「ほとんどの知的労働がAIに奪われる未来」に東大医学部AIエンジニアが警鐘 わが子を“代替されない人材”にするための教育メソッドとは

生成AIの爆発的な進化は、「良い学校に入り、良い会社に就職すれば安泰」という親世代が信じてきた価値観を根底から覆した。かつての花形職業がAIに代替され、求められるスキルの定義が激変する未来が、すぐそこまで迫っている。
外資系企業でAIエンジニアとして勤務しながら、東大医学部にも在籍しているSaki氏は、このような時代にこそ中学受験はその真価を発揮すると語る。同氏に、「将来のキャリアからの逆算」という視点で中学受験を再定義し、未来を生き抜くための生存戦略を探っていただいた。全3回の第3回。みんかぶプレミアム特集「キャリアから考える中学受験」第3回。
目次
「ほとんどの知的労働がAIに奪われる未来」に備える方法
「雇われはオワコンになる」
この言葉は、決して大げさなものではありません。AIが人間の平均的な知的能力を凌駕する未来がすぐそこまで迫っている以上、多くの知的労働がAIに代替されるのは、避けられない流れです。多くの人間は、残念ながら「AI未満」のアウトプットしか出せない存在になります。そのとき、人間であることの価値はどこに見出されるのでしょうか。
AIにはできず、人間にしかできないこと。私は、これからの時代に求められる能力は、大きく2つの領域に集約されると考えています。
1つ目の領域は、人を動かす「リーダーシップ」と「コミュニケーション能力」。AIは、論理的に正しい答えを導き出すことは得意です。しかし、人間は正論だけでは動きません。むしろ、感情や共感、信頼といった非合理的な要素に大きく左右される生き物です。
わが子を“代替されない人材”にするための教育メソッド
AIが提示した完璧な戦略があったとしても、それを組織のメンバーに伝え、納得させ、モチベーションを高めて実行に導くのは、人間にしかできない仕事です。相手の表情を読み、場の空気を察し、時には熱く、時には冷静に語りかける。そうした人間的なコミュニケーションを通じて信頼関係を築き、人々をまとめ上げ、一つの方向に導いていく。これこそが「リーダーシップ」の本質です。
OpenAIのCEOであるサム・アルトマン氏も、AI時代に最も重要になるスキルとして、このリーダーシップを挙げています。テクノロジーの最先端にいる人物が、最終的に人間的な能力の重要性を説いているという事実は、非常に示唆に富んでいます。
単に知識が豊富なだけの「物知り」は、AIに代替されます。しかし、その知識を使い、人々を巻き込み、事を成し遂げるリーダーは、ますますその価値を高めていくでしょう。
AI時代の“勝ち組”に共通する意外なスキルセットとは
2つ目の領域は、世界に働きかける「物理的なスキル」です。前述の通り、AIは物理世界に直接干渉できません。ここに、人間の新たな価値の源泉があります。
その代表格が医師であることは述べましたが、他にも、例えば一流の料理人や職人、あるいは優れた理学療法士など、自らの身体や手を使って物理的な価値を生み出す職業は、AIによる代替が困難です。デジタル化が進めば進むほど、逆にこうしたフィジカルなスキルの希少価値は高まっていく可能性があります。
これからの子どもたちには、頭脳(デジタル)だけでなく、身体(フィジカル)を使ったスキルを磨くことの重要性も、伝えていく必要があるのかもしれません。
「AIで勉強は不要に」はとんでもない致命的な誤解だ
AIの登場により、こんな声が聞こえてくるようになりました。
「もう知識を詰め込む勉強は意味がない。答えは全部AIが教えてくれるのだから」
これは、一見もっともらしく聞こえますが、極めて危険で、致命的な誤解です。
確かに、知識そのものの価値は相対的に低下しました。しかし、それは「知識が不要になった」ことを意味しません。むしろ、AIという強力なツールを使いこなすための「土台」としての知識、すなわち「リテラシー」の重要性が、かつてなく高まっているのです。