爆笑問題・太田光はなぜ誤解され続けるのか——立花孝志「担ぎ出し報道」に見るメディアの劣化…プロインタビュアー吉田豪が斬る
「爆笑問題・太田光」といえば、どんなイメージを持つだろうか。「言ってはいけないことを言ってしまう」「政治に首を突っ込みすぎる」「炎上体質」といったレッテルを貼られることも多い。最近では、立花孝志をめぐるネット記事で“担ぎ出した側”のように扱われ、再び話題の中心に置かれる場面もあったが、プロインタビュアー・吉田豪氏は「それは本質を見誤っている」と語る。本当の太田光とは、どういう存在なのか。過去の言動や発言の文脈をひもときながら解き明かしていく。
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文脈を削って作られた「三悪人」フレーム
この前、ちょっとどうかなと思ったニュースがあったんですよ。日刊ゲンダイDIGITALで11月14日に配信された「立花孝志容疑者を”担ぎ出した”とやり玉に…中田敦彦、ホリエモン、太田光のスタンスと逃げ腰に批判殺到」という記事なんですけど、ホリエモンとオリラジ・中田あっちゃんと並んで、爆笑問題・太田さんも“立花孝志を担ぎ出してきた悪の代表格”みたいな感じで槍玉に挙げられちゃってるから、「いや、ここに太田さんを並べるのは雑すぎるでしょ!」ってボクはTwitter(現X)で即座に反論したんです。
というのも、ホリエモンは立花孝志と“ホリエモン新党”を作るぐらい、がっつりタッグを組んで常々絶賛していたし、あっちゃんも動画とかを見ればわかるけど、あの時期の立花孝志を明確に評価して持ち上げていたじゃないですか。じゃあ太田光さんはどんなことを言ったのかっていうと、この記事だと「ラジオ番組やサンデージャポンなどで『ああいうキャラが出てきたのは時代』という趣旨の、立花容疑者を面白がる発言をたびたびしていました」って、すごい薄っぺらい情報しかなかったんですよ。「ああいうキャラが出てきたのは時代」っていうのは全然持ち上げてないし、おもしろがってもいないじゃないですか。この時点で「あの人はすごい」的なことを言っていた他の2人とは明確に違うんです。
切り抜き報道が作った、太田光の虚像
そんなことをTwitterで書いたら、リプライとか引用とかでいろんな意見が飛んできて、詳しく説明する羽目になったんですけど、この説明がまた全然伝わらないんですよ。基礎知識というか前提が違いすぎて、ラジオ『爆笑問題カーボーイ』のリスナーとか太田さんの本を読んでいる人とかは「そう、そうなんです! 説明してくれてありがとうございます!」って言ってくれるんですけど、『サンデー・ジャポン』しか見てない人とか、その切り抜き動画しか見てない人とか、それを発端としたネットニュースしか見ていない人とかは「何を言ってるんだ!」とか反論してきて、「お前、太田光代と仲いいらしいからネット工作を頼まれたんだな!」なんて言う人まで出てきちゃった。これは、太田光という人がどういう人なのか、その前提をちゃんと説明しないと話にならないし、説明したところでおそらく永遠に噛み合わないんだろうなってことに気づいたんですよ。
それでも、あえて説明してみます。そもそも、太田さんって立花孝志を「持ち上げてきた人」どころか、かなり早い段階でちゃんと批判していた側なんですよね。2019年、TOKYO MX「5時に夢中!」で立花孝志についてコメントを求められたマツコ・デラックスさんが「今のままだと、ただ気持ち悪い人たち」とか言ったことに激怒して、MXのスタジオ前で抗議活動をしたり、損害賠償を求めて訴えたり(その後、棄却)したことがあったじゃないですか。あのとき、テレビの世界としては、もう完全に「立花孝志には触れないでおこう」って空気になってたんですよ。下手に触れたら厄介だってことでマツコさんもノーコメントで済ませて、誰もがスルーする流れだった。
「いじっちゃいけない空気」にこそ突っ込む人
そんな中で、あえて火中の栗を拾いに行って、真正面から「許さない」って言ってたのが太田さんだったんですよ。「カメラ向けて、突撃しておとしめて。完全にやってることヤクザだよ。あんなんやってたら信用できないよ」とか、ラジオでかなりの時間を使って批判して。でも、立花孝志は「太田光には数字がないから。数字を持ってない人とイチイチやっている時間はない」と切り捨てて、その言い草に対しても「傷ついた!」って絡んでいく流れがまずあったんですよね。
こういう発言はあまりにもリスクが高いし、本人にとっても何の得にもならない。でも、太田さんって、そういう“タブーな空気”が生まれると、逆にそこをいじらずにはいられなくなっちゃう人なんですよ。テレビ的に「いじっちゃいけない」「近づかないほうがいい」ってなった瞬間に、「いや、それはおかしいでしょ!」って自分から突っ込んでいく。そういうことをずっと繰り返してきたんです。ジャニーズ問題もそうだし、松本人志騒動もそう。生放送でそういうことをいじって「よくやった!」と言われることもあるけれど、女性にこういうことを言っちゃいけないとか、子役にこういうことを言っちゃいけないとか、政治家にこういうことを言っちゃいけないとか、そういうタブーは積極的に破りに行くから、「あいつは失礼だ!」と言われることも多いんですよ。
おもしろがっていない。タブーにしていないだけ
そして、そんな芸風なのに叩かれたらちゃんとヘコむし、事務所の代表で妻でもある太田光代社長からもしょっちゅう怒られるし、ヘコんでもまだ懲りずにタブーをいじる。反省して「こういう相手をいじるのはやめよう」ってなったら自分の中でまた新たなタブーを作ることになっちゃうから、やり続けるしかないんでしょうね。
太田さん、つい最近まで「NHKをぶっ壊〜す!」とか連呼してたから「立花孝志を面白がってただろ!」とも言われてたんですけど、それもテレビ業界的にタブーになっている立花孝志のことをいじらずにはいられなかったってことなんだと思います。「人が死んでるようなことをギャグにするのはどうかと思う」って批判については確かにそうなんですよ。でも、これはやっぱり「おもしろがって持ち上げた」とは確実に違って、「批判した上で、タブーにしないようにした」が正解のはずなんです。