「金融倒産連鎖、大爆発」で露呈したリーマン・ショック後「金融規制」のインチキ…次は産業や実体経済にも深刻な影響も
3月に欧米で広がった金融不安。各国政府や金融当局の迅速な措置によって、現時点ではいったんは収まりつつあるようだ。だが今回の事態は、リーマン・ショックを教訓に世界の金融当局が構築したレジームが、すでに機能不全に陥っていることを露呈しているのかもしれない。日本経済新聞編集委員の小平龍四郎氏が解説する。
SVB破綻、クレディ・スイス救済…金融不安は沈静化したのか
米国のシリコンバレーバンク(SVB)破綻と欧州のクレディ・スイス救済。3月に相次いで起きた金融機関の経営危機は、2008年のリーマン・ブラザーズ破綻後に構築された「ポスト・リーマン」の金融レジームを激しく揺さぶった。金融危機の再発防止を意図した数々の施策は「絵空事」や「絵に描いた餅」だったのではないか。突きつけられているのは、そんな切迫した課題である。
今のところリーマン・ショック後のような世界経済の大混乱は起きていない。株式や債券などの値動きも比較的落ち着いており、財やサービスの需要が一瞬にして蒸発するといった産業界への目立った影響もない。
とはいえ、世界の金融当局者は緊張を解いていない。米国では5月までに新しい銀行規制案が議会に提出される運びだ。米国だけでなく、欧州や日本を含む20カ国(G20)も、世界レベルでの金融規制改革を始める可能性が高い。「SVB破綻は米地方銀行の問題」「クレディの危機は経営の失敗」などと問題を矮小(わいしょう)化すべきではない。金融不安はいつでも再燃し、今度は産業や実体経済にも深刻な影響を及ぼすかもしれない。