売上50万枚超えのtimeleszと「落選組」の異常な躍進、エンタメ経済を支配する“報われ消費”の正体とは
2025年、エンタメシーンを席巻した「timelesz project」。新体制第1弾で50万枚を突破し、2大ドーム公演を成功させた彼らの快進撃の傍らで、いま「落選した候補生」たちの異例の躍進が注目を集めている。なぜ選ばれなかった彼らが、大手CM起用や地上波出演という「成功」を掴み取れているのか。ドラマウォッチャーの明日菜子氏が、&TEAMなどの成功例や事務所のプロモーション力というシビアな現実を交え、社会全体に広がる「報われ消費」の真価を紐解く――。
目次
なぜ「選ばれなかった候補生」たちが脚光を浴びるのか?敗者が即戦力として市場を席巻する“報われ消費”の謎
2025年のエンタメシーンを席巻したtimelesz。STARTO ENTERTAINMENT所属の現役アイドルが自ら新メンバーを選ぶ「timelesz project」(Netflix)は、一躍社会現象となった。新体制第1弾となったCDアルバム『FAM』とCDシングル『Steal The Show/レシピ』はいずれも売り上げ50万枚を突破。
今年の冬には、東京ドームと京セラドーム大阪で、早くも2大ドーム公演を成功させた。タイプロ直後から密着した『timelesz project -REAL-』(Netflix)は、国民的アイドルとはなにかを模索しつづける、等身大な彼らの“REAL”を映し出すドキュメンタリー番組だ。
新体制発足から怒涛の快進撃を続ける一方で、オーディション中から向けられてきた心ない声は、いまなお止む気配がない。その理由を考えていたとき、三宅香帆著『考察する若者たち』(PHP新書)に登場する“報われ消費”という言葉に、私はひとつのヒントを得た気がした。
デビューを目指すジュニアを応援するファンや、事務所の伝統を愛するファンからの反発があることは大前提として、タイプロを熱心に追いかけてきたにもかかわらず、いざメンバーが決まり、最終的にtimeleszが選んだ「正解」(合格者)と自分の中の「正解」(推し)が一致しなかったことにショックを受けたのではないか。推しの練習生が加入しなかったことで、自らがタイプロに費やしてきた時間や労力までもが“報われなかった”と感じる一部の人々が、timeleszに対して攻撃的になっているのではないか――というのが前回立てた仮説だ。
その一方で、“報われ消費”の恩恵を受けているように見えるのが、最終審査まで進んだ本多大夢と浜川路己によるユニット・ROIROMや、西山智樹と前田大輔を中心に結成されたホリプロのボーイズグループ・TAGRIGHT、ソロアーティストとして活動する鈴木凌などの元タイプロ候補生たちだ(ちなみに浅井乃我はSTARTO社のジュニアに電撃加入!)。
アンバサダー起用が相次ぐ落選組の「異常事態」、モー娘。以来の稀有な成功例と最終回で起きる脱落のジンクス
timeleszへの加入は叶わなかったものの、彼らの躍進ぶりも目覚ましい。タイプロ終了直後から各ブランドのアンバサダーに次々と起用され、バラエティー番組への出演も相次いでいる。日韓問わずアイドルのオーディション番組を見てきた身からすると、タイプロ候補生たちを取り巻くこの盛り上がりは、極めて異例である。
これほどのブームになったオーディション番組なのだから、たとえtimeleszに選ばれなかったとしても、人気者になるのは当たり前と思う人もいるだろう。なにしろモーニング娘。は、かつてオーディション敗退組から誕生し、やがて時代の象徴となったのだから。
しかし、『LOVEマシーン』期のモーニング娘。が“敗者復活の成功例”として、いまだに引き合いに出されること自体が、彼女たちのケースがいかに稀有であるかを物語っていると思う。実際に他のオーディション番組においても、浜川路己のように当選確実と思われていた人気メンバーが、最終回でまさかの脱落をする例は少なくない。
韓国発の『PRODUCE101』系オーディション番組では、視聴者投票によってメンバーが決まるのだが、それまで合格圏内にいた人が、よりにもよって最終回で脱落するという信じがたいケースがたびたび発生する。審査が進むにつれて投票方式が変化することも大きく影響していると考えられるが、どの番組でも繰り返し見られるため、視聴者の間では一種の“ジンクス”として語られているのだ。
数百万票の支持を集めても「売れない」残酷な現実、事務所の規模とプロモーション力で明暗が分かれる派生グループの末路
そのような番組の最終回で、誕生したデビュー組と並ぶほど、いや、それ以上に注目を集めるのが、惜しくも選ばれなかった候補生(練習生)たちの行く末である。グローバル規模の番組であれば、デビューメンバーに選ばれなかったとはいえ、世界中から数百万票以上を集めるほどの人気者だ。系列の事務所でセカンドグループ的な立ち位置でデビューするのか、それとも全く別の事務所が新たに名乗りを上げるのか。どのような派生グループが誕生するかが、視聴者の大きな関心になる。
派生グループが結成される例は多いものの、その活動は決して容易ではない。先のコラムでも書いた通り、オーディション出身グループは、番組配信時の熱狂を維持すること自体が難しい。良いメンバーを揃えていても、彼らのポテンシャルを活かしきれないまま、活動規模が縮小していくケースも少なくないのだ。
個人的な話をすると、韓国発の視聴者投票型オーディション番組『BOYS 2 PLANET』で、私の最推しも、最終回でチャンスを逃した一人だった。もともと所属していたグループがあったため、古巣に戻ることになったのだが、オーディション中にどれだけ人気になっても、事務所の規模が小さく、プロモーションの経験も十分でなければ“売れない”という現実を、日々痛感している。