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晴海・豊洲とは決定的に違う…陳腐なタワマン街と一線を画す湾岸の異端児「勝どき」の生活実態「7つの階層が混ざり合う街」

「住みたい街」と評される人気のエリアにも、掘り起こしてみれば暗い歴史が転がっているものだ。そんな、言わなくてもいいことをあえて言ってみるという性格の悪い連載「住みたい街の真実」

 書き手を務めるのは『これでいいのか地域批評シリーズ』(マイクロマガジン社)で人気を博すルポライターの昼間たかし氏。第11回は、「湾岸エリアのひとつ」と見なされがちだが、実はかなり個性派な街・勝どきを歩く。

目次

なぜこの街だけが「カオス」なのか?

 東京都中央区勝どき。晴海や豊洲と並ぶ湾岸のタワマンエリアだと思われている街である。かつては倉庫街として知られた街は、時代の変化と共に大きく変わった。都営大江戸線の開通と共に、倉庫街はタワマンへと変わり、多くの富裕層が移住してきた。しかし、その風景は隣の晴海とは大きく異なる。勝どきは単なるタワマンエリアとは、まったく違う街なのである。

 さて、最初に今回扱う「勝どき」はいわゆる「2号地」である。要はほぼ正方形の1〜4丁目エリアのことである。このエリアは明治時代の埋め立てで月島1号地に続いて完成した月島2号地と呼ばれていた部分。その先の勝どき5〜6丁目は、後の時代に埋め立てられた三号地。2号地との間には水路があるし、豊海町と合体しているので微妙に雰囲気が異なる。

一応、橋の向こうのタワマンまでが勝どき……なのだが、地元民はたいてい豊海扱い

 この勝どきが勝どきとして認識されるようになったのは1965年に住居表示で「勝どき」という町名ができてから。それまでは、勝鬨橋はあっても月島の一部として扱われていた。その名残で中央区の区内区分では勝どきは晴海と共に月島地区に含まれる。

 ゆえに長らく月島と一体化していた勝どきの歴史が明確に始まったのは、2000年に都営大江戸線の勝どき駅が開業してから。この時に再開発でタワマンも建設され、新住民が流入。ようやく湾岸エリアとしての勝どきの歴史が始まったという流れである。

タワマンタウン勝どきに存在する7つの階層

 それまでは、倉庫や長屋、小規模な工場などが軒を連ねる純然たる下町というのが、勝どきの風景であった。これが、戦前に開発計画が頓挫して以降、戦後は団地と倉庫のほかは広大な空き地になっていた晴海との大きな違いだ。

昭和から残る長屋がそのまま飲食店として活用されている風景が勝どきの当たり前だ

 なにせ、2025年までは「月島パン店」という、売っているのは駄菓子だけという昭和な風景の店が残っていたくらいに歴史は濃い(駄菓子屋機能は現在、喫茶店になっている)。こうした事情もあり、勝どきは実に多彩な人々が混在した土地になっている。

「うちのおばあさんが嫁いできた時は葦の原しかなかった」というレベルの古参、終戦直後に都有地を不法占拠して住み始めた家系の後裔、昭和から平成前期にかけてのマンション住民、都営住宅民、平成後期に中層マンションを購入した層、そしてタワマン住民。

 このタワマン住民も一括りにはできない。億を超える物件を現金で購入した富裕層もいれば、賃貸で入居している層、等価交換で地権者から転じた住民もいる。その地権者も、くたびれたマンションが終の住処と思っていたら、再開発でタワマンへ引っ越すことになった人も多い。

デニーズのあったマンションは再開発。デニーズ以前は高級フランス料理屋だった

 つまり、同じ勝どきに住んでいても、住宅の種類だけで最低でも7つの階層が存在する。晴海の団地住民・タワマン・晴海フラッグ・UR民よりも属性がはるかに複雑だ。だからこそ、この街は複雑で、時に不思議な光景を生み出しているのだ。

駅直結のビルに潜む、昭和の残像と大陸の熱気

 都営大江戸線勝どき駅を出ると、まず目に入るのがA1出口方面の勝どきサンスクエア。再開発で最初期に完成したこの建物は、駅に直結していて地下にスーパー・文化堂が入る便利な立地だ。

レトロな雰囲気のホテル・東京ビュック。けっこうコアな飲食店が入る名物スポット

 しかし、この建物の真価は、そんな表面的な利便性ではない。入居テナントの絶妙なカオス感にこそある。

 地上階には、再開発前から続く「パン・ムラカミ」が朝7時から営業。その隣には八百屋。ラーメン屋があるかと思えば焼肉屋。新しいビルなのに、やたらと地味で生活感が濃厚なのだ。まるで昭和の商店街をそのままビルに詰め込んだような雰囲気である。

 極めつけは最近、地下に開業した「京和商店」。上野の中国・韓国食材で知られる店が、なぜか勝どきに出店したのである。火鍋の素から中華調味料、冷凍餃子まで、品揃えは本格的。タワマンの住民が、家で火鍋パーティーを開くために通っているのか、それとも古くからの中国系住民のためなのか。おそらく両方だろう。

 ちなみに、それほど多言語が目立つわけではないが、外国にルーツを持つ住民も多いのか大抵のスーパーは火鍋の素をはじめエスニック食材のラインナップが充実しているのも勝どきの特徴だ。

仁義なきスーパー四つ巴の結末

 さて、そのスーパーも住民の増加と共に数を増している。

 長らく勝どきでスーパーといえば、勝どき交差点を挟んで対峙する二強だった。勝どきサンスクエア地下の文化堂と、勝どきビュータワーのデリド。この二店が縄張りを分け合っていた時代が続いた。流れが変わったのは2017年。多数のクリニックが入居するAIP勝どき駅前ビルに、東武ストアが新規参入したのである。デリドのすぐ目と鼻の先だ。「これはデリドが潰されるのでは」という予想もあったが、蓋を開けてみれば両者とも変わらず繁盛。客の奪い合いは起きなかった。

 続いて、2023年、巨大タワマン・パークタワー勝どきの完成と共にライフが開業。これで勝どき駅周辺には4つのスーパーが林立することになった。普通なら過当競争で共倒れになりそうなものだが、どの店も押されている様子はない。どうやら、勝どきの住民数を考えると、スーパーはまだまだ増えても構わないという状況らしい。タワマンが建つたびに数千人単位で人口が増える街では、スーパーもまた数千人単位の胃袋を相手にしなければならない。4店舗あっても、まだ足りないくらいなのだろう。

 さて、その4店舗なのだが、正直なところ品揃えは一長一短である。

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この記事の著者
昼間たかし

1975年岡山県岡山市生まれ。岡山県立金川高等学校・立正大学文学部史学科卒業。東京大学大学院情報学環教育部修了。知られざる文化や市井の人々の姿を描くため各地を旅しながら取材を続けている。著書に『コミックばかり読まないで』(イースト・プレス)『おもしろ県民論 岡山はすごいんじゃ!』(マイクロマガジン社)などがある。X(https://x.com/quadrumviro)

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