雑誌「冬の時代」コンビニからも消えても存在意義…吉田豪「有力な情報は無料では得られない」

いわゆるオールドメディアと呼ばれる紙の雑誌を舞台に、数多くの人物と向き合ってきたプロインタビュアー・吉田豪氏。配信サービスやSNSが主流になり、「雑誌離れ」が叫ばれるなかでも、雑誌というフォーマットで執筆を続けている。雑誌が「冬の時代」を迎えた今、なぜ紙メディアはここまで追い詰められたのか。吉田氏が現場で見続けてきたそのリアルな変化と今を記した。みんかぶプレミアム特集「オールドメディアの黄昏」第4回。
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「情報にお金を払う層・払わない層」に大きな断絶
今回のテーマに合ってるかどうかわからないですけど、雑誌や紙メディアは基本有料じゃないですか。「インターネット上の有力な情報も無料ではまず手に入らない」ってことについて、まず語りたいんですよ。先日みんかぶマガジンで元フジアナウンサーの渡辺渚さんのインタビューをボクがやらせてもらったときも、みんかぶに課金していて全文を読んだ人には人間性がちゃんと伝わったんですよね。ちょっと強めの発言も「ああ、そういう意図だったのね」ってことがよく分かるし、裏に変なプロデューサーがいて操っているわけでもない、もともとインドア派で意思の強い人ってことが伝わって、好感度が高くなる記事になってたはずで、ちゃんと読んだ人には評判が良かったんですよ。
でも、無料で読める冒頭部分だけ読んで怒る人が相当いるし、さらにはそれすらも読まずにYahoo!ニュースでタイトルだけを見て反応する人が世の中の大多数なわけで。あのインタビューがきっかけで彼女を叩くネットニュースも出てきたし、しばらくはボクもエゴサする気がなくなるぐらいネットが荒れてました。あんな状態がずっと続いている以上、彼女は相当しんどい思いをしてるんだろうなってことが実感できたし、こうしてメディアにお金を払わない層が多くなればなるほど、お金を払う層との断絶や情報格差はどんどん深くなっていくわけで、それが最近の状況って気がしますよね。おそらく、この記事も無料部分だけ読んで怒る人が相当出てくるんだろうなと思ってて、そこはもう諦めてますね。
AIを信じてフェイクニュース扱いする風潮にモヤモヤ
ちょっと前に朝日新聞のフォトアーカイブアカウントがツイートした昔の電車の写真、車内にすごい量のゴミが散乱している光景が、ChatGPTに「こんなものは存在しない」って判断されて「フェイクニュース」扱いされたのも象徴的な話だと思うんですよ。「ウェブ上にない=存在しない」ってことで「嘘松」認定されちゃう。恐ろしい時代が来たと思いますよ。これはちゃんと検証した人がいて、実はその写真が当時載ってた新聞も存在するし、IDとパスワードが必要なフォトアーカイブのサイトにはその画像が載っている。でも、AIは無料で簡単に見られる情報しか探索できないから、それを答えとして出してきちゃう。AIは便利なツールだけど、それを万能だと思ってる人の危うさが加速してますよね。
いろんな資料を漁って未知の情報が出てきたとき、念のため検索したらネット上に何の情報もないってことは多々あるんですよ。ネット上に存在しない情報を掘るのが趣味のボクなんて、もはや全身嘘まみれみたいなもんですよね(笑)。「こいつの話はデタラメだ」とか言われるかもしれないけど、それってただネット上に存在しないだけなんです。そういうことを調べるのがライフワークだし、ボクが引き出した初出し情報だらけのインタビューによってWikipediaが書き換えられていくのも楽しいですよ。ただ今後、「あなたの情報がネット上に全然ないから確認したいんですけど…」って感じのインタビューによってWikipediaが充実したのに、「吉田豪は嘘をついてる! ネットに情報がないって言ってるけど全部Wikipediaに書いてあるぞ!」って言われる可能性もありそうです。