タイプロはなぜ熱狂を巻き起こし続けているのか…大ヒット新書『考察する若者たち』のキーワード「報われ消費」からこの熱狂を紐解く
2025年、最も注目を浴びたアイドルグループは「timelesz project」から生まれた新生・timeleszであろう。そして驚くのは、「社会現象」とまで呼ばれたその熱狂の持続だ。ドラマウォッチャーの明日菜子氏が、この現象を「報われ消費」というキーワードから紐解くーー。
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タイプロの熱狂に包まれた2025年
2025年は、実にいろいろあった。STARTO ENTERTAINMENT所属のアイドルについて語る本連載にちなんで振り返ってみると、長年愛されていたグループの解散やメンバーの脱退など、ファンにとっては辛いニュースが続いた一年でもあった。
そんな2025年、良くも悪くも話題の中心にいたのは、「timelesz project」から生まれた新生・timeleszである。オーディション由来のアイドルグループが、番組放送時と同じ熱量を保ちつづけることがいかに難しいかは、本連載の第二回でも触れた通りだが、一過性の熱狂に止まらなかったtimeleszは、あらためてすごい。初のCDシングル『Steal The Show/レシピ』は、オリコン初週売上51.3万枚を記録。年末年始に跨る2大ドーム公演でも、チケットが取れない“ ticketless(チケットレス)”状態を嘆くファンが多かった。グループの冠番組も2本あり、さらに年明けからは、Netflix『timelesz project -REAL-』の配信が始まっている。
しかし、その一方で、彼らに対する風当たりは厳しさを増すばかりだ。私はSexy Zoneを応援していた一ファンなのだが、タイプロ中から現在に至るまで、熱狂と共に厳しい声が飛び交うことも“売れている”証なのだと思うようにしていた。そのざわめきこそが、人気の証左なのだと。
だが、彼らを取り巻く状況はあまりにもひどい。他のアイドルグループが世に羽ばたいていった過程にも、似たようなことはあったかもしれないが、真偽不明の情報が都合よく切り取られ、本来の文脈をすっ飛ばした陰謀論が蔓延るSNS全盛期の今、その矛先を向けられている彼らの現状は“売れるための通過儀礼”という言葉では片付けられない。
大ヒット新書『考察する若者たち』のキーワード「報われ消費」
今回は、タイプロ終了から一年が経とうとしているtimeleszについて考えてみたいのだが、その前に、紹介しておきたい一冊がある。2025年に発売された『考察する若者たち』(PHP新書)だ。『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(集英社新書)で「新書大賞2025」を史上最年少で受賞した文芸評論家・三宅香帆が、考察ブームに沸く令和の若者たちを取り巻く現象を綴っている。
なぜ「考察」はこれほど支持されるのか。それは、ただ作品を楽しむよりも、解釈の“正解”を当てたら、なにかを得られた感覚になれるから。その根底には、「報われたい」という若者たちの切実な想いがあるのではないか。こうした意味のある時間を求める若い世代の消費行動を、『考察する若者たち』では「報われ消費」と名付けており、その影響は昨今のヒットコンテンツや推し活にも広く及んでいると指摘している。
なぜ若者たちの間で「考察」が支持されているのか。それは、解釈の“正解”に辿り着いたとき、なにかを得られたような感覚を味わえるからだ。若者にとっては、ただ作品を楽しむことよりもずっと意味のある行為で、その根底には「報われたい」という切実な想いがあるのではないか。
このような意味のある時間を求める若い世代の消費行動を、三宅香帆は「報われ消費」と呼んでいる。さらにその影響は、昨今のヒットコンテンツや推し活にまで、広く及ぶと指摘しているのだ。
「報われ消費」の弊害を受けているtimelesz。一方でその恩恵を受けているのは、タイプロに落ちた候補生たち
この言葉を目にしたとき、真っ先に私はtimeleszのことを思い浮かべた。なぜなら、いま最も「報われ消費」の弊害を受けているのはtimeleszであり、「報われ消費」の恩恵を受けているのは、タイプロに落ちた候補生たちだからである。