メガバンク採用数減少でノースキル私文の生存戦略はどうなる…学歴活動家じゅそうけんが教える3つの「救い」大手BtoC、総合コンサル、手堅い公務員戦略のどれを選ぶか

かつて大手金融は、とりたてて特色のない早慶MARCH文系学生にとって最後の逃げ場だった。しかし、既にその「ノースキル私文卒の黄金ルート」も過去の幻想となりつつあるのが現実だ。
学歴活動家のじゅそうけん氏は「残念ながらノースキル私文卒には、高学歴層や専門スキルを持つ理系ほどの競争力はない」という。最近出版された著書『コスパで考える中学受験・大学受験』の売れ行きも絶好調な同氏に、そうした学生たちが、この時代を生き延びるための生存戦略を解説していただいたーー。みんかぶプレミアム特集「キャリアから考える中学受験の最強戦略」第8回。
目次
戦略①:大手BtoCの「量産型総合職」に滑り込む
かつてのメガバンクと同じ役割を担いはじめている業態の1つは、大手BtoC企業の総合職だ。その中でも、グローバルに競争力を高めているニトリは最有力候補だろう。就活人気では文系の筆頭ブランドになりつつあり、過去10年で採用数は3倍以上、直近では1,000人規模を新卒採用している。
小売と聞けばブラック・薄給のイメージもつきまとうが、待遇・休日日数は改善が続き、離職率も業界では異例の低さとなっている。店舗増のみならず事業領域も拡大中で、事業の伸びが採用増に直結し、近年の就活ランキングでも文系人気上位企業の常連だ。全国の店舗網を維持しながら、最近はデジタルトランスフォーメーション(DX)への投資も進んでいる。現場と本部を行き来できる総合職を数百人単位で抱える余地は依然として大きいだろう。
一方で、BtoC小売の雄であるファーストリテイリングは、採用規模こそ年間400人前後と大きいものの選抜が厳しい印象だ。採用の顔ぶれは早慶やMARCH上位層が目立ち、単なる大量採用ではないことは明白だ。現場での実績や語学力、企画力などを早い段階から示せる学生が優先される。総合職の採用は量・待遇ともに拡大しており、メガバンクの代わりとしてはややハードルが高いかもしれない。
大量採用の裏にある「代償」
ただ、いずれの企業でも、大量採用には代償がある。これら大手小売は全国展開という業態の性質上、国内外問わず勤務地ガチャがつきまとう。最初は地方が一般的で、数年おきの転勤も当たり前だ。勤務地を選ばない代わりに、総合職としての報酬・昇進機会のプレミアムが上乗せされる。実際に、地方勤務や現場を経なければ、商品企画や管理職として意思決定できるポジションにはなれないケースが大半だ。ニトリでは全員に1年半の店舗・物流研修を課し、イオンもまずは売場で数字を積むところから始まる。ノースキル私文が給与やネームバリューを得ようとするなら、生活の安定と引き換えに体力・転勤リスク・現場経験を差し出す覚悟が必要だ。
会社に踏まれるか、会社を踏み台にするか
ここを勘違いして有名なホワイト大手に安定入社、と盲信すると痛い目を見ることになる。さらに、大量採用ゆえに昇進競争は熾烈で、現場適応力やIT・データ活用の素養が差をつける。数を採る会社は業績の陰りとともに大量解雇となるリスクもあるし、店舗や現場で消耗したという声も珍しくない。逆に言えば、こうした代償を受け入れ、早い段階で実績やスキルを積んで踏み台にできるかが生存戦略になる。
戦略②:コンサル「大衆化」の波を利用する内資…急拡大する総合系・デジタル系の受け皿
10年前までは高嶺の花だったコンサル業界の急速な大衆化の波に乗るのも有効だろう。アクセンチュアやNRIなど、採用数は過去10年で2〜3倍に増加している。専門技術サービスという分野の性質もあり未だ旧帝・早慶優位とはなっているが、コンサル分野におけるMARCH新卒就職者数は2000人を上回り、なんと日東駒専でも1400人にのぼる。特に総合型外資ITコンサルのアクセンチュア、総合型内資コンサルのベイカレントなどは急速な拡大を見せており、過去10年で従業員数は4倍以上となった。
かつてのコンサルは経営層向けの戦略立案特化型であったが、戦略から実行までを一気通貫で支援する総合型・デジタル型が主流となっている。老朽化した基幹システムの刷新、DXによる業務革新などの経営課題は、実行力を伴った戦略でなければ実現できない。総合系ファームは、大量採用の若手人材による実行力を武器として事業規模を拡大してきた。戦略系ファームのような少数精鋭モデルとは異なり、人海戦術で稼働を確保するビジネス構造のため、採用の裾野は広い。MARCH・日東駒専クラスでも採用実績が目立つのはこのためだ。
こうした実行部隊で必要なのは、最低限の論理的思考力に加え、文系人材でも後天的にスキルを取得するための学習能力である。加えて、総合系や実行支援系は案件単価が比較的低く、プロジェクトの人数規模が大きいため、若手の参入障壁が低い。実際に、文系総合職出身者や営業職からのキャリア転換事例も珍しくない。