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「ダイソーvsセリア、アカチャンホンポvs西松屋」ベッドタウン化する北口の真裏では巨大喫煙所、消費者金融の看板、紋々だらけの銭湯が…“渾然一体タウン”の実態

「住みたい街」と評される人気のエリアにも、掘り起こしてみれば暗い歴史が転がっているものだ。そんな、言わなくてもいいことをあえて言ってみるという性格の悪い連載「住みたい街の真実」

 書き手を務めるのは『これでいいのか地域批評シリーズ』(マイクロマガジン社)で人気を博すルポライターの昼間たかし氏。第8回は、ファミリー層が集うベッドタウンといかがわしい繁華街が融合したあの街を歩く――。

目次

東京駅8分よりも熱い“デパート徒歩圏内”の衝撃

 かつての錦糸町は、危険な街だった。

 キャバクラや風俗店が軒を連ねて、客引きがあちこちに立っている、いかがわしさ全開の街。品川区の五反田と並んで「交通は便利だろうけど、治安がね」と、あまり住むところとはイメージされていなかった。それがどうだろう、今やJR錦糸町駅の北側から始まったベッドタウン化の波は、南口方面をも飲み込もうとしているのだ。

 錦糸町の魅力として、まず挙げられるのは交通の便。JR総武線と総武快速線、東京メトロ半蔵門線の駅がある。現時点で、東京駅へ8分、新宿駅へ25分、渋谷へ29分で乗り換えなしで到達できる。将来的には、東京メトロ有楽町線が延伸するので、隅田川の東にありながら、東京のコアなエリアにほぼ直結した駅となる。

 でも、錦糸町のホントの魅力はこれではない。住めばデパートが徒歩圏内になることである。実に、東京に住んでいて自宅から専門店が入るデパート的商業施設まで徒歩か自転車圏内という人は稀である。

 東京で「買い物に便利な街」といえば、大抵は駅前に複数のスーパーが出店している程度。少し充実していて蒲田や北千住程度である。この感覚、地方の県庁所在地規模の都市の市街地出身者だとよくわかる。

 筆者も大都会岡山の岡山駅から徒歩10分が実家なのだが、デパートや商業施設、商店街はすべて徒歩圏内。買い物のために、別の街に出かけるという感覚はなかった。その経験ゆえに、今でも東京は充実しているけれども、移動が面倒という感覚は拭えない。

 しかし、錦糸町には買い物のための移動の面倒くささが、まったくない。駅周辺にテルミナ、オリナス、アルカキット、丸井、パルコと商業施設は乱立している。ゆえに、日常的な買い物だけでなく、ちょっとした買い物まですべて徒歩圏内で解決する。家電量販店も、ヤマダデンキとヨドバシカメラ。100円ショップはダイソーとセリアなどなど……徒歩圏内に同業他社の店舗があるのもの特徴だ。

安くて腹いっぱいになれる店だらけな錦糸町。筆者はだいたい錦糸町に来るとこの店(筆者撮影)

「ダイソーvsセリア」「アカチャンホンポvs西松屋」の激戦区

 そんな買い物スポットの充実によって、ベッドタウン化が進行しているのは主にJR錦糸町駅の北口だ。まず駅を降りると、驚くのは高架下の駅ナカ店舗。北口ロータリーに面して、ZARAが堂々営業している。比較的低価格なブランドとはいえ、それでもZARAはけっこうなお値段。錦糸町に対するイメージをアップデートしていなければ、この時点で脳がバグるだろう。

駅前にZARAがあってもどことない土着の空気が流れているのが錦糸町の魅力だ(筆者撮影)

 とにかく、買い物の利便性は錦糸町に住みたくなる最大の要素といえる。核となる施設は、まずアルカキット錦糸町。アカチャンホンポや無印良品など核となる店舗は多様。コロナ前はアカチャンホンポでの中国人観光客のオムツ爆買いが名物だったが、最近は徐々に変化が起こっている。中でも特筆すべきは、今年9月のダイソーの拡張だ。この拡張で同社が展開する「DAISO」「Standard Products」「THREEPPY」の三つのブランドの複合店舗化、かつ都内最大級の面積が実現された。

 なにかとかゆいところに手が届くダイソーだが、ネットで話題になっているアイテムは品切れ入荷待ちになっていることが多々あるもの。ところが、この面積ゆえに在庫量も半端ない。東京在住者であれば、目当ての品を探して近所のダイソーをめぐるより、電車に乗って錦糸町まで出かけたほうがいいだろう。

 このダイソーに対抗するように、錦糸町にはセリアがオリナスとマルイに計2店舗出店している。消費者目線ではダイソーとセリアそれぞれに優れたアイテムがあるのは、よく知られているところ。近距離に同業他社が出店している利便性は高い。子供向け衣料品に関しても、アルカキットのアカチャンホンポとパルコの西松屋が競い合っているので、価格やデザインを比較しながら、ベストな選択ができる。子育て世代にとって、これほどありがたい環境はないだろう。

 それぞれの商業施設が消費者の心をつかむテナントで集客を図っている中で、アルカキットが優れているのは、大人向け衣料品だろう。ここにはなんとパシオスが入居。なぜか錦糸町、しまむらだけは空白地帯になっているので激安衣料品はパシオスの独占状態。レジには常に行列が出来ている。錦糸町を訪れるたびに探索している筆者だが、今回も部屋着によさそうな990円(税別)のパンツを購入した。駅前にはZARA、なのに隣のビルには激安衣料品という混沌こそが、錦糸町を豊かな街にしているといえる。

住みやすいだけじゃない錦糸町の「商売のうまさ」

 そんな北口で、もうひとつの集客施設になっているのがオリナス錦糸町。かつてのセイコー工場跡地を再開発したマンションと映画館もある複合施設。こちらは、まさに新住民によって栄える錦糸町の現在を反映した施設。なにしろ入ってすぐのところには、テスラの販売店。ようは、テスラを購入できるような階層の人々も、ここには暮らしていることを示しているわけだ。

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この記事の著者
昼間たかし

1975年岡山県岡山市生まれ。岡山県立金川高等学校・立正大学文学部史学科卒業。東京大学大学院情報学環教育部修了。知られざる文化や市井の人々の姿を描くため各地を旅しながら取材を続けている。著書に『コミックばかり読まないで』(イースト・プレス)『おもしろ県民論 岡山はすごいんじゃ!』(マイクロマガジン社)などがある。X(https://x.com/quadrumviro)

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