高校無償化の誤解「イギリス再現したフロア、蔵書数12万冊の図書館」今の私立で“年間約100万円、授業料以外に50万円”は当たり前の背景

国の新年度予算案に、子育て世帯にとって魅力的な予算が盛り込まれた。
「高校授業料無償化」だ。支給額が大幅に拡充され、所得制限もなくなるため、私立中学、私立高校に進学予定の家庭にとって大きな追い風になるだろう。
これまでの国による高校授業料支援策は、「所得制限あり」、「年間11万8800円が上限」(世帯年収590万円未満の場合は39万6000円)というものだった。しかし、今回の改革により「所得制限なし」「年間支給上限額は45万7000円」と支給対象、支給額が大幅に拡充する。
「東京都・大阪府では自治体が独自に予算を確保し、全国に先んじて高校授業料の無償化を実施してきました。私立高校の授業料が無償になったことで、東京都・大阪府では受験生の私学志向は高まっています。今回の政策によって無償化が全国に広がる形になるので、影響が及ぶ範囲は大きくなるでしょう」
そう語るのは、中学受験、高校受験の過去問集を出版し、学校事情にも深く通じている声の教育社後藤和浩社長だ。
これまで加熱を続けてきた中学受験はどのように変わるのか、学校選びの基準は変わるのか。今後の見通しを伺った。全3回の第2回ーー。
目次
イギリスの街並みを再現したフロアも
年間約100万円、授業料以外に50万円近くかかる。
「授業料以外になぜ、こんなに費用がかかるのか」
そう感じられる方は、一度私立中高に足を運んでみると理由がわかると思います。私立校の場合、各学校が独自性の教育方針を掲げ、充実した設備を用意しています。
例えば、英語教育に力を入れている山脇学園中学校・高等学校(東京都)には、イングリッシュアイランド(EI)と呼ばれる設備があり、1フロア丸ごとイギリスの街並みを再現した施設があります。なかには銀行やカフェなどを模したスペースがあり、リアルな英語学習が可能です。
東大合格者数は2024年100人、25年95人という高い進学実績を挙げている聖光学院中学校・高等学校(神奈川県)には毎日朝7時から夜9時まで開いているセミナーハウス「ザビエルセンター」が自習室として開放されており、生徒たちが日々切磋琢磨しながら学習に集中しています。この設備も、塾なしでも難関大学に進学できる後押しになっています。
蔵書数12万冊に24台のパソコン…
市川中学校・高等学校(千葉県)には「第三教育センター」と呼ばれる図書館を中心とした学習施設があります。蔵書数12万冊、24台のパソコンがあるマルチメディアスペースで、ガラス張りで開放感のある空間に100席以上の閲覧スペースが広がっています。