こんなこと指示しなくてもわかるだろ…説明不足を棚にあげ部下を叱責する残念上司をぶっ倒す、3つの対処法

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「こんなこと言わなくてもわかってよ…」。仕事や日常生活で繰り返される、お互いを不幸にする言葉だ。何度もそんな言葉を浴び、かつ自分自身も何度もそう思ったというトイアンナ氏が考え抜いた、「こんなこと言わなくてもわかってよ」と言わなくても済むための“正解”とは――。全3回中の1回目。

※本記事はトイアンナ著「えらくならずにお金がほしい 会社は教えてくれないキャリアのルール(大和書房)」から抜粋、再構成したものです。

第2回:プレイヤーとして優秀な社員ほど限界まで仕事を詰め込む…「徹夜で何とかなった!」悪の成功体験の積み重ねが生む最悪の事態

第3回:だから育児・介護で仕事を辞めてはいけない…出世したくなくても今のキャリアにしがみつくべき本当の理由

目次

何度も「こんなことを言われないとわからないの」と言われた私

 マネージャーになると、部下や後輩に対してよくこう思います。

「こんなこと、言わなくてもわかってよ!」

 ところが。このマネージャーだって、自分が新米だった頃は「こんなこと、言われてないんだからわかるわけないだろ!」と、何度もぼやいたはずなのです。

 どうして部下の気持ちがわかるはずの上司が、いつのまに部下へイラっとする理解のない上司になってしまうのかはここではおいておいて、今回は周りから「こんなこと常識でしょ」と怒られてきた、仕事ができないと思うしかないわれわれの身の置き場について考えます。

 こんな文章を書いているくらいですから、私も上司に「こんなことを言わないとわからないの?」と言われた経験が一度や二度ではありません。そのたびに「申し訳ございません、こんなことも言われないとわからないポンコツで……」などと逐一反省するとすぐ病んでしまうので、反省しつつも内心「お前の説明不足を部下に押し付けるなよ!」とオラつき返すことで、メンタルを維持していました。

 一度脳内で謙虚さと傲慢さを戦わせてから、折衷案ともいえる「すみません、どのような質問の仕方をすれば、その常識は身につくでしょうか……?」を唇から発するわけです。ただ、こういう質問をしてもこの手の上司は100%「仕事への愛が足りない」とか「センスの問題」といった、改善しようのないフィードバックをよこしてくるので、再度心中で「だ、か、ら〜‼」とイラつくはめになるのでした。

あのとき私は、どうすればよかったの?

 じゃあ……と思ったわけです。改めて自分が、他の方へ発注させていただくにあたり「言わないでもそれはわかってよ」と思った経験はどれほどあるのかと。そこで、イラっとするたびにメモを取ってみました。個人情報を編集したうえで、事例を掲載します。

Case1 具体的なタスク内容の理解の不一致

・何を「言わずにわかってほしい」と思ったのか

 仕事を依頼したときに、その仕事に含まれる細かなタスクを理解してほしかった

 たとえば、「プロジェクトの進行と予算管理」を任された場合、その業務にはクライアントさんからの依頼があった時点で「納期と予算がどれくらいかかりそうか」を社内の各所に確認し、クライアントさんへ返信してほしかった。誰に聞いたらいいかわからないなら、それはそれでかまわないので私へ相談してほしかった。

・どうしてもらえていたら、円満に解決したのか

 プロジェクトの進行と予算管理を依頼された時点で、「たとえばこういうケースでは、誰が行動するのでしょうか?」と確認してもらえていたら、問題なく業務内容を明確にできていたと思う。

