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元外資系証券会社部長の億トレーダー「政治に屈した日銀はもう利上げできない」暴落局面で買い増した4つの銘柄…今後の相場シナリオは?

ABCTrader

本稿で紹介している個別銘柄:千葉銀行(8331)、三井住友フィナンシャルグループ(8316)、三越伊勢丹(3099)、JVCケンウッド(6632)、Apple(AAPL)

 欧米系証券会社で株式本部長を経験し、現在は米国IT企業代表の顔も持つ億トレのABC Trader氏。みんかぶプレミアム特集「一人勝ち投資術」第4回では、利上げ決定の背景にある“政治”と“日銀”の関係やいまの相場の捉え方、危険な銘柄・暴落時に自身が買い増した銘柄について伺った。

目次

日銀は政治の圧力に屈した

 8月上旬の急激な下げには正直、私も驚きました。この展開を予想していたストラテジストやアナリストはほとんどいなかったと思います。知り合いのファンドマネージャーも動揺していましたね。まさに「植田ショック」です。

 今回の米国株と日本株の暴落は、CTAとグローバルマクロ系ヘッジファンドが仕掛けたと言われています。米国の失業率上昇の発表に合わせて、ハードランディング懸念が出たところに、円キャリートレードで買っていた米国株が暴落し、円キャリートレードを解消し、円高が進んだ、さらに植田総裁発言で円高に拍車がかかり、日本株が暴落しました。

 私としては、7月末の金融政策決定会合では「日銀は利上げを表明しない」可能性が高いとすら思っていました。だって経済指標が弱いですから。国内総生産(GDP)も個人消費も弱い。このような状況の中で、本来は利上げするべきではありませんでした。

 また仮に利上げを表明するとしても、それが「1回だけの利上げ」であればそこまで問題はありませんでした。7月末時点で、市場は“1回”の利上げをすでに織り込んでいました。むしろ利上げの決定を表明することで材料出尽くしとなり、株価は上がる可能性も高いと考えていた。実際、場中に利上げが発表された7月31日は、大引けでは株高になっています。

 ただ読めなかったのが、「さらなる追加利上げ」への言及でした。

 もともと日銀の植田和男総裁は、ハト派の立場を鮮明にしていました。それがここに来て、急にタカ派に転身してしまった。これは“政治に屈してしまった”とみるのが自然でしょう。岸田文雄、茂木敏充、河野太郎といった利上げを推奨する政治家からの圧力に、とうとう負けてしまったのです。植田総裁の信念に基づく利上げであればまだよかったのですが、信念を曲げたうえにそれが失策だったため、マーケットからの失望も非常に大きいと言えます。

マーケットを見ていない政府・日銀

 円安への対応の側面としては、そもそも9月には米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げに踏み切ったでしょうから、あと2カ月ほど待っていれば必然的に円高が進んだはずです。その2か月を待てなかったのは自民党の総裁選があるからでしょう。9月20日とも言われている総裁選の前に、岸田首相が「ドル売り介入と利上げに踏み切ることでインフレを鎮静化し、さらに経済正常化への道筋を付けた」という実績をつくっておきたかったのです。

 しかし皮肉なことに、岸田首相は、8月14日に総裁選不出馬を表明しました。ここ最近の市場軽視の経済・金融運営をヘッジファンドに突かれ、市場は混乱しました。そしてついにはご自身が退場することになってしまいました。

 投資家だけでなく政府や日銀も、ここまでの事態に陥るとは想定していなかったと思います。「日本の経済はもっと強いはずだ」という過信が彼らにはありました。結局政治家も学者もプライマリーバランスしか見ておらず、「どうすれば税収を上げられるか」しか考えていないから、マーケットの怖さをわかっていないんです。

 利上げに際しては、日銀の9人の政策委員のうち、植田総裁ら7人が追加利上げに賛成したものの、2人が反対したと発表されました。反対の理由としては「賃金上昇の浸透による経済状況の改善をデータに基づいてより慎重に見極める必要がある」などと発言したことが報じられましたが、まさに正しい指摘です。

 日銀は市場との対話も十分ではなかったですよね。海外であれば、これだけの混乱を引き起こしてしまった中央銀行のトップは、その座を追われてもおかしくありません。

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この記事の著者
ABCTrader

日系証券の海外拠点でディーラーとセールス、帰国後は複数の欧米系証券でエクデリ、 ECM、株式本部長やマネジメントを歴任。現在は宅地建物取引士の資格を持ち、不動産投資会社、不動産仲介会社、コンサルティング会社(事業再編、IR)の3社を経営。株式投資、FX投資、不動産投資を中心に運用している。日本証券アナリスト協会協会員。

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