介護施設で5人連続死を引き起こした「呪いの人形」と同居 呪物コレクター・田中俊行が“超自然的な力”の実在を断言する理由

怪談師であり、日本を代表する「呪物コレクター」として知られる田中俊行氏。彼が収集するのは、持ち主に災いをもたらすとされる曰く付きの品々である。介護施設で5人を死に導いたとされる呪いの人形「チャーミー」との出会いが、この世界に引きずり込まれるきっかけになったという。
呪物の力を「間違いなく存在する」と断言する理由から、メルカリでも取引される現代の呪物マーケット事情まで、オカルトの枠を超え民俗学の領域にも通じる呪物の奥深い世界を、同氏に解き明かしてもらった。短期連載全3回の第1回。(取材日:6月25日)
目次
なぜ彼は”呪われた品”を集めるのか 趣味で始めた「呪物集め」で引っ張りだこに
――田中さんは「呪物コレクター」として広く知られていますが、まずは現在、どのような活動をされているのか教えていただけますか?
仕事のメインは「怪談師」です。いわゆる怖い話を人前でお話しする仕事をしています。そして、もう一つの活動として、ライフワークで「呪物」を集めています。呪われたものや曰く付きの品々を収集している、という感じですね。
――「怪談師」が本業で、「呪物収集」はライフワーク。その二つは、活動として軸が異なるものなのでしょうか?
ええ、全くの別物です。呪物収集は、本当に仕事とは関係なく、完全に趣味で始めたことなんです。それが今、こうして色々なところで注目していただくようになって、自分でも一番困惑しています(笑)。
――趣味で集めていた呪物のほうが、どんどん世間の注目を集めて先行しているような状況なのですね。
ただ、もちろんクロスオーバーするところはあります。例えば、僕のコレクションに「髪の毛が伸びる人形」というのがあるのですが、その人形にまつわるエピソードを怪談としてお話しすることもあります。ですから、全く無関係というわけではなく、相互に関連している部分もありますね。
呪物コレクター・田中俊行が“超自然的な力”の実在を断言する理由
――そもそも、田中さんが定義する「呪物」とは、一体どのようなものなのでしょうか?
これは僕自身の解釈になりますが、「物に超自然的な力が宿ると信じられているもの」、それが呪物だと考えています。そして、それには「白」と「黒」の両面があるんです。持ち主を守ってくれるようなポジティブな力を持つ物もあれば、人に災いをもたらすネガティブな呪いの物もある。その両方を含めて「呪物」と呼んでいます。
――その「超自然的な力」というのは、都市伝説のようなものなのでしょうか。それとも本当に実在するとお考えですか?
僕は、呪物の力は間違いなく存在すると信じています。今こうして、みんかぶさんのようなメディアに呼んでいただいたりとか、こういうお仕事をさせていただいたりしてなんとか生活できているのは、すべて呪物の力のおかげだと思っていますから。だっておかしいでしょ、「呪物コレクター」とか言って、こんな感じで(笑)。
もちろん、僕が呪物という少し変わったテーマで目立っているだけで、世界や日本を見渡せば、僕よりもずっと知識が豊富で詳しい専門家の方々はたくさんいらっしゃいます。僕自身も、とある方に色々と教えを請いながら、呪物の世界を探求している最中です。
知られざる「呪術師」の仕事の裏側 “呪物”を生み出す人々の素顔とは
――その「とある方」というのは、どのような方なのでしょうか?
日本には住んでいない方なのですが、「呪術師」の方です。
――呪術師! まるで物語の世界のようですが、実際に存在する職業なのですね。彼らは普段、どのような仕事をしているのですか?
呪術師の仕事は、これもまた白と黒、ポジティブなものとネガティブなものの両方があります。基本的には、人々の相談に乗ることが仕事です。例えば、誰かからの相談を受けて、その願いを叶えるための「呪術」を施したり、その人のための念を込めた特別な「呪物」を作成したりします。
――呪物は、後からオーダーメイドで作ることもあるのですね。
そうですね。相談者の状況や願いに応じて、最適な呪物を渡すこともありますし、呪術だけをかけるというパターンもあります。
「正直、気持ち悪いじゃないですか」日本一の呪物コレクターになったきっかけは“勘違い”?
――田中さんご自身が、そういった曰く付きの「呪物」を初めて集めようと思ったきっかけは何だったのでしょうか?
これも、もともとは怪談師の活動がきっかけでした。怪談ライブをやっていると、お客さんから相談を受けることがときどきあるんです。何を勘違いされたのか、「怪談を話す人だから、お祓いもできるに違いない」と思われてしまうみたいで(笑)。
――霊能力者のような存在だと思われていたのですね。
ええ。それで、「家にちょっと困った物があるから、何とかしてくれないか」という相談が来るんです。例えば、「心霊スポットで面白半分に石を拾ってきたら、それから家族や身内に不幸が立て続けに起こっている。どうしたらいいか」とか。捨てるのも怖いから、田中さんに預かってほしい、と。
正直、気持ち悪いじゃないですか(笑)。でも、その石にまつわるエピソード、つまり、その石が引き起こしたとされる不思議な現象も含めて、話のネタとして預かることにしたんです。当時は呪物そのものに興味があったというよりは、怪談の元になる「エピソード」を集めている感覚でした。そうしていくうちに、家には曰く付きの品が少しずつ溜まっていきました。
介護施設で5人が連続死 隠しても必ず元の場所に戻る“呪いの人形”がすべての転機に
――その時点では、まだ呪物への興味はなかったのですね。何が転機になったのですか?
ある一体の人形との出会いがすべてを変えました。関西のとある介護施設にあった、汚れた人形です。その施設では、利用者であるお年寄りの方が、なぜか特定の人だけ、その人形を異常に可愛がるという現象が起きていたそうなんです。そして、その人形を可愛がった方は、必ず3日以内に亡くなってしまう。それが5人も続いたそうです。
――5人も……。それは偶然とは考えにくいですね。
さすがに「縁起が悪い」ということになって、施設側は人形を地下の倉庫に隠したそうです。ところが、次の日になると、なぜか元の場所に戻っていた。そんな不気味な現象が起きて、施設のスタッフさんも困り果てていた。その中の一人が、僕のことを知ってくれていたんです。
そして偶然にも、僕がその施設の近くで怪談ライブを行う日があった。さらに偶然なことに、その日は僕の誕生日だったんです。
呪いの人形を持ち帰った夜に部屋で起きた「偶然では片付けられない」怪奇現象
――まさか、誕生日プレゼントとして……?