ホームレスが東京で一番生活しやすい場所はどこなのか…ルポライター・國友公司「まず、食べ物には絶対困らないです」

國友公司氏はルポライター・編集者として活躍する一方、自ら現場に飛び込み、その生々しい体験を本にまとめることで知られる。代表作『ルポ西成』は7万部を超えるベストセラーとなった。街の暮らしに溶け込み、その内側から社会の課題を浮き彫りにする國友氏の視点とは——。
西成、歌舞伎町、そして現在取材を進める横浜・寿町。日本社会の「影」の部分を丁寧に取材し続ける國友氏に、その現場で見てきたものを聞いた。短期連載全3回の第3回。
目次
横浜・寿町での最新取材「寿町は独立国家みたいです」
——今は横浜の寿町を取材されているそうですね。
そうです。寿町は歴史的には戦後に闇市ができて、そこの周りにスラム街ができたのが始まりです。最初は桜木町駅の前にあったんですが、米軍に接収された地域が返還された後、住民の反対運動があり、移転先として寿町が選ばれました。
西成と違うのは、寿町は港湾労働者の街だったことです。港の仕事も機械化が進んで減ってきて、高齢化も進み、現在はほとんどの住人が生活保護を受けているという状況です。
——どういうところが特徴的ですか?
寿町の面白いところは、西成と比べると昼と夜の人口差がないことです。西成は外から人が入ってきますが、寿町は外から誰も入ってこないし、中から誰も出ていかない。まるで一つの「独立国家」のようになっています。
また、時間の流れが遅いというか、時計を見る人がいないんです。西成はいろんな人が入ってくるので時間の概念がありますが、寿町では「今何時」という話をしている人がいなくて、時間を気にする人が本当にいません。「今から行く」と言って40分後に来ても何事もなかったように話が進んでいくような感じです。
——寿町で出会った面白い人はいますか?
一人は家の中をすぐにゴミ屋敷にしてしまう人で、一日中ゴミを拾って歩いています。使えそうなものを拾っては家に持ち込むという生活をしています。ドヤの部屋が三畳一間ほどしかないのに、天井まで全部ゴミで埋め尽くされていて、椅子1個分のスペースだけが空いている状態でした。
「こんなものを拾ってどうするんですか」と聞いたら、「それはゴミじゃない、データだ」と言うんです。「世の中のものは全て0と1の記号でできている。このペットボトルだったら010000110なんだ」みたいな。「これは全部僕のデータなんだ」と言っていました。
他にもいろいろ、面白い人はたくさいますよ。
フードデリバリー配達員たちの知られざる実態
——UberEats配達員の裏側についても取材されていますね。