けんすう氏が「愛用AIツール」と具体的な活用法を告白 AI普及で激変する“Webメディア業界”のリアルな現状と未来予測も…「低コストで勝負していたところは辛い」

AIの進化が止まらない。知的生産のあり方が問われ始めている中、インターネット黎明期から業界の最前線を走るけんすう氏は、「AIの衝撃は体感でネット黎明期の10倍くらい」とし、人間の聖域だった「思考」さえもコモディティ化するのではないかと語る。
本稿では、同氏が肌で感じる「思考のアウトソーシング」というパラダイムシフトの正体や、AI時代に生き残るための生存戦略、愛用する具体的なAIツールに至るまで、激変する世界を楽しみながら勝ち抜くための知見を語っていただいた。全5回の第3回。みんかぶプレミアム特集「AIで稼ぐ『シン・仕事術』」第13回。
目次
「ちゃんと考えてから作る」は時代遅れに? “考える前に動く人”が勝つ理由
――インターネット業界全体で見たときに、今後AIでどうなっていくのか、未来予測的なところをお伺いできますか?
そうですね。やっぱり僕が感じているのは、「作るコスト」と「試すコスト」が劇的に下がっているということです。
何かサービスを作ろうと思った時に、今までだったらちゃんと企画書を書いて、調査して、ワイヤーフレームというサイト設計図を作って、デザインを作って、エンジニアにコーディングしてもらって……などのプロセスがあったんです。これらをすべてやってから、ようやく世に出してユーザーに試してもらう、ということができ他のですね。
しかし、これをちゃんとやっていると3ヶ月とかかかってしまうわけですし、コストが凄まじい。なので、より「ちゃんと企画書と調査をしないといけない」となりますし、失敗できないので、ちゃんと作るようになり、もっとコストがかかる、となっていきました。
しかし、今はもうパッと作って、触ってみる、というのをやるのは、1時間ぐらいでできてしまう。下手をしたら、会議中に作って、お客さんにもすぐ試してもらう、といったことができてしまう。
そうなると、実は意外と事前の「企画」とかがいらなくなる。アウトプットで会話ができるので、とにかく話が早いんです。
企画も、ワイヤー作成も、あとはデザインやサイト内の文章までも全部AIに任せて作れてしまうのは大きな変化ですね。
例えば投稿系のサービスを作っているときに、「いいね機能が欲しい」とか、「この人をフォローする」みたいな、良くある当たり前の機能だけど、作ろうと思うとまあまあ面倒くさいものが、全部さっとできてしまうわけです。
――とにかく作るコスト、試すコストが下がったから、とりあえず作ってみて、試してダメなら撤退して、という感じになっていくんでしょうか。
そうですね。やっぱり「やってみないとわからない」という側面がすごくあって。どんなに事前に調べても、やってみたらめっちゃウケたとか、めっちゃウケないとかあるんですけど。
今までは試すコストが高すぎて「ちゃんと考えてから作る」必要があったのが、今は「そんなに考えなくても作れるから大丈夫」になっている、というのはすごくありますね。
AIで“メディア勢力図”どうなる 「コタツ記事」は終焉?
――Webメディア業界、特にテキストメディアについてもお聞きしたいのですが、AIによってどう変わっていくとお考えですか?
ブランドがあるところは、逆に結構強くなってくると思います。新興メディアは辛いですが、すでにブランドがあるメディアはむしろ「美味しい」状況になるでしょう。
例えば、編集者が1日に5本インタビューを入れても、AIを使えばその5本をその日のうちに記事化して出せる、となってくるとめちゃくちゃ強くなりますよね。それに、ホリエモンに聞いても、ひろゆきさんに聞いても「あのメディアなら出るよ」と言ってもらえるような媒体だったら、すごく強い。
かつ、それが5万文字の長編インタビューだとしても、そんなにコストが変わらずに書けてしまうなら「じゃあやろうか」となるので。そういうハイクオリティ側で頑張っているところは有利だと思いますね。
一方で、逆に低コストで勝負していたところは辛いでしょうね。いわゆる「コタツ記事」のようなものは、AIで代替されてしまいますから。
――そこもやはり格差というか、元々持ってる人は活用できるけど、新しい人たちには厳しいことになりそうですね。
それはすごくあると思いますね。だから日本経済新聞などは、今まではコスト的にこれしかインタビューできなかったのが、作成コストがそんなにかからないのであれば、「新興ベンチャー全員にインタビューして『30人に聞いてみた』という企画をやりました」みたいなことが可能になる。そうなると、日経新聞にとっては美味しいですよね。
でも逆に、今までその「日経の隙間を狙わざるを得なかったメディアさん」などは、もうどんどん日経新聞に勝てなくなっていく……といったことは起こりそうだなと思います。