「二世タレントにハズレなし」木村一八、真木蔵人、徳光正行…吉田豪が語る「過酷な宿命」への慈愛
シーナ&ザ・ロケッツの鮎川誠の娘・鮎川陽子が選挙期間中の移民政策に関する投稿で炎上し、岸谷五朗の息子・岸谷蘭丸が中道改革を掲げるYouTube番組に「Z世代代表」として登場し選挙戦を盛り上げるなど、最近の選挙前後で二世タレントの政治的発信が相次いで注目を集めている。さらには市村正親の息子の飲酒・喫煙疑惑など、スキャンダルも含めて二世タレントの話題に事欠かない。世間的には「親の七光りで甘い汁を吸って…」と叩かれがちな彼らだが、プロインタビュアーの吉田豪氏は、全く別の視点で彼らを見つめている。
みんかぶプレミアム連載「吉田豪の月イチ気になる話。」
目次
「二世タレントにハズレなし」という持論
ボクは昔から二世タレントが大好物なんですよ。昔から「二世タレントにハズレなし」っていう持論があって。これは良い意味でも悪い意味でもなんですけど、二世として生まれた以上、彼らはもう過酷な道を歩まざるを得ないんですよね。
普通の人では絶対に経験しないようなことを、子供の頃から嫌でも経験させられるじゃないですか。父親が子供でも知ってるレベルの超有名人だったりすると、学校では死ぬほどいじられたり笑われたり迫害されたりするのが当たり前。自分も自我が芽生える前からメディアに露出してたりするから、「お前、調子に乗ってんだろ!」とか「金持ってんだろ?」とか絡まれるのが日常になるはずなんですよ。そこで「なめられちゃいけない」とやり返す方向にいくのか、お金で解決しようとするのか、あるいは道化を演じて乗り切るのか……。
どの道を選ぶにせよ、何も考えず呑気に生きていられるような人生じゃないんです。かなり早い段階で、死ぬほどめんどくさい選択を迫られる。だからこそ、嫌でも面白い人生になりがちってことなんですよ。犯罪に走る人もいれば、そこから逃れてなんとも言えない味わいが出てくる人もいる。ちなみにボクのインタビュー集には前科がある人と二世が大勢登場していて、その両方を兼ねている人もいるんですけど、それもしょうがない環境なんだと思ってますね。
横山やすしの「嘘は絶対付くな」という教育が木村一八をグレさせた
これまで多くの二世の方を取材してきましたけど、例えば木村一八さんなんて、もう「悪の道に走るのもしょうがない」っていう理由をご本人から聞いて納得しました。お父さんの横山やすしさんは本当に独特な教育論を持っていて、一般的なルールとはちょっと違うんですよね、「煙草を吸うなら女の乳を吸え」とか、そんなことばかり教わってきたみたいで。そんな流れで一八さんには、「どんな悪いことをしてもいいけど、嘘だけはつくな」って言い聞かせていたらしいんです。
一八さんはそれを忠実に守って生きてきたのに、ある日、お父さんに「ちょっと出かけよう」って言われて付いていったら、愛人に会いに行くためのカモフラージュに使われた(笑)。そのままホテルの部屋に連れて行かれて、横のベッドで事におよぶ親を見せられて、帰り際に「一八、口にチャックやで」って言われた。そこでお母さんに「どこ行ってたの?」と聞かれて、一八さんは人生で初めての嘘をつくわけです。
「嘘をつくな」と常々言っていた親が、自分に嘘を強要した。世の中でいちばん悪いと教えられてきたことを無理矢理やらされたから、そこで「お父さん、何やねん」となってグレ始めたってことなんですよね。その後、お父さんがタクシーの運転手さんと何度もトラブルを起こしてきたように、一八さんもタクシーの運転手に暴力を振るって入院させる事件を起こすわけですけど、やすしさんはそのお見舞いに行った先で、いきなり病院の壁に立ちションしていたのが忘れられないです。
そもそも「お前、やすしの息子なんだろ? メガネメガネやってみろよ」的ないじられ方をずっとしてきたりもしたはずなので、その環境でまっすぐ育つのは無理だったと思いますよ。でも、普通じゃない経験を相当積んできた人だし、お父さんの血もあるから、しゃべりも上手いし人間的な深みもあって、ボクはすごい好きな人ですね。