海外生活でなぜ人は孤独を感じるのか?かまいたちの元マネージャーがその原因と向き合い方を考える
元かまいたち・とろサーモンのマネージャーかつアイドルグループ吉本坂46のメンバーとして活躍し、現在はワーキングホリデーでイギリスに居住する樺澤まどかさん。そんな樺澤さんは、自由を謳歌しつつも「海外では孤独を感じる頻度が高い」と話す。その理由について、改めて向き合った。
みんかぶプレミアム連載「樺澤まどかのロンドン卑屈日記」
目次
孤独が自分自身を敵にする
海外生活は、孤独感を強める。
もっと正確にいうと、孤独はどこでも感じるものだけど、ワーキングホリデー(ワーホリ)で海外生活を始めて以降、孤独を感じる頻度が増えた。
海外生活には、楽しいこともたくさんある。
日本とは違う景色の中で生活できること、新しい出会いがあること、色々な文化や価値観に触れられること、自由な時間が増えること。想像もできなかった様々な経験をしていくうちに自分の可能性が広がる感覚もあり、充実感を持てるのがとても楽しい。「この生活はやめられない」と思う瞬間も多い。
その一方で、自由な時間が増えたことで、深く考える回数も増えた。自分の性格やキャリア、人間関係……。テーマはいろいろだけど、どれもワーホリを始めるまでは、あまり突き詰めて考えていなかったものだ。もしかしたら、今まで考えてなさすぎただけなのかもしれないけれど。
物事を深く考え始めると、強い孤独を感じ、ネガティブな思考に陥ることが増えた。
孤独を感じるのは、悪いことばかりではない。自分と向き合えるし、自分が本当にやりたいこと、欲しいものは何かを明確にしてくれる。
しかし厄介なのが、孤独を感じた時に、自分自身が自分の敵になってしまうケースがあることだ。
孤独で辛いと感じた時、「それを経験しに来ているのだから甘えるな」とか「ならその辛さから抜け出すために努力しろ」と自分に厳しい言葉をかけてしまう。そして自分の中にいる自分のアンチが現れると、それがさらにストレスとなり、焦って行動しようとするものの気持ちが落ち着かず、結果的に孤独感を強めるという負のループに陥ってしまう。
なぜ海外で孤独を感じてしまうのか?
この穴にハマるととても苦しいのだけれど、今の私は高頻度でここにハマってしまう。なぜワーホリに来てから高頻度で孤独を感じるのか、原因を自分なりに分析してみた。
まず一つ目は、自分の人生について考える時間が増えたこと。海外生活を始める直前に会社員としての仕事を辞めてきたので、仕事のことを考える必要はなくなり、考えるのは「これから自分は何をしていくのか」だけでよくなった。
現地ではアルバイトをしているけど、それは私にとって、英語環境での経験や学びの場であり、自分と向き合う時間という感覚に近い。
それ以外にもYouTubeや他の活動もしてはいるけど、すべて裁量権は自分にある。自分でコントロールできるから、それらについて考える時間も、結局は自分の人生について考えることに結び付いてしまう。
「考えすぎないよう仕事に打ち込もう」と思っても、仕事が忙しくなるほど、自分と向き合うことを強いられてしまう。そうなると、現状について漠然とした不安を抱えた時に、負のループに入りやすくなる。つまり構造的に考える時間が多くなっているのだと思う。
二つ目の原因として考えられるのは、シンプルに言語と文化の壁の大きさだ。
日本では当たり前にできていたことも、海外では言葉や文化の違いが原因でうまくいかないことが多いし、「日本の当たり前が海外では当たり前ではない」と痛感する場面が多々ある。
たとえばシェアハウスで住人とコミュニケーションを取る際、日本であれば一緒に住んでいてどんなことを気にするべきか、逆にどんなことは言ってはいけないかなどだいたい感覚で分かる。でも、現在一緒に住んでいるイギリス人と中国人の2人とは、言葉も文化も大きく異なるため、理解し合うのが難しいと感じることがある。
「なんでも分かり合える仲間」がいなくなった
一例を挙げてみたい。シェアハウスの住人たちは、「家の設備に不備がある」との不満を持っていた。私としてはそこまで気になるレベルではなかったけれど、「じゃあこうすればいいんじゃない?」と、親切心からその解決策を提案した。
ところが私の英語が拙かったせいか、「まどかはこの家全体に文句があるのか」と少し揉めたことがあった。
その後、しっかりと自分の意図を伝えて誤解は解けたものの、親切心が嫌味や皮肉として捉えられてしまうことに驚き、それからは自分の意見を言うことに少し怯えるようになってしまった。
また接客業のアルバイトでは、お客様の質問にうまく答えられず、悔しい思いをすることがある。一緒に働いているメンバーは全員英語ネイティブで、お客様への対応もフレンドリーで素敵なのに、私だけカタコト英語なうえ時々聞き間違えることもあり、一番ぎこちない店員だ。店の中で、明らかに浮いている。
この状況に決して文句を言いたいわけではないし、不満があるわけでもない。望んでそうしているのであって、自分がマイノリティであるという自覚を持って、現在置かれた環境に順応していくべきだとも考えている。それでも、「日本語だったらもっと良い対応ができるのに!」と思うたびに、自分の未熟さを突きつけられ、落ち込んでしまう。
三つ目の原因は、海外生活に関係なく、会社を辞めたことによって、組織に属していない状態にいるのが初めてであるということだ。
どこに住むか、どんな仕事をするか、誰と関わっていくのか、いつ帰国するか、今後どうやって生きていくのか……。それらすべてを自分で好きに決められる環境にいるし、すべて自分に100%責任がある。
私は単独行動がとても好きな性格なので、今のスタイルは自分にとても合っていると感じるし好きだけど、それと引き換えに、直接会って相談できる相手は当然だけど少ない。「なんでも分かり合える仲間」がいないように感じられて、時々ひどく切なくなる。
孤独はどんな場所でも消えない
こうして生まれた孤独感は、時を経るごとにどんどん強くなっている。海外生活を始めたての頃は、海外で生活しているという新鮮さや自由さに加え、とにかく生活をすること自体に一生懸命で、孤独を感じる余裕すらなかった。
でも段々と生活に慣れ、自分の状況を冷静に客観的に見られるようになり、苦手だった英語もある程度話せるようになったことで、不安や孤独をピュアに感じやすくなったのかもしれない。
最近、そんな海外生活で感じる孤独について率直に話す動画を、YouTubeで公開してみた。すると、多くの人から共感の声が寄せられた。
同じようにワーホリをしている人だけでなく、長年海外で生活している人や、日本に住んでいる人からも、「自分も同じような孤独感を感じることがある」「自分だけじゃないと思えて安心できた」というコメントをいただいた。その中には、「動画を見て前向きになれたから感謝している」といった感謝の言葉もあった。
正直に言って、驚いた。私はただ自分の気持ちを話しただけだったし、自分の感情はただの我儘なんじゃないかって思っていたからだ。だからこそ、嬉しかった。
同時に、自分自身も「孤独を感じてもいいんだ」と、少し自分を許せた気もする。ただみんながそれぞれの場所で孤独と向き合っていることに、少しだけ切なさも感じているけれど。
同じように感じている人たちの声を見てみると、「海外生活が孤独を生む」というより、孤独を感じやすい要素が、海外でより強く表に出やすいといえるのかもしれない。
人と会ったり、外に出たり、忙しく過ごしたりすることで、孤独感が少し軽くなることはある。だから、日本語で話せる相手と話すことや、英語力を上げることは、きっと助けにはなる。
だけど、孤独そのものが消えるわけではない。
孤独の背景には、私の31歳独身という、年齢や人生のフェーズも関係している気がしている。日本にいて働いていたとしても、きっと別の種類の悩みやしんどさがあったのだと思う。
孤独と向き合い続ける以上、自分を責める声も完全になくなることはないのかもしれない。
でも、それをただ受け止めて傷ついて飲まれていくのではなく、少し距離を置いて見られるようになることが、次のステップなのだろうと感じている。
まだうまくはできないけれど、これから少しずつその方法を探していきたい。