高校中退で「一族の恥」と呼ばれた医者の息子がブックオフで知った“人生をやり直す方法”
教育ジャーナリストの濱井正吾さんが、「学歴ロンダリング」をして、人生が好転した人を取材する連載「濱井正吾 人生逆転の学歴ロンダリング」。
今回は高校を中退し、軌道工の仕事をしながら独学で医学部受験を決意。3浪を経て、島根大学医学部に合格した前田朋之さんにお話を伺いました。全2回の第1回。
目次
医者の家庭に生まれエースに上り詰める。順風満帆だった少年時代
前田朋之さんは鳥取県に、父親が医者、母親が専業主婦の家庭に生まれました。
「父親は結構公務員などのしっかり目の家系の出身なんですが、その中で突然変異的に医者になったんです。母親は土建屋とか土木系の会社をしていた家系から生まれまして、僕はその間に生まれました」
小学校くらいまでは元気な子どもで、普通に過ごしていた前田さん。野球をしっかりやっており、ここでの経験が将来につながる大きな成功体験となったようです。
「今プロ野球選手で活躍されているような先輩がいた小学校だったので、その先輩に憧れてピッチャーを目指して、エースをもぎ取ったのが人生最初の成功体験でした。僕は肩は強かったのですが、ピッチャーになるくらいのセンスはなかったと思います。でも、どうしてもエースピッチャーになりたくて、毎日走ったり筋トレしたり、本とか読んだりコーチの教えを愚直に聞いたりして、エースになることができました」
野球で頑張る一方で、小学校の時は勉強面でも上位の方でした。
「習い事としてKUMONをやらせてもらっていたので、あまり勉強で困った記憶は小6まではないです。毎回全部100点を取れたわけではないですが、勉強面では特に苦労せずに過ごせたかなと思います」
小5で受けたいじめという衝撃。自らレールを外した思春期
こうして文武両道の状態で公立中学校に進んだ前田さん。しかし、中学に入ってからは野球も勉強もやめてしまったようです。
「野球は中1の夏でやめちゃったんです。野球をなんとなくやっていてもプロにはなれないと考えていたので、やる意味がないのかなと思っちゃって。それよりは何も考えず遊んだりした方が楽しかったんですね。勉強面でも、小学校6年生までは普通に授業を受けたりして過ごしていたと思いますが、中1の夏からは勉強はやっていません。だから転がり落ちるように成績が落ちました」
そうしたきっかけは、小学校高学年の時に辛い経験をしたことが大きく影響していました。
「自分のYouTubeでは突っ込んだプライベートの話しているので見て欲しいんですが、ざっくり言うと、小5〜6の時くらいにいじめを受けるような体験があったんです。野球や勉強がそこそこできてもこういった目に合うんだなというのが自分にとっては大きな衝撃で。今後はそういった対象に絶対にならないような存在になりたくて、レールを外れてきました。中1くらいからは、野球をやめて勉強も一切しなくなりました」
こうして野球も勉強もやめて仲間とつるんで遊び回る生活を始めた前田さん。中学卒業後は、名前を書けば合格をもらえるような高校に入っても、結局目的を見出せずに高1の夏には辞めてしまいました。仲間とつるんで遊ぶ生活は、16〜17歳まで続きました。そこで大きな転機が訪れます。
「高校を辞めて、プラプラと遊んでいたらお金がなくなりました。学校に行っていないので両親からお金もらうこともなくなっていましたし、そろそろ職に就こうかということで、地元の先輩の紹介で隣の県である島根県に引越し、軌道工という線路作業に就きました」
住み込みでこの軌道工の仕事をするようになってから、彼の中で大きく意識が変わったと語ります。
「小学校の時は野球で上に行きたいと思っていました。中学校の時は野球は意味ないなと判断してしまって、直接的に力があるようなポジションに行きたいと思った。でも、社会に出ると、今度は直接的に力を持つことに何の意味もないんだなと感じました。この時にお金のない時期も経験して、そこから社会の中で自分がどう立ち回っていくか、考えるようになりました」
「勉強すれば差別化できる」と気づいた18歳。宅建取得から始まった逆転戦略
前田さんは「医学部に行くまではいくつかのステップがあった」と当時を振り返ります。
「最初は、軌道工の仕事をする中でとにかくがむしゃらに頑張りました。提供できるものが体力と若さだけだったので、めちゃくちゃ頑張ったんです」すると、周囲の方が『こいつただのガキじゃないな、あいつ結構いいよ』という雰囲気になってきて、仕事をどんどん振っていただいたりするようになりました。そうする中で会社の、不動産事業部から『宅建の資格を取ってくれたらこっちで働くのOKだよ』と声をかけていただいたので『取ります』と2つ返事をしました」
宅建の資格勉強は、前田さんにとっては久しぶりの机に向かっての勉強。しかし社会に出てから勉強をする体験は、意外にもとても楽しかったそうです。
「今までが勉強してなさすぎだったので、逆に勉強が面白いと感じたんです。基本的にみんな勉強嫌いだから、僕がしっかり勉強したら差別化できると思って。高3相当の18歳の10月に資格を取りました。その過程にもいろいろと考えることがあり、どんどん視野が広がっていきました」