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なぜラウールはアイドルの中でも「唯一無二」の魅力を放っているのか…2025年夏ドラマのなかでも、ひときわ異彩を放っていた『愛の、がっこう。』で見せた怪演

 アイドルグループSnowManの躍進は止まるところを知らない。なかでも注目を集める目黒蓮の経済効果が話題を呼んでいる。7月からZoffのグローバルアンバサダーに目黒が就任し、テレビCMにてプロモーションを打ったところ、Zoff運営会社インターメスティックの8月の全店売上は前年比で2割も増加したという。

 その一方で、目黒以外にもひときわ人気を高めつつあるメンバーが、ラウールだ。2025年夏ドラマのなかでも、SNS上で頻繁に言及されたドラマ『愛の、がっこう。』で注目を集めた。なぜいま、ラウールの人気が沸騰しつつあるのか。ドラマウォッチャーの明日菜子氏がラウールの演技と来歴を分析したーー。

 みんかぶプレミアム連載「令和のアイドル ヒットの条件」

目次

2025年夏ドラマのなかでも、ひときわ異彩を放っていた『愛の、がっこう。』

 粒揃いだった2025年夏ドラマの中でも、高校教師とディスレクシアを抱えるホストの禁断の恋を描いた『愛の、がっこう。』(フジテレビ系)がひときわ異彩を放っていた。第1話〜第5話までの累計再生回数1100万回を突破し、TVerのお気に入り登録者数は約67万人を記録している。

 高校教師の愛実(木村文乃)は、ホストクラブに入り浸る女生徒を連れ戻すため、夜の歌舞伎町へ向かう。そこで出会ったのが、ホストのカヲル(ラウール)だ。立場も境遇も家庭環境も異なる二人だが、カヲルが学習障害を抱えていることを知り、読み書きを教え始める。ホスト寮の屋上で行われる二人きりの授業を重ねるうちに、愛実とカヲルは少しずつ惹かれ合ってゆく。最終回を迎えてしばらく経つが、どれだけ後ろ指をさされようとも揺るがず、常に相手の思いを尊重しつつも自分の愛を貫き通した愛実に、同世代の一人として、今は拍手を送りたい。……愛実、アンタはよくやったよ。

 フジテレビのドラマ『白い巨塔』『昼顔〜平日午後3時の恋人たち〜』で、世の中の視線を釘付けにした脚本家・井上由美子と演出家・西谷弘の黄金タッグが手がけた『愛の、がっこう。』。禁断の恋を主題にする上で、教師とホストという取り合わせは一見ベタな設定にも感じられるが、センセーショナルな物語を世に送りつづけてきた井上の嗅覚は凄まじく、インタビューで「禁断の恋でも、すぐに燃え上がり欲望にまかせて突っ走るのは、出会いの機会が減った令和には届きにくい気がする」と語っていたのが印象的だった。その狙い通り、『愛の、がっこう。』は今もなお、禁断のラブストーリーが世に受け入れられることを証明すると同時に、洗練された令和の純愛ドラマへと昇華していたのである。

現代社会に抑圧された男性の姿も巧みに描いていた

 『愛の、がっこう。』の主軸はもちろんラブストーリーにあるが、現代社会に抑圧された男性たちの三者三様な描写もおもしろかった。

 たとえば、大手企業の役員である愛実の父・誠治(酒向芳)は、出世街道を順調に歩んできた典型的なエリートだ。けれど家庭では、正論を盾にふるまう暴君であり、特に妻の早苗(筒井真理子)には威圧的に接していた。序盤で愛実から「コンプライアンス担当なのに大丈夫なの?」とツッコまれる場面があるのだが、その指摘を回収するかのように、終盤は部下からパワハラを訴えられ、自宅謹慎を余儀なくされてしまう。社会的信用を失い、自ら築いたはずの“家庭”という居場所でも弱みを見せられない誠治の姿は、胸に迫るものがあった。

残念過ぎる男性を演じさせたら中島歩の右に出る者はいない

 誠治が娘のために見繕ってきた結婚相手の川原(中島歩)も、メガバンク勤務のハイスペック男性だ。外見や肩書きは申し分ないのだが、とにかく口を開くたびに好感度が下がっていくので、頼むからこれ以上喋らないでほしいと、たびたびテレビの前で念じていた(残念すぎる男性を演じさせたら中島歩の右に出る者はいない)。特に「女性=自分のメンツを保つための道具」と思っている節があり、穏やかな語り口からはうっすら女性蔑視が滲む。さらに裏では人妻・雪乃(野波麻帆)をセフレとしてぞんざいに扱う姿も描かれ、誠治とはまた別の、支配的な男性として描かれていた。

 いくら彼らが生きづらさを抱えていたとしても、その行いを肯定することはできない。けれど、自分より弱い存在を杖にせず、周囲の協力を得ながらも己の力で立ち上がっていく結末には、どこかイマドキらしさがあった。従来のように「同性の職場仲間に励まされる」的な解決策ではなく、疎まれながらも愛実の友人・百々子(田中みな実)と正面からぶつかり、恋人の心を奪ったカヲルとも対峙することで、自らの在り方を見つめ直していく川原には、一歩先を行く男性像が感じられた。

 また、いわゆる“サレ”側の川原(中島歩)と、“シタ”側のカヲルに芽生えた奇妙な友情もおもしろかった。『昼顔』の三竿玲子プロデューサーと西谷弘が手がけた『あなたがしてくれなくても』(フジテレビ系)で、既婚者でありながら新名(岩田剛典)に心惹かれたみち(奈緒)と、妻の楓(田中みな実)が膝を突き合わせた最終回を想起させる。

ラウールの芝居とフォトジェニックな佇まいが、この稀有な物語を見事に成立させた

 誠治や川原のような男性たちの対極にいたのが、ラウール演じるホストのカヲルだ。若い男性たちが女性を“姫”と崇める煌びやかな空間は、日常を忘れさせてくれる夢のような場だ。だが、ホストはあくまで商売であり、女性たちが“客”であることに変わりはない。その裏では過剰な搾取や依存が問題視されているが、カヲルも例外ではなかった。出会った当初は、愛実を上客に育てようと目論んでいたものの、やがてその利害関係は消える。対等でありたい。違う世界に住んでいるからと、相手を理解することを諦めたくない。ただの「小川愛実」と「鷹森大雅」でいられたあの屋上は、社会から隔絶されたサンクチュアリのように映る。不均衡な世の中だからこそ、二人の関係性がかけがえのないものに感じたのかもしれない。

 なによりも、この寓話性を帯びた物語を成立させたのは、主演の木村とラウールの芝居だ。特にラウールは、実力主義の夜の世界で生き抜く強さと、実の母親から搾取される弱さという「カヲル」と「鷹森大雅」の相反する魅力を体現していた。その場にいるだけで画を成立させるフォトジェニックな佇まいは、どこかファンタジーを思わせる世界観と現実をつなぎとめる役割も果たしていたように思う。

「俳優ラウール」としての芝居の型が定まった『赤羽骨子』漫画的なセリフ回しにセンスを感じる名作

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この記事の著者
明日菜子

毎クール必ず25本以上視聴するドラマウォッチャー。『文春オンライン』『Real Sound』『映画ナタリー』『NiEW』などでドラマに関する記事を寄稿。

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