これが彼の目指した『SEIMEI』…人々を災いから護り続けた安倍晴明と萬斎、そして羽生結弦という「式神」 『羽生結弦notte stellata2025』紀行(6)

目次
羽生結弦は式神であった
式神とは善と悪とを見極める鬼神でもある。本来『SEIMEI』における氷上の羽生結弦は彼自身が安倍晴明を演じる。
しかし『notte stellata』は野村萬斎が晴明であり、羽生結弦は式神であった。しかし陰陽道、古神道史における視点からすれば、これもまた必然であった。
この約束の地、祈りの地で萬斎の言う「催す」意味はエンタメの先にある。
古神道に造詣の深い羽生結弦
ご存知の方も多いだろうし、当時の晴明ら陰陽道に代表される古神道に造詣の深い羽生結弦、当然のことながら萬斎も知るところだろうが改めて書くと、晴明が超人的な能力の持ち主とされたのは鎌倉時代以降の書物によるところが大きい。
しかし晴明は実在の人物である。なぜ当時の「末法」に苦しむ人々が晴明を、呪術で悪霊や鬼を退治する陰陽師としたのか、これもまた彼らが晴明に見た「希望」と「祈り」であった。
夫占事之趣
應窮精徵
失之毫毛
實差千里
晴明
楓葉枝疏
雖舉核實
於老後
吉凶道異
難逐聖跡
於將來
唯舉一端之詞
粗抽六壬之意而已
自分の為しうる限りの「人の力」で末法と対峙した
〈それ占事の趣、まさに精微を窮むべし。これを毫毛に失すれば、実に千里を差ふ。晴明、楓萊の枝疎くして、老後において核実に舉じるといへども、吉凶の道異、将来においても聖跡を逐ひがたし。ただ一端の詞を挙げて、六壬の意を粗抽するのみ〉※