Case2 前提条件の理解の不一致

・何を「言わずにわかってほしい」と思ったのか

 何をしたらクライアントに対し失礼と見られるかをわかっていてほしかった

 あるプロジェクトの予算管理を任されたにもかかわらず、当初の予算からどんどん追加費用を計上した方がいた。まるでクライアントを打ち出の小槌のように扱っているとしか思えず、「予算はもう決まっているので、その中でどう工夫するかを依頼したいです」とお伝えしたところ、「予算内で工夫してほしいなら、それを考えるために私の工数を追加請求したい」と言われガクっときた。だから、予算は決まっていて明示されているのだから、ご自分の工数を追加請求したいなら「ではどこを削るか」を話さないといけないのですってば……と。

・どうしてもらえていたら、円満に解決したのか

 予算が時に増えることは仕方ないので、「それが最後の手段であり、通常はクライアントへ一度出した見積もりをたびたびこちらの都合で覆してはならない」ことを前提に、交渉を考えたり他の部分でコストカット案を出してもらえていれば、私も「だったらこういうコストは下げられるかも」と建設的に提案できたと思う。

Case3  業務発生の背景理解の不一致

・何を「言わずにわかってほしい」と思ったのか

 なぜ仕事を依頼しているか、理由をくんだうえで要望を出してほしかった

 私の業務を切り分けて支援してほしいと依頼したところ、「引き受けるので毎日1時間、私の人生相談に乗ってほしい」と言われ脱力した。私は多忙だから、業務を外注しているにもかかわらず、なぜ多大な工数を追加してくるのか……と思ってしまった。

・どうしてもらえていたら、円満に解決したのか

 これが、「週に1時間の人生相談」なら全然問題なかったと思う。私がお金を支払って依頼する以上のコストをサービスとして要求されたので、不当な要求だと感じてしまった。

もめないための3つのポイント

 と、管理する側の目線から見ると、こちらの怒りももっともだ、と思えてしまうのですが……。実際に私の依頼を受けた側は、明らかに困惑していたわけです。難しいのは、私とのやりとりで初回から全く問題なく「わかってよ」の部分をわかってくださる方も半数以上いることで、「わからないほうが悪い」という考えが私にもはびこっていたことです。

 ただ、こうした事例を並べてみると、(1)やる目的 (2)発生する実務の全体像 (3)やったら失礼なことの3つがわかっていれば、もめないのだと見えてきました。

 であれば、この3点をあらかじめ私も聞いてしまえばいいわけです。

(1)やる目的を確認する質問

「非常に基本的な質問で申し訳ないのですが、このご相談を通じて何を達成されたいと思っていますか?」

「この件の目的は、消費者である20代男性からの問い合わせを増やしたい、という理解であっておりますでしょうか」

(2)発生する実務の全体像を確認する質問

「今のところ、業務にはこのような内容が含まれると考えておりますが、認識に相違があれば〇日までにご教示ください」

「たとえばこのプロジェクトでは、最悪のケースとして〇〇がありうると思います。こういった場合、誰が担当者となるのでしょうか?」

(3)やったら失礼なことを確認する質問

「この件で、たとえば先に承認された予算から値下がりしたご請求書をお送りするのは、どれくらいお手間になりますでしょうか」

「予算や納期がどうしても間に合わないと判断した場合や、成果物の仕様が変わりそうなときはまず、どなたにご相談させていただくとよろしいでしょうか」

「クライアントさん/取引先/上司にとって、避けてほしい事態にはどのようなものがございますか?」

 で、実際につつがなく進んだプロジェクトでは、この3点が網羅されていたのでした。そうか、「これくらいわかってよ」の源泉はこれか……。慣れない業務では特にこの3つがわからなくなってしまうので、あらかじめ聞いておくべきだなと腑に落ちました。

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この記事の著者
トイアンナ

PAX株式会社代表/ライター。外資系企業のマーケティング職として約6年間勤務し、フリーライターとして独立。恋愛とキャリアを中心に執筆しており、書籍に『モテたいわけではないのだが(イースト・プレス)』『確実内定(‎KADOKAWA)』『やっぱり結婚しなきゃ!と思ったら読む本(河出書房新社)』など。

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