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なぜ「中居ショック」でフジテレビは失敗し、「吉沢ショック」でアイリスオーヤマは成功したのか…世論を読み間違えた対応の責任

(c) AdobeStock

 フジテレビからのスポンサー離れが加速している。タレント・中居正広氏をめぐる女性トラブルの影響に加え、あまりにお粗末な社長会見が大炎上し、スポンサーのCM放映差し止めが雪崩を打っているのだ。報道機関のガバナンス不全には国からも独立性の高い調査委員会による調査を要求され、あまりに後手の対応も批判されている。経済アナリストの佐藤健太氏は「もはや港浩一社長が引責辞任するだけでは収まらない状況に見える。世論を読み間違えた対応の責任はフジの役員全員にあるだろう」と指弾する。

目次

フジテレビを見ているとACジャパンにひたすら啓蒙される

 一体、何を視聴していたのかと錯覚する人は少なくないだろう。相次ぐスポンサーのCM出稿差し止め決定により、フジテレビで放映されるCMは公益社団法人「ACジャパン」の広告に次々と差し替えられている。SNS上の偏見や噂話に対する注意喚起、災害に備える備蓄品の重要性、健康啓発…。社会問題を今一度考える機会としては良いのかもしれないが、番組途中にひたすら繰り返されると辟易とする人もいるはずだ。

 ACジャパン広告への差し替えは1月20日までに350本以上に達し、自社CMの差し止めを決定した企業は70社超に上るという。これがフジテレビに対する現時点での世の中の「評価」と言えるだろう。無関係の番組出演タレントやフジ社員がかわいそうに感じるほどだ。社外取締役を務める文化放送の斎藤清人社長らが要請し、フジテレビを傘下に持つフジ・メディア・ホールディングス(HD)は1月23日に臨時取締役会を開催することになったが、中居氏をめぐるトラブル発生から対処まで後手後手である点は否めない。

 フジテレビの港社長は1月17日に開いた記者会見で、トラブル発生の直後(2023年6月初旬)に事態を把握していたと明らかにした。だが、その後もフジは中居氏を番組に起用し続け、「極めてセンシティブな領域の問題」としながらも十分な対応をしてこなかったことは週刊誌が報じる被害女性のコメントからうかがえる。

 会社として女性の心身の回復とプライバシー保護を優先し「極めて秘匿性の高い事案と判断した」のは当然だが、なぜトラブル把握から1年半が過ぎた今になって弁護士を中心とする調査委員会を立ち上げるのか理解に苦しむ。トラブルの対処体制や相談窓口の実効性、ガバナンスの欠如が心配でならない。

フジの役員全員は報道機関として恥ずかしくないのだろうか

 かつてフジテレビキャスターを務めた神奈川県の黒岩祐治知事は1月21日の記者会見で、フジの社長会見が動画撮影を認めないなど閉鎖的だったことに関し「企業が不祥事を起こした時は、とにかく記者会見やってくれと迫った方ですよね。逆の立場になった時にテレビカメラを入れない、映像も撮らせないという意思決定が行われたことが信じられない」と指摘している。

 まさに、その通りだろう。トラブルを1年半前に把握しながら、週刊誌に報じられると「社長会見の参加は記者会加盟社のみ」「生中継やテレビカメラはなし」という条件で会見を開く。そのような意思決定を下したフジの役員全員は報道機関として恥ずかしくないのだろうか。

 第三者の弁護士を中心とする調査委員会の立ち上げについても、フジ側は日本弁護士連合会のガイドラインに基づく独立性の高い「第三者委員会」ではないと説明した。だが、社外取締役からの要請に加えて、村上誠一郎総務相は「独立性が確保された形で早期に調査を進め、信頼回復に努めてほしい」と求めた。

ガバナンスの欠如、スポンサーは無視できない

 フジ側としてはテレビ局の春と秋の番組改編、あるいは6月の株主総会までに事態を収拾したいとの思惑があるのかもしれないが、トラブル把握後の対処体制や相談窓口の実効性、ガバナンスの欠如といった点はスポンサー企業にとって軽視できない問題だろう。民間企業ではあるものの、そこは「自分ファースト」であってはならないはずだ。少なくとも、これまでのフジの報道姿勢は同じだったと感じる。

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この記事の著者
佐藤健太

ライフプランのFP相談サービス『マネーセージ』(https://moneysage.jp)執行役員(CMO)。心理カウンセラー・デジタル×教育アナリスト。社会問題から政治・経済まで幅広いテーマでソーシャルリスニングも用いた分析を行い、各種コンサルティングも担う。様々なメディアでコラムニストとしても活躍している

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