CDやテレビで売れた最後のアイドルはSnow Man? Snow Manはなぜ爆発的な人気を獲得するまでに至ったのか

 平成といえば、SMAPや嵐など、男性アイドルグループが席巻した時代だったと言えるのではないか。

 では、令和における男性アイドルはどうなのか。いま、台風の目はどこにあるのか。ドラマウォッチャー・明日菜子氏が、新連載「令和のアイドル ヒットの条件」にて考察する。

 連載第一回は、「CDやテレビで売れた最後のアイドルはSnow Manなのでは?」と同氏が考察するーー。

目次

平成は、アイドルと共にある時代だった

「令和のアイドル ヒットの条件」というタイトルで、連載をやってみませんかと声をかけていただいた。このコラムが掲載される時には、もしかしたら別のタイトルになっているかもしれないが、そのときふと思った。令和におけるアイドルのヒットの条件……ってなんだろう。

 平成生まれの私の人生は、アイドルたちと共にある。初めて買ってもらったCDは、KinKi Kidsの『硝子の少年』。小学生の頃はモーニング娘。の全盛期で、矢口真里のチャーム欲しさに飲茶楼なるマズいお茶(小学生には厳しい味だった)を家族で飲んだ。ドラマはあまり見せてもらえない幼少期だったが、月曜の夜は必ず『SMAP×SMAP』を見ていた。

『ごくせん』(日本テレビ系)や『野ブタ。をプロデュース』(日本テレビ系)が流行った高校時代は、休憩時間に誰かが買ってきた『Myojo』等のアイドル雑誌を回し読みする。クラスメイトはKAT-TUNの亀梨和也&赤西仁の“仁亀”に熱をあげていたけれど、私は山Pが好きだった。その前後くらいに『花より男子』(TBS系)で松潤が大ブレイクし、嵐は瞬く間に国民的アイドルへの道を駆け上がっていく。いろいろ変遷はあるものの、私の人生において“アイドル好き”は一貫している。ミーハーすぎて恐れ多いが、BTSの『Dynamite』を機にKPOPも聞くようになった。

音楽セールスの主流も、CDから配信などを含めた総合評価へ移り変わった

 昔……少なくとも私が学生の頃くらいまでは、ヒットの基準はとてもシンプルだった。CDがミリオンセラーとなれば、誰しもがなんとなく口ずさめるような曲で、日常生活の中で自然と耳に入ってきた。たとえば、平成最大のヒット曲であるSMAPの『世界にひとつだけの花』(2003年)は、初登場から2週目でミリオン、21週目でダブルミリオンを達成し、2025年1月時点で314万枚を売り上げている。解散報道時、ファンがCDを買い足す“詰み花”現象で売上は加速したものの、CDは“一人一枚買う”ことを前提としていた時代、この枚数は“支持の実数”に限りなく近いと言えるだろう。

 だが、スマホのサブスクが主流になった今、CDの売り上げは激減。かつてはオリコンが絶対的な指標だったが、現在はBillboard JAPANがオリコンに並ぶ存在だ。CDと配信のセールスに加え、ストリーミング再生数やYouTubeの動画再生回数などを含めた総合評価へと移り変わっている。

それでも、アイドルのCDは依然として売れる仕組み

 CDの売り上げが全体的に落ち込み、売上枚数だけでは人気を測れなくなった今も、アイドルのCDは依然として“売れる”傾向にある。一人のファンが複数枚のCDを“積む”時代になったからだ。それは推しのランダム写真を手に入れるため、特典イベントに参加するため、あるいは「少しでも売り上げに貢献したい」という思いから、何十枚、何百枚と購入するファンもいる。

 結果的にこんな不景気な時代でも、ミリオンには届かずともハーフミリオンを記録するアイドルグループはいくつか存在するのだが、その多くは熱心なファンたちによって支えられた数字であり、『世界に一つだけの花』の頃のように、「CDの売上枚数=支持数」とは言い難い。YouTubeのMVやTVerの再生数なども同じで、より多くの人の目に留まるよう、ファンが自ら拡散し、繰り返し再生することで数字を後押ししている印象だ。

「CDやテレビで売れた最後のアイドルはSnow Man」説

 このように、CDやテレビを取り巻く環境が時代と共に変化した今もなお、アイドルたちがヒットするためのきっかけは、CDやテレビにあると信じているファンも多い。「CDがミリオン売れたら……」「メンバーが出演するドラマが国民的な人気になれば……」と、かつてのSMAPや嵐のような売れ方を心のどこかで望んでいる。少なからず私もその一人なのだが、とある仮説が頭に浮かんだ。——CDやテレビで売れた最後のアイドルは、Snow Manになるのではないだろうか。

 次々に新しいアイドルが登場し、競争が激化する時代にあっても、いまだジャニーズ(現:STARTO ENTERTAINMENT)のブランド力は健在だ。特にデビュー5年目で、国立競技場の単独公演を叶えたSnow Manの人気は、特に凄まじい。事務所内ではSMAP、嵐につづく快挙だった。

 2020年のデビュー以降、Snow ManはCDセールスで平均80万〜90万枚という高水準を維持し続けている。多くのアイドルグループは、デビュー時の勢いが最も強く、そこから徐々に売上が落ち着いていくものだが、Snow Manの恐ろしいところは、10枚目のシングル『LOVE TRIGGER/We’ll go together』(2024年2月)が自己最高の126.3万枚を記録したことだ。次作11枚目『BREAKOUT / 君は僕のもの』(2024年7月)も2作連続でミリオンを突破。“積む”傾向にある現代のアイドル市場の中で、Snow Manに関しては、すでにファンが買い支えるフェーズを脱したと思われる。複数形態展開はあるものの、この売上は純粋な“支持数”と捉えていいだろう。

ジャニーズ史上初の同時デビュー

 ヒットの基準が複雑になった現代において、Snow Manの成功は、誰の目にも明らかだ。勝因はいくつか考えられるが、デビュー当初から、ミリオンセラーを狙えるような強いファンベース、KPOP用語で言うところの“ファンダム”を築けたことはなによりも大きい。そこには同時デビューのSixTONESというライバル、いや、“公式の競合相手”の存在が、双方に大きな影響を与えている。

 2020年1月にリリースされた両A面デビューシングル『Imitation Rain/D.D.』は、初週132.8万枚を売り上げ、デビューシングル史上初の初週ミリオンという快挙を成し遂げた。個別成績が出たBillboard JAPANでは、初週でSixTONESの『Imitation Rain』が776,836枚、Snow Manの『D.D.』が752,236枚を記録し、当時からデビュー筆頭候補として注目されていたSixTONESが初動を上回る。

 その後『Imitation Rain』は、2月3日付の“JAPAN HOT 100”で1位(『D.D.』は2位)を獲得し、SixTONESは4月に2ndシングル『NAVIGATOR』(※コロナの影響で6月→7月に発売延期)を発表した。だが、同年7月に『D.D.』は単独でミリオンを達成する。メンバーの活動自粛やコロナの影響で次の活動がなかなか発表されない中、待ち侘びたファンの支持が、デビュー曲『D.D.』に集中したことも理由の一つと考えられるだろう。

Snow Manは、目黒蓮『silent』出演がきっかけで売れ始めたわけではなかった

 その結果、2ndシングル『KISSIN’MY LIPS/Stories』(2020年10月)も、初週売り上げ91.8万枚という驚異的な記録を叩き出し、のちにミリオンセラーとなる。精力的なYouTube活動で新たなファン層をさらに獲得したSnow Manは、目黒蓮が2022年10月期のドラマ『silent』(フジテレビ系)にて、かつての松潤現象を彷彿させるような注目を浴び、一躍“時の人”となる。

 Snow Manの爆発的な人気は、目黒の『silent』による躍進がきっかけだと思っていたのだが、ご覧の通り、Snow Manはデビュー時から確かな実績を築いていた。「鬼に金棒」ならぬ「CDミリオンにsilent」だったのである。Snow Manをめぐる一連の流れは、CDやテレビが盛り上がっていたSMAPや嵐の売れ方に近い理想型だが、エンタメやメディアの選択肢が無数に広がった今は“奇跡”に等しく、再現性は著しく低い。

タイプロの爆発的な成功や他事務所の成功など、新たな流れも出てきている男性アイドル業界

 ならば、これからのアイドルは、どこにヒットの活路を見出せばいいのだろう。鍵を握るのは、やはりインターネットだ。この流れをSTARTO ENTERTAINMENTの中で体現しようとしているのが、timeleszである。2024年にNetflixで配信された新メンバーオーディション『timelesz project -AUDITION-』は社会現象になり、初の冠番組『タイムレスマン』(フジテレビ系)を皮切りに、ネットから“逆輸入”される形で、地上波各局への露出が一気に増加している。6月に発売した新体制初のアルバム『FAM』の初週売上61.9万枚は、今後のtimeleszの活動における基準値となる数字だ。

 さらに、朝ドラ『おむすび』(NHK総合)など俳優としても活躍中の佐野勇斗が所属するM!LKの動向も見逃せない。スターダストプロモーション発のボーカルダンスユニット・M!LKは、もともと知られた存在ではあったが、今年はアルバムのリード曲『イイじゃん』が国内外で大バズりし、一躍注目を集めた。5月にはSNSでの総再生回数が15億回を突破。現在は音楽番組へのオファーが相次いでおり、この“逆輸入”の流れは、北村匠海率いるDISH//が『THE FIRST TAKE』で披露した『猫』をきっかけに、グループとしての出演が急増した現象を思い出さずにはいられない。

……あらためて、アイドルのヒットの条件とはなんだろう。Snow Manが奇跡的なヒットになったことは間違いないが、なにが起きるかわからないのが、アイドル業界だ。その答えは簡単に辿りつけそうにないけれど、複雑でまばゆいこの世界を、私なりに見つめてみたい。

    この記事はいかがでしたか?
    感想を一言!

みんかぶnote
この記事の著者
明日菜子

毎クール必ず25本以上視聴するドラマウォッチャー。『文春オンライン』『Real Sound』『映画ナタリー』『NiEW』などでドラマに関する記事を寄稿。

ライフ・その他カテゴリーの最新記事

その他金融商品・関連サイト

ご注意

【ご注意】『みんかぶ』における「買い」「売り」の情報はあくまでも投稿者の個人的見解によるものであり、情報の真偽、株式の評価に関する正確性・信頼性等については一切保証されておりません。 また、東京証券取引所、名古屋証券取引所、China Investment Information Services、NASDAQ OMX、CME Group Inc.、東京商品取引所、堂島取引所、 S&P Global、S&P Dow Jones Indices、Hang Seng Indexes、bitFlyer 、NTTデータエービック、ICE Data Services等から情報の提供を受けています。 日経平均株価の著作権は日本経済新聞社に帰属します。 『みんかぶ』に掲載されている情報は、投資判断の参考として投資一般に関する情報提供を目的とするものであり、投資の勧誘を目的とするものではありません。 これらの情報には将来的な業績や出来事に関する予想が含まれていることがありますが、それらの記述はあくまで予想であり、その内容の正確性、信頼性等を保証するものではありません。 これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、当社、投稿者及び情報提供者は一切の責任を負いません。 投資に関するすべての決定は、利用者ご自身の判断でなさるようにお願いいたします。 個別の投稿が金融商品取引法等に違反しているとご判断される場合には「証券取引等監視委員会への情報提供」から、同委員会へ情報の提供を行ってください。 また、『みんかぶ』において公開されている情報につきましては、営業に利用することはもちろん、第三者へ提供する目的で情報を転用、複製、販売、加工、再利用及び再配信することを固く禁じます。

みんなの売買予想、予想株価がわかる資産形成のための情報メディアです。株価・チャート・ニュース・株主優待・IPO情報等の企業情報に加えSNS機能も提供しています。『証券アナリストの予想』『株価診断』『個人投資家の売買予想』これらを総合的に算出した目標株価を掲載。SNS機能では『ブログ』や『掲示板』で個人投資家同士の意見交換や情報収集をしてみるのもオススメです!

関連リンク
(C) MINKABU THE INFONOID, Inc.