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ウクライナ奇跡の大躍進とプーチンの今後

ウクライナ奇跡の大逆転勝利へ

ロシアで加速するプーチン離れ。崩壊が始まる

2月24日にロシア軍の侵攻が始まってから3カ月近くがたった。ロシア軍はウクライナ東部2州全域の掌握に向け、ウクライナ側の拠点の1つ、セベロドネツクへの攻勢を強めているが、ウクライナ軍による反撃で戦闘は長期化する見通しだ。またイギリス国防省は軍事侵攻から3か月を前にロシア軍の死者数はおよそ1万5000人に上るという分析を示し、ロシア側の厳しい現状が浮き彫りとなった。

中でも驚きだったのが、ロシア国営テレビの人気トーク番組「60ミニッツ」で5月16日にロシア軍退役大佐のミハイル・ホダリョノク氏が放った発言だ。

戦況に関し「我々は近い将来、米欧の先端兵器を手にした100万人のウクライナ兵を相手にしなければならなくなる」と指摘し、「耳に響きの良い情報」に惑わされないよう呼びかけた。

他にも、「ロシアにとって戦況は明らかに悪化している」「私たちは完全に政治的に孤立しており、それを認めたくはないものの、全世界が私たちに反対しています」「もし十分な兵器が与えられれば、100万人の非常に意欲が高い兵士を派遣する準備ができており、欧米諸国からさらなる軍事支援を受けるだろう」

ロシアでも有名な軍事評論家がここまで踏み込んだ、ロシアにとって「不都合な発言」の数々は、プロパガンダ機関と化したロシアメディアでは異例のことだ。これらの発言が、ミハイル・ホダリョノク氏の「独断」とは考えにくく、「悪い情報をこれから流すために先兵の役割を果たす」(BBC)という指摘もある。

死に体ロシア、総力戦にむけ国民を煽る

その背景には、ロシアメディアの最近の傾向として、ミハイル・ホダリョノク氏だけでなく、ロシアの専門家たちも「国民をもっと動員しないと勝てない」と言い出し始めていることがある。専門家たちのこのような発言を許すクレムリン(ロシア政府)の思惑は、「戦争体制の拡大」「より強力な兵器の使用」をあらかじめロシア国民に浸透させようとするものだ。終わりの見えない戦いが顔を見せ始めている。

これまでロシア軍の消耗は激しく、英国防省はロシア軍は地上部隊19万人規模の3分の1を失ったと推定した。「通常、戦力の3分の1を失うと、戦力として使い物にならない状態に陥り、一旦撤退して立て直しをしなくてはならない」(防衛専門家)という指摘もある。

ロシア下院は5月20日、志願兵の年齢上限を撤廃する法案が提出されたと明らかにした。(法案はその後可決)。現行ではロシア人で18~40歳、外国人で18~30歳の入隊を認めている。兵士不足を解消する狙いがあるとみられる。Oryx(5月21日)によれば、ロシア軍が喪失した兵器類(戦車、装甲戦闘車両など)の数は3709で、ウクライナ軍の1057と比して突出している。ロシア軍が特に大きな打撃を受けたのは、ドンバス地方のシヴェルスキー・ドネツ川を渡ろうとしたときだった。ウクライナの大砲がロシア軍を狙い、推定485人の兵士と80点の装備品が失われた。

元米軍司欧州令官ウクライナは夏の終わりまでに領土奪還」

プーチンは追い詰められている。

元米軍欧州司令官ベン・ホッジス退役中将は、夏の終わりまでにロシア軍は崩壊し、ウクライナは2月24日の侵攻開始以来失った領土をすべて取り戻すと予測している。『ワシントン・ポスト』紙によれば「このシナリオは楽観的すぎるかもしれないが、ロシアのいかなる勝利よりも可能性が高い」と指摘している。

こうなるとやはり怖いのが、面子を失い、屈辱を与えられ続けているプーチン大統領の「逆ギレ」であろう。ハリコフ攻略に失敗した第1親衛戦車軍司令官と、旗艦モスクワがウクライナの対艦ミサイルで沈んだ黒海艦隊の提督を解雇したと報じられた。人手不足のため、新兵の年齢制限を撤廃していた。『西側諸国の多くは、ウクライナ人の躍進を祝うどころか、戦々恐々としている。フランスのマクロン大統領は、ロシアに屈辱を与えてはならないと警告している。イタリアは独自の4項目からなる和平案を配布している』(先述・ワシントン・ポスト紙)

『ニューヨーク・タイムズ』紙は「ウクライナの決定的な軍事的勝利は現実的な目標ではない」と指摘し、ヴォロディミル・ゼレンスキー大統領に「平和のために土地を手放せ」と助言している。

プーチン劇場、悲哀の第2幕へ

あまりにウクライナ軍が勇敢に戦ってしまい、奇跡の大逆転勝利が見えてきた。そこでロシアへ屈辱を与えていることが、プーチンに「核の使用」に踏み切らせるのではないかと心配が生まれているのだ。

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この記事の著者
小倉健一

1979年生まれ。京都大学経済学部卒業。国会議員秘書を経てプレジデント社へ入社、プレジデント編集部配属。経済誌としては当時最年少でプレジデント編集長就任(2020年1月)。2021年7月に独立。現在に至る。 Twitter :@ogurapunk、CONTACT : https://k-ogura.jp/contact

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