事をしていて、お手伝いとかに呼ばれるようになった頃に、紙プロの一番下っ端の女性が急に辞めちゃったことで、引き抜かれて転職。常に誰かが辞めた直後のスキマに入り込む形だったので、社会人の参考にはまずならないと思います。なにしろ紙プロでは履歴書すら出してないですから(笑)。
辞める直前に給料半分…それでも何食わぬ顔で働く
振り返れば底辺から底辺への転職でしたね。編プロ時代が12万円の雇用期間から始まって、15万円で何年かやって、最後に18万円に上がったぐらい。当時はバブル期だったのに最後のボーナスでは19万円しか出なくて、「君は辞めるからボーナスも半分だ!」と大幅に減らされる状況。給料自体は紙プロ時代に入ってもほぼ変わりませんでした。ただ、ボクは就職する前に1年間無職を経験しているから、そこで怒りが沸き起こることは全然なく、むしろ「同世代で同じような趣味の人がいっぱいいて楽しい!」「好きなことが仕事になって最高!」みたいな感じで、転職後の不満はまったくなかったんですよ。まあ、転職後は健康保険も支払われてなかったりで、会社としてはひどかったんですけどね(笑)
本当は、編プロの前に一社内定をもらっていて、それが今はなきマンガ情報誌『コミックボックス』という媒体。ネットで検索するとすぐに「コミックボックス パワハラ」と出るようなところで、当時『噂の真相』で「パワハラで社員が大量離脱との噂」っていう情報が載ってたんですね。これはチャンスと思って電話して、面接で卒制などを見せたんですが、「君はこういう姿勢だと、広瀬隆さん(※作家。反原発に関する著作多数)に会わせることはできない」との返答。それでも「明日から来てくれ」と言われたんですけど、「入社後1年は便所掃除だ。原稿なんか書けると思うなよ」とも言われたしで、結局入社は断念したんですけど、これも隙間に潜り込むパターンでした。