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世界に羽ばたいたBTSの礎・・・わかっている。それでも、これ以上、彼らを傷つけないで(前)

(c) AdobeStock

連載『BTS第2章 新たな旅へ。』

目次

感謝と畏敬、しかし愛憎

 誤解を恐れずに書くなら、HYBEへの想いは感謝と畏敬、しかし愛憎ばかりだったように思う。

 私の個人的な感情だが、どうだろう。

 BTSだけでなく所属するアーティストに罪はない。事務所の余計なことにアーティストの心が傷ついてほしくない。

 だからこそ、私はいまのHYBEを生理的に受けつけない。これ以上、彼らを傷つけないで欲しい。

 本当にあくまで、私の個人的な感情だが、どうだろう。

 2025年9月。そのHYBEの創業者、パン・シヒョクが警察に出頭した。

 7月にはHYBE本社が家宅捜索を受けていたので逮捕は時間の問題だった。いや、むしろ逮捕までの猶予がかなりあったと思う。韓国警察としてはあくまでパン・シヒョクの出頭を望んでいた、警察の最後通告が内々にあったがための出頭だったとみる。

 韓国の警察とその逮捕はある意味、極めてセレモニアルだ。基本、食い逃げから大統領の逮捕まで公衆に晒すことが是とされる(もちろんケースバイケースだし、かつてほど懲罰的ではない)。

 例えば韓国では児童に対する性犯罪者については名前、年齢、住所、写真、犯行内容まですべて政府が保健福祉家族部を通じてネット上に公開される。量刑によってその期間は5年だったり、10年だったりするのだがアメリカと同様の制度下にある。

 日本でもこうしたデータベースの導入が検討されているが、韓国では2000年代からこうした制度を取り入れている。政治的思惑もあるとされる。政権交代のたびに逮捕者の条件が変わる。

 それはともかくとして歴代の大統領を次々と逮捕してきた国、朱子学の大義名分論では「人としてどうあるか」が厳しく問われる。どちらかといえば大乗仏教の「悪人正機」が根強い性善説の日本とは文化的背景が違う。いずれにせよ根っこは人治的だ。

 ゆえにパン・シヒョクはその姿を公の前に晒し、厳しく取り調べを受けた。報道によれば14時間とのことで、韓国警察はみっちり調べあげた上での取り調べだったということになる。

共にBTSはあった。あり続けた。それは事実

 ここではパン・シヒョクの容疑については措く。旧知のメディア関係者にも話を聞いたが「真っ黒」とのことで、私も同意見である。だからこその出頭、のちの裁判に向けた警察や検察に対する印象を良くするためでもあったのだろう。

 やはり、愛憎ばかりだ。

 それでもパン・シヒョクと共に、HYBEと共にBTSはあった。あり続けた。それは事実だから。

 かつてパン・シヒョクはこう言った。

 「私がBTSを創造した、と言うのは傲慢である」と。

 BTSデビュー時の負債もまたパン・シヒョクの度量と商才あればこそ乗り切った。

 「それが正しいと思ったから」とパン・シヒョクは語るが、今回の事件を鑑みれば「いまとなっては」と思われても仕方のない顛末となってしまった。

 思えばHYBE、傘下のADOR(NewJeansなど)前代表ミン・ヒジンとの騒動もあった。あったというかいまも裁判が続いている。

 マルチレーベルなのに幹部同士でこの体たらく、7月には同じくHYBE傘下のSOURCE MUSIC(LE SSERAFIMなど)では社員数名がBTSのグループ活動休止情報を悪用して資本市場法違反で有罪となった。

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この記事の著者
日野百草

1972年生まれ。日本ペンクラブ広報委員会委員。出版社勤務を経て国内外における社会問題、政治倫理を中心に執筆。大学院で芸術学を専攻、修士(芸術)、芸術修士(MFA)。文芸論、人物評伝および比較史におけるポップカルチャー、またフィギュアスケートなど舞踏芸術に関する論考も手掛ける。2018年、評論「『砲車』は戦争を賛美したか 長谷川素逝と戦争俳句」で日本詩歌句随筆評論協会賞奨励賞を受賞。著書『評伝 赤城さかえ 楸邨・波郷・兜太に愛された魂の俳人』他。

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