澤上篤人「米国株はすぐに復活する!」…なぜGAFAMを買ってはいけないのか、なぜ農業は買いなのか(みんかぶ特集「米国株の底値」)

今年初めに3万6799ドルの史上最高値をつけて以降、大きな調整局面を迎えているNY株式市場。GAFAなどハイテク各社の株も大きく下落しており、一部ではバブルの崩壊も囁(ささや)かれている。はたして実際は? 今後の投資の可能性は? みんかぶプレミアム特集「米国株の底値」(全10回)の第4回は、わが国長期投資の第一人者が、世界経済を俯瞰(ふかん)しつつプロの視点で語る。
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世界で進むポピュリズム政治は経済にはマイナスしかない
11月8日にアメリカの中間選挙が行われる。もともと中間選挙は野党が優勢となるのがこれまでのセオリーだが、今回もエネルギー価格の高騰やインフレの進行もあって、与党・民主党は劣勢が伝えられる。焦点は民主党がどれだけこの劣勢を押し返せるかだが、こればかりはフタを開けてみなければわからない。
アメリカ経済、いや世界経済はトランプ前大統領によって様変わりした。彼が打ち出した自国第一主義と、米中貿易摩擦により、世界のサプライチェーンは分断されつつある。そして、ロシアのウクライナ侵攻はその動きに拍車をかけた。いまや欧米や日本など西側諸国G7を中心の経済圏と、中国、ロシアなどBRICS諸国はじめ世界各地の経済圏のブロック化が進み、それに応じてサプライチェーンもつくり直しを迫られている。アメリカの中間選挙がどのような結果になるにせよ、この流れは当分続く、厄介な問題である。
世界に目を向けると、イギリスではリズ・トラス首相が就任早々、エネルギー価格の高騰と10%を超えるインフレ率への対策として、大幅減税や財政出動を明言。英国の「株・ポンド・国債」がトリプル安となつた挙句、国内外の批判を受けて就任わずか44日間で辞任を表明した。当然と言えば当然のことで、こうした政策はポピュリズムの最たるものだからだ。さらにイタリアでも、ジョルジャ・メローニ氏の極右政党FDIが第1党になり、右派連合政権が誕生した。経済合理性を無視して、国民感情に迎合する傾向のあるポピュリズム政権の政策で、はたしていまの世界経済の苦境に立ち向かえるのだろうか。