年収1000万円が最も不幸な人生を歩むことになる理由
年収1000万円のサラリーマンは本当に勝ち組なのか
サラリーマンで年収1000万円を稼いでいると言えば、「勝ち組」を意味するように思うかもしれない。国民の平均年収は約433万円であり、2倍以上も稼ぐ人々が高所得者層であることには変わりない。しかし、その生活は意外にも余裕があるとは言い切れない。「大台」の突破から生活水準を上げ、見栄を張ったり、付き合いが多くなったりして不安を抱える家庭も目立つのだ。仕事柄さまざまな職種の人と出会うが、年収1000万円で苦労する人と、円満家庭を築く人には歴然とした違いがある。そこに浮かび上がるものとは―。
国税庁の「民間給与実態統計調査」(2021年9月公表)によれば、年収1000万円を超える人は4.6%にとどまる。「300万円超400万円以下」が913 万人(17.4%)で最も多く、次いで「200万円超300万円以下」が814万人(同15.5%)となっていることを考えれば、年収1000万円を手にするサラリーマンがかなりの高収入であることは疑いようがない。たしかに、その「大台」はステータスであり、憧れの対象になる。
「1000万円超1500万円以下」の人はわずか3.4%であり、さぞ裕福な生活を送っているように思われるだろう。だが、必ずしも悠々自適な生活とは限らない。経営者や一人暮らしであれば状況は異なるが、年収1000万円のサラリーマンは「壁」にぶち当たることが多いのだ。
大台突破の落とし穴は、生活水準も上げてしまうこと
高収入の職業としては医師や弁護士、公認会計士、税理士といった資格取得者が思い浮かぶが、一般的なサラリーマンに限れば商社や外資系企業、テレビ局や新聞社、広告代理店などが当てはまる。年功序列型賃金制度が崩れつつあるとはいえ、これらの企業で普通に働いて役職が上がっていけば「大台」突破は遅かれ早かれ訪れる。責任ある立場に立てば「1500万円以上」も可能な職業だ。
しかし、こうした人々に共通するのは「多忙」であるという事実である。大手広告代理店で20代前半の女性が過労の末に命を絶ったことは注目を集めたが、朝から夜まで激務に追われる高収入サラリーマンは少なくない。カルチャーが異なる外資系では早朝に動き出し、午後には解放されるものの、超過密スケジュールの精神的負担は大きく、40代までに退職を余儀なくされるケースも見られる。
多忙であれば、稼いだものを使う時間はあまりないと思われるかもしれない。たしかに「時間」は少ないわけだが、大台突破に伴い生活水準を上げてしまい、「出費」が多くなる傾向がある。年収1000万円をゲットし、その後も役職を重ねて年収が2000万円、3000万円と上昇していく企業であれば、増加する出費を上回る稼ぎでカバーできる。だが、「年収1000万円」で足踏みを続けてしまうようであれば、一度上げた生活水準は容易に落とすことができず、厳しい家計と向き合うことになるのだ。