平均24万円…日本のサラリーマン、あまりにも残念すぎる「手取り額」
公的年金だけでは賄いきれない老後生活
あなたは毎月いくら使っていますか―。こう問われた時、しっかり者のあなたは足下の支出額を即答することができるかもしれません。では、「あなたは老後いくら使うと思いますか?」と聞かれた場合はどうでしょう。リタイア期直前であればイメージを持ちやすいですが、現役バリバリの若手・中堅社員が想像するのはなかなか難しいものがあります。かつては悠々自適な年金生活を思い描いている人もいたでしょう。しかし、現実には公的年金だけでは十分に賄いきれない老後生活が待ち構えているのです。老後までに準備が必要とされるのは「2000万円」。あなたは、どうしますか?
岸田文雄首相は5月、英ロンドンの金融街シティーでの講演で「Invest in Kishida!」と呼びかけました。看板政策の「新しい資本主義」は、2000兆円超といわれる個人金融資産を投資に振り向ける「貯蓄から投資へ」の流れをつくることに重きを置いています。少額投資非課税制度(NISA)の非課税枠拡充や個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入対象年齢引き上げなどを実施し、経済活性化とともに国民の資産所得を倍増するプランを描いているようです。
平均手取り24万円…どうすればいいニッポン
投資が身近になった今日、資産形成に関心が強い「意識高い系」の人は経験が豊富かもしれません。しかし、日本証券業協会が2021年12月に公表した調査(20歳以上の男女)によると、有価証券の保有率は19.6%、株式の保有率は13.3%にとどまっています。証券投資の必要性は30.9%の人が感じているものの、実際に保有するまでには「壁」が存在していると見えます。
「投資をする余裕なんてない」という声も少なくありません。2020年に総務省がまとめた調査結果によれば、2人以上世帯の消費支出(1カ月)は平均30万5811円に上ります。30代は26万8600円、40代は31万7700円、50代は33万8600円と年齢を重ねるにつれて上昇しています。しかし、2020年の民間平均給与は対前年比0.8%(3万3000円)減の433万1000円。うち「平均給料・手当」は368万5000円で、単純計算すると月収は30万7000円ほどで、手取りでいえばおよそ24万円です。それが平均的日本人の給料の実態です。これは20年以上前から平均給与は上昇しておらず、60歳を超えると給与が減少することへの不安も隠せません。千葉市の40代男性会社員は「住宅ローンの返済や子供の教育費が重く、毎月の収支はギリギリ。とても投資に割くだけの資金は貯まらない」と漏らします。
老後の20年間で1300万円、30年間で2000万円
日々の生活を送るだけでも精一杯なのに、老後のことまで考えられない。この切実な声に追い打ちをかけるのが「老後2000万円問題」です。この言葉が使われるようになったのは、金融庁の審議会「市場ワーキング・グループ」による2019年の報告書が発端でした。
夫は65歳以上、妻は60歳以上という高齢者夫婦世帯をモデルケースとした場合、公的年金だけでは毎月約5万5000円が不足し、老後の20年間で約1300万円、30年間では約2000万円を保有資産から取り崩す必要があるというものです。つまり、「老後は年金で安泰」というのはありえない、と言っているように見えます。
もちろん、個人事業主や会社勤務、共働き世帯など様々な要素から将来受け取ることのできる年金額は異なります。しかし、このモデルケースが飛び抜けて珍しい世帯のことではないと考えれば、「老後2000万円問題」への計画的な備えは欠かせません。
貯金神話はもう捨ててください
では、どのような準備をしていけば良いのでしょうか。まず、最もシンプルな方法は「貯蓄」です。普通預金の金利は低いため、金利が高めの定期預金を活用するのも良いかもしれません。ただ、定期預金は大きく資産を増やすには向いていません。仮に「金利0.1%」の定期預金を活用し、20年で2000万円を用意するためには毎月8万3000円の積み立てが必要になる計算です。
保険会社で扱う「個人年金保険」の活用も有効です。毎月積み立て、保険会社が運用。期間が終了すると、保険会社が運用した金額を受け取ることができます。ただ、個人年金保険も大きく増えることが期待できる金融商品ではありません。
岸田首相が提唱する「資産所得倍増」とはいかなくとも、投資信託や株式などの投資を活用する方法もあります。投資で「20年で2000万円」を用意する場合、毎月いくらが必要なのかシミュレーションしてみましょう。まず、想定利回りが「3.0%」のケースならば、毎月6.1万円となります。これが「5.0%」の場合は毎月4.9万円、「7.0%」ならば毎月3.8万円です。
2人以上世帯の平均負債額は567万円
ただ、想定利回りが高い投資ほど毎月の投資額は少なくてすみますが、元本割れリスクも高いので注意が必要です。NISAやiDeCoといった制度を活用した投資であれば税制優遇も活用できます。
念のため、公的年金の受給額も計算に入れておきましょう。公的年金は原則65歳から受け取り可能ですが、開始年齢を繰り上げた場合は1カ月あたり0.4%減額となります。仮に60歳まで繰り上げた場合の減額率は5年×12カ月×0.4%で「24%」です。一方、開始年齢は最長で75歳まで繰り下げることができます。その場合は1カ月あたり0.7%増額され、75歳まで繰り下げた場合の増額率は10年×12カ月×0.7%で「84%」です。最近は、定年退職後も再雇用する企業が増えており、年金受給額を増額する方法も選択できるようになっています。公的年金の受け取り開始時期も老後のライフプランを考える上で重要なポイントといえるでしょう。
総務省の家計調査によると、2人以上世帯の貯蓄額は平均1880万円(2021年)で、比較可能な2002年以降で過去最多となりました。ただ、負債も平均567万円に上っています。老後に必要な資金をいかに備えるべきか。厳しい老後生活を迎えないためにも、将来を見据えたライフプランを作り、上手に資産形成をしていく時代が訪れているようです